インダストリー4.0のキー概念「アセット管理シェル」とは

(フルバージョンの動画は、こちらでご紹介しています)

昨今、産業界においてサイバーフィジカルシステム(CPS)への注目度が高まっており、さまざまな設備や機器をつないで、そこから生成されるデータを活用して新たな価値をつくることが求められています。東芝グループは、データを生かし、価値あるインフラサービスをお客さまにご提供するため、現場の業務にデジタルを活用する世界の最新テクノロジーの動向を注視してきました。
ここでは、工場やプラントのスマート化を加速する「アセット管理シェル」とはどんなものなのか、そして東芝デジタルソリューションズにおけるアセット管理シェルへの取り組みを、前後編に分けて解説します。


「工場のつながる化」を実現するアセット管理シェル


工場やプラントでは、IoTを活用したスマート化により、設備や機器の稼働率を上げて、作業を効率化し、生産性を向上し、さらにエネルギー効率を最適化することが求められています。これを実現するためには、現場で使われているさまざまな設備や機器のデータを収集し、工場やプラント全体の稼働状況や設備状況などをきめ細かくデジタルで「見える化」することが必要です。
しかし現実には、設備や機器のデータを収集してスマート化を進めるために、解決するべき課題が数多くあります。

日本の製造現場をみると、一口に設備や機器をつなぐといっても、設備や機器をつなぐための通信手順やデータフォーマットなどがメーカーや機種ごとに異なっていたりします。また、設備年齢が10年や20年、ものによっては30年と、長い期間使い続けられている設備や機器が多く、これら既存の設備には、つなぐための「くち」さえ備わっていないというのが現状です。
せっかくスマート工場化しようとしても、つなげるところの第一歩からつまずいてしまうようなものです。

さまざまな設備や機器からデータを収集するために、ベンダーやメーカーに依存しないオープンな規格でかつ、海外の拠点でも使えるグローバルなスタンダード規格を使える仕組みである必要があります。また設備や機器の増設や更新の際にも、その都度メーカーに頼むのではなく、ユーザー自身が設定を変えたり、多くの労力をかけずにシステムにつなぎこめたりできる仕組みが求められます。 

東芝デジタルソリューションズは、このような現場の課題を踏まえ、工場やプラントのオーナーが、設備や機器とシステムとを「つなぐ」ところに労力をかけるのではなく、つないだ後、デジタル空間でデータを「活用する」ところに力を注げるようにするべきだと考え、さまざまな検討を進めてきました。

そこで注目しているのが、異なる設備や機器、システムなどを、オープンスタンダードで連携して「工場のつながる化」を実現させる「アセット管理シェル(Asset Administration Shell)」です。


アセット管理シェルを生かし加速するデータ活用


アセット管理シェルは、インダストリー4.0で提唱されているアセットの接続性と相互運用性を実現するオープンスタンダードです。ここでいう「アセット」とは、フィジカル(実世界)に存在する設備や機器、人、システムなどを指します。アセット管理シェルは、それらアセットをデジタル空間でつなげるためのインターフェースとして、インダストリー4.0の推進団体や企業によってその具体化や活用が進められています。 

オープンスタンダードであるアセット管理シェルの考え方や規格を取り入れることで、特性が異なるさまざまなメーカーの設備や機器などを「1つの方式」でつなげられるようになり、しかもユーザー自身がDIY(Do It Yourself)でつなげられるようにもなります。例えば、パソコンにUSBデバイスを挿すとPlug & Playですぐに使えるようになるのと似た考え方です。

アセット管理シェルを使うことで、これからのスマート工場に求められる「設備や機器などのアセットデータの包括的なマネージメント」が素早く実現できるようになります。
例えば、生産現場の設備の稼働状況や、周辺の機器の状態、AGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)やロボットなどの運転状況、そして設備や機器、その他アセットのメンテナンス状況といった、工場やプラントでの生産マネージメントや設備の運転・保守などに関するデータを、アセット管理シェルを通してデジタル空間に写像して統合し、さらに既存のシステムのデータなどとも関連付けて活用できるようになります。
具体的には、設備や機器の状況や使われ方、さらには工程や工場の状況などを多角的に把握し、工場やプラントにおけるオペレーションとメンテナンス(O&M)の最適化を図ることなどが考えられます。

アセット管理シェルを活用することで、「つなぐ」ところに苦労するのではなく、データを「活用する」ところに注力できるようになるのです。 

オープンで標準的な規格が広まることで、設備メーカーにもメリットがあると考えています。
例えば、世界中のお客さまの現場における設備や機器の「実際の使われ方」をデータで捉えてお客さまそれぞれの使い方に適した運用方法を提案したり、お客さまのご要望に応じて簡単に設備のデータを提供したりできるようになります。また、周辺の設備や関連するアセットの稼働情報も簡単に入手できるようになるため、設備単体ではなく、関連設備や周辺機器を含めた「系」として、より多角的な状況分析が可能となり、メーカーが持つ知見を生かした、より付加価値の高い運用サービスや新しい機種の提案などをお客さまに提供できるようになります。 

さらにエネルギーマネージメントや環境マネージメントの実現、サプライチェーンの強靭化(レジリエント)など、拠点や企業を超えた活動にアセット管理シェルの活用は効果的なため、将来的に社内外とのデータ連携やプラットフォーム連携を行うための準備としても有効です。 

東芝グループは設備や機器をつくるメーカーであり、当社はCPSの切り口からアセット管理シェルの可能性に早くから注目し、それに対応するための開発を進めてきました。そして2021年6月に、アセット管理シェルとアセットデータを統合しマネージするアセットIoTサービスを連携させる新しいソリューション・サービスの提供をスタートさせました。
製造業向けアセットIoT「Meisterシリーズ」で対応(ニュースリリースはこちら)。 

当社は、このサービスの活用により、製造業や設備産業のお客さまにもその効果を実感していただき、また将来的には、オープンでシームレスにアセットデータを活用できる世界を実現していきたいと考えています。 

前編では、工場やプラントのスマート化における課題と、アセット管理シェルの活用による効果を解説しました。後編では、このアセット管理シェルと、東芝デジタルソリューションズにおけるアセット管理シェルへの対応について、詳しく解説します。ぜひ、ご覧ください。

  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2021年10月現在のものです。

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