自動車組立ラインへの部品搬送など、昨今、工場や大型倉庫を中心に、無人搬送車(AGV: Automatic Guided Vehicle)の導入が進んでいます。社団法人日本産業車両協会が2019年9月25日に発表した調査によると、2018年のAGV納入件数は過去最高を更新、製造業を中心に活用が進んでいます。AGVの普及が進む一方で、課題になってきたのが給電システムです。現在、AGV搭載蓄電池の大半を占める鉛蓄電池では「充電に時間がかかる」、「充電時に専用の場所が必要」、「電池交換が大変」などの課題がありました。そんな課題を、昭和飛行機工業様のAGV用非接触給電システム「SIPS-1000A」と東芝の「SCiB™ SIPシリーズ」の組み合わせで解決!その内容をご紹介します。

鉛蓄電池と接触式給電システムの
組み合わせでは…

  1. 電池交換や予備電池充電、充電器のメンテナンス等作業効率が悪かった
  2. 交換用予備電池の管理が大変だった
  3. 水や油、埃が舞う環境のため、充電時にショートや感電の心配があった。

SCiB™ SIPシリーズとの組み合わせなら!

  1. 電池交換や予備電池充電作業がなくなり作業効率が向上した。
  2. 急速チョコチョコ充電で24時間運用を実現し予備電池の管理が不要になった。
  3. 非接触式なので、劣悪な環境でもショートや感電の心配がなくなった

本事例の概要を動画でもご確認頂けます。

課題と背景

鉛蓄電池が抱える課題と、非接触給電システム「SIPS-1000A」の特長

Q. 自動車組立工場のAGV給電システムにどのような課題があったのでしょうか。

A. 電池交換や予備電池の充電作業による、作業効率の低下が課題でした。

国内でAGVの導入が最も進んでいるのが自動車業界です。自動車の組立工場では少ないところでも100台、多いところでは400台ものAGVが走っています。AGVは電池で稼働しますが、電池の残量が少なくなると電池交換のため交換スペースに戻る、もしくは充電のため充電器とつなぐ必要がありました。しかもAGVに搭載されている電池の多くは鉛蓄電池。重量があるため交換も一苦労で、充電器のメンテナンスにも時間を取られたりと作業効率の低下につながっていました。更に、工場の中は油や埃が舞うなど必ずしも綺麗な環境とは限らず、大電流で充電するには専用のスペースを設けなければなりません。
これらの問題を改善しようと、各工場でAGVの非接触自動給電システムの導入検討が始まっています。

東 拓次 様

昭和飛行機工業株式会社
輸送・機器事業部 営業部
営業4課

自動車組み立て工場が抱えていたAGV充電に関する課題

バッテリー交換による作業ロス

専用の充電スペースが必要

Q. 非接触自動給電システム「SIPS-1000A」はどんな特長を持っているのでしょうか。

A. 最適な充電を行うための制御機能や通信機能を含めワンパッケージで提供しています。
  そのため、様々なメーカーのAGVに搭載可能で、かつ色々な種類の電池の充電に対応しています。

非接触給電システムは、当社の新規事業という位置づけから開発が始まりました。そこでまずAGVを活用している複数の会社にヒアリングを実施し、ユーザーのニーズを把握した上で仕様を決めました。「SIPS-1000A」はそんなヒアリングを通じて得られたお客様の多様な環境に適応できるよう、給電ユニットと受電ユニットをワンパッケージ化してお客様へ提供しています。特に、通信機能を給電ヘッド・受電ヘッド内に搭載することにより、高周波電源装置、給電ヘッド、受電ヘッド、充電コントローラの4つの部品で非接触給電システムを構築することができ、取り付けもシンプルで、この点が最大の差別化ポイントです。

他社の非接触給電システムの中には、充電を開始する、停止するという制御信号をユーザー自ら設計しなければうまく稼働しないものもあります。しかし、「SIPS-1000A」はヘッド内に搭載した通信機能により給電エリア内で受電ヘッドの有無を自動で検知して充電を開始・停止させることができるため、制御信号をユーザー自ら設計する必要がありません。そして、給電エリア内ではギャップや位置ズレに関係なく安定的に「SIPS-1000A」の最大出力である1kWを出力することが可能です。

また、「SIPS-1000A」は、充電時の電圧や電流の制御機能を標準で搭載しています。そのため、近年増えている既存AGVの鉛蓄電池からリチウムイオン電池への置換えのニーズに対して、システムの置き換えが簡単に行えるため、主要AGVメーカーのオプションとして広く採用いただいております

非接触給電システム「SIPS-1000A」の特長

非接触給電に必要なシステムがワンパッケージ化

受電ヘッドの有無を検知し、自動で充電を開始・停止

Q. 大手自動車メーカー様の組み立て工場にも「SIPS-1000A」が導入されたと伺いました。

A. 「SIPS-1000A」単体での導入ではなく、SCiB™ SIPシリーズとの組み合わせで導入いただきました。

当時、お客さまはAGVのバッテリーに、充電時間が短いキャパシタを採用したいという要望がありました。キャパシタは蓄電量が少ないという課題があり、東芝から鉛蓄電池からの置換えが非常に簡単なSCiB™ SIPシリーズがリリースされると聞き、「SIPS-1000A」とSCiB™ SIPシリーズとの組み合わせでお客さまに提案し、採用いただきました。

導入の決め手

急速充電への対応、長いサイクル寿命による低ランニングコスト

Q. SCiB™ SIPシリーズ導入の決め手について教えてください。

A. 急速充電が可能で、サイクル寿命が桁違いに長くランニングコストを大きく抑えられることなどが決め手となりました。

第一は、コストです。SCiB™ SIPシリーズは20,000回以上繰り返し使用可能というように、サイクル寿命が非常に長い。この数値は鉛蓄電池はもちろん、他のリチウムイオン電池と比較しても桁違いの長さ、1桁~2桁違うというレベルです。そのため、ランニングコストで比較すると、他の蓄電池と比べて圧倒的に安くなります

第二は、急速充電が可能なことです。「SIPS-1000A」は最大34Aでの充電が可能です。しかし、鉛蓄電池を34Aの大きな電流で充電するには、必要以上に大容量の電池が必要となります。しかも鉛蓄電池は内部抵抗が高いので、急速充電を行うと電池本体の温度が上がり、大電流を流す度にどんどん電池が劣化してしまいます。SCiB™ SIPシリーズであれば最適な容量で急速充電が可能、更に、電池温度が上昇して電池が劣化するといった問題が起こりません。

第三は、国内メーカーという安心感です。例えば、電池寿命について問い合わせると、海外メーカーではその裏付けとなるデータを確認出来ないことが多いのですが、SCiB™ SIPシリーズはちゃんとデータが出てきます。そういうデータや資料が整備されている点も採用の大きな理由となりました。

最後に、SCiB™ SIPシリーズはリチウムイオン電池の中でも優れた特長を多数持っています。当社の「SIPS-1000A」はリチウムイオン電池の制御を得意としているので、そんなSCiB™ SIPシリーズの良さをフルに生かすことができます。そういう相性の良さも弊社がSCiB™ SIPシリーズと組み合わせてお客さまにご提案した理由です。

SCiB™ SIPシリーズ 導入の決め手

桁違いな長寿命性

チョコチョコ充電に適した急速充電性能

導入後の効果

最低限の電池容量で、AGVを24時間安全にフル稼働

Q. SCiB™ SIPシリーズを採用されてからの効果について教えてください。

A. 安全かつ最適な容量で24時間フル稼働できるAGVシステムが実現しました。

大手自動車メーカー様の組立工場で「SIPS-1000A」とSCiB™ SIPシリーズとの組み合わせでAGVが稼働していますが、お客さまからの評判も上々です。

非接触自動給電システムによりチョコチョコ充電が可能となり、必要最低限のバッテリー搭載量でAGVの24時間稼働が可能になりました。バッテリーの交換作業がなくなったことで、作業効率も大幅に向上しました。鉛蓄電池のように充電のための専用スペースも不要で、余分な予備電池を在庫しておく必要もありません。また非接触給電なのでショートや感電の心配もなく安全です。ホコリや油が舞う劣悪な環境になりがちな工場でも安心して使用できるようになりました。しかも、SCiB™ SIPシリーズは、負極に安全性の高いチタン酸リチウムを採用したSCiB™セルを使っています。そのため外部からの圧力などでセルの内部に短絡現象が起きても発煙・発火の可能性が極めて少ないという特長があります。この特長により、お客さまの作業環境の安全性をより高めることができます。

「SIPS-1000A」は、鉛蓄電池、リチウムイオン電池のどちらに対しても非接触給電が可能です。また、SCiB™ SIPシリーズは鉛蓄電池からの置き換えが容易なリチウムイオン電池のため、鉛蓄電池で動いているAGVのうち、まず1、2台で置換えを試してみて、効果が実感できれば大規模に展開していく、そんな導入方法も可能です。

今回の自動車メーカー様が工場に導入したSCiB™ SIPシリーズと組み合わせた「SIPS-1000A」による非接触自動給電システムの評判が伝わったのか、他の自動車関連工場からの問い合わせが増えつつあります

SIPシリーズ導入後の効果

必要最低限のバッテリー量でAGVの24時間稼働を実現

専用の充電スペースが不要

非接触給電なので安全

バッテリー交換が不要になり、作業効率改善

今後の展望

Q. 今後の展望についてお聞かせください

A. 自動搬送の分野は今後も進んでいくと思いますが、自動車以外の分野にも導入を進めていきたいです。

AGVの活用は、今は自動車業界が主流ですが、物流の効率化が叫ばれているこれからは、さまざまな分野で自動搬送技術が導入されると思います。自動車業界以外で私たちが持っている技術とお客さまのニーズが合致すれば、ぜひ、提供していきたいと思います。

非接触給電システムの用途はAGVだけに限りません。ロボットをはじめ、電気自動車、プラグイン・ハイブリッド車、電動バス、LRT(新交通システム)、電動アシスト自転車、水中給電、電動工具などさまざまな用途が考えられます。充電で困りごとがあれば、なんでもぜひ、相談してほしいと思います

「産業用リチウムイオン電池 SCiB™ SIPシリーズ」採用企業様のプロフィール

昭和飛行機工業株式会社様

昭和飛行機工業株式会社様は、1937年最新型の航空機を製造しようという壮大なロマンのもとに設立されました。第二次世界大戦終戦まで、ダグラスDC-3型輸送機をはじめ、800機にも及ぶさまざまな飛行機を製造してきました。現在は航空機の製造で培った技術力を元に、航空宇宙分野における機装品および陸上輸送車両の製造販売を行っています。2008年にNEDOの補助事業として電動マイクロバス向けワイヤレス給電の開発をスタート。2012年にAGV用非接触自動給電システム「SIPS-1000」の販売を開始。2016年には、受電ユニットをコンパクト化した「SIPS-1000A」にモデルチェンジ。国内のほとんどのAGVに対応。大手自動車メーカーを中心に同システムが導入されています。

*本サービスは現在、株式会社ビー・アンド・プラスにて対応させていただいております。連絡先などこちらをご確認ください。

対応先
株式会社ビー・アンド・プラス

会社設立
1980年9月

本社所在地
埼玉県比企郡小川町高谷2452-5

事業内容
ワイヤレス給電・充電製品の開発・製造・販売
FA用システム機器の開発・製造・販売
FA関連パーツの販売
各種機器の受託生産(OEM)

オフィシャルウェブサイト
https://www.b-plus-kk.jp/index.html

今回導入した製品


SCiB™ SIPシリーズ

AGV等の駆動用
鉛蓄電池の置き換えに最適な
リチウムイオン電池

  • 専用の充電スペースが不要で、どこでも充電可能。
  • 1時間で充電。最速20分でも充電可能。
  • 寿命10年。トータルコスト削減。
  • 鉛蓄電池に比べてコンパクトで作業負担を軽減。
  • 自己診断で電池を保護・通知。
  • 鉛蓄電池のように誰でも取扱い簡単。
  • 低温でも70%以上の容量を出力。

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