社会のスマート化やDXを加速するブロックチェーンの公共利用

イノベーション、経営

2025年10月6日

ブロックチェーンと聞くと、誰もが最初に仮想通貨のイメージが頭に浮かぶだろう。しかし、その技術的な活用はそれだけに留まらない。例えば、自治体における公的サービスなどで使うことも可能だ。ただし、まだ本来のポテンシャルに気づいていない人も多いようだ。今回は、自治体でのブロックチェーン利用の可能性と、導入を阻む課題、その解決策、具体的な導入事例などについて、一般社団法人 デジタル広域推進機構(DWPI)の大山水帆氏と、東芝デジタルソリューションズの小澤祐介に、本ウェブメディアアドバイザーの福本勲が話を聞いた。

一般社団法人 デジタル広域推進機構(DWPI) 代表理事 大山 水帆氏

1.自治体DXは職員側と住民側の2つの目線で推進していくことがポイントに

福本:
まず大山さんの自己紹介からお願いします。

大山:
私は2025年3月まで約38年にわたり公務員として、川口市や戸田市でほぼ一貫してIT・デジタル畑を歩んできました。現在は、2023年に立ち上げた一般社団法人 デジタル広域推進機構の代表理事(DWPI:Digital Wide area Promotion Institute)をしているほか、総務省の地域情報化アドバイザーや、経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー、埼玉県市町村デジタル支援コンサルタントなどとしても活動しています。
DWPIは、主に中小自治体のDXを広域で推進することを目的とした非営利団体です。従来の広域連合は、近隣の市町村での連携が多かったのですが、デジタルならば距離に関係なく全国の市町村が集まり人材の共同利用が可能ですので、その支援をしたいと考えてスタートしました。

福本:
デジタルならば、自治体単位でなく、統括的にできることも多くありますね。自治体の情報をワンストップで国などに提供できるような仕組みづくりも推進していくのですか。

大山:
それも最終的にシステムとして目指しているのですが、現在は主に自治体やそこで働く人の支援を中心に行っています。中小規模の自治体ではいわゆる「ひとり情シス」も多く、情報システムの標準化や既存システムのメンテナンスまで一人で行っているため、新たにDX推進に取り組むところまで手が回らないという実情があります。そこで自治体の情報システム部門の仕事をDWPIで支援して、たとえ人員が少なくてもある程度はDXを推進できるように活動しているところです。

福本:
次に小澤さんの自己紹介と、東芝デジタルソリューションズ(TDSL)の自治体向けのソリューション事業について簡単にご紹介いただけますか。

小澤:
私は入社以来、官公庁、特に自治体を担当してきました。TDSLは自治体業務のデジタル化を支援しており、公共事業分野における電子調達システムや公共工事積算システム、職員の皆様が共通で使うグループウェアなどのソリューションを提供しています。

福本:
では本題に入ります。まず現在の自治体DXの推進状況と課題について教えて下さい。自治体側の業務をデジタルで効率化する話と、住民目線の自治体サービスをデジタルで改善していく話があると思いますが、その両面から説明していただけますか。

大山:
国の施策でもこの両面から自治体のDX推進計画を立て、推進していく方針が示されています。行政プロセスの標準化とデジタル化を進め、従来人がやってきたことをコンピューターに任せて効率化し、職員が本来の業務に注力できることを目指しています。今後、職員数の減少が予想されますが、業務自体は減りませんから、将来的に行政サービスを維持できなくなるという危機感があり、そこでDX推進が重要になってくるわけです。
一方で「誰一人取り残されないデジタル化」も求められています。デジタル化は行政内部だけのものでなく、最終的に住民が利便性を享受できることが大切ですから、そういった住民に提供するサービス面でもデジタル活用を押し進めていくことが必要ですね。

福本:
職員が減っていく中で、デジタルで可能なことは基本的にデジタルで行い、本当に人でなければできないことを人が担うことで行政サービスを維持しようということですね。一方、デジタル化によって、住民が役所に行かなくても多くの行政サービスを受けられるようになるなど、住民にとってのサービス品質も向上していくという理解でよいでしょうか。

大山:
はい。具体的にはエンド・ツー・エンドのデジタル連携により、紙での申請が入口からデジタル化されるわけです。ただ現在は、せっかくオンラインで申請ができるようになったのに、紙に一旦出力する手順が踏まれています。その後は従来通りの業務フローになっており、一部だけのデジタル化に留まっています。それをきちんと出口までデジタルで連携し、最終的に住民に届くものまでデジタル化すれば、住民はわざわざ役所に行く必要もなくなりますし、さまざまな情報を連携して把握できるようにすれば、職員の業務も効率化できます。ですから業務プロセス自体を見直していくことが重要になります。

2.自治体DXを阻む壁~単なる標準化だけで済まない、制度や人事面の改革も!

福本:
今の業務をデジタル化するには、業務分担や業務プロセスそのものの変革も同時に進めていく必要があるということでしょうか。

大山:
トランスフォーメーションというのは、基本的に業務変革まで含めたアプローチです。単純にデジタル化するだけでも相応の効果は見込めますが、従来の業務プロセスのままでは大きな効果には繋がらないでしょう。そのためデジタルを前提とした仕組みづくりや、業務のやり方を変えるところまで踏み込んでいく本格的な変革が求められます。

小澤:
これまで自治体のお客様へのシステム提案時には、「自分たちの業務に合ったシステムを作って欲しい、しかもコストを抑えたい」というご要望を多く頂いていましたが、最近は、どのように業務を効率化すべきか、デジタルで業務をどう変えていくか、という提案が求められており、お客様の意識がだいぶ変わってきていますね。

福本:
従来は自治体ごとにシステムがバラバラだったのかもしれませんが、基本的に同様のサービスを提供しているならばプロセスを共通化することでデジタルも推進でき、保守まで含めて効率化が図れるということですよね。

大山:
業務を標準化するという方向性は間違っていませんが、自治体の現状に即して標準化を進めるとなると、そう単純な話ではありません。「業務が同じだから標準化して同じシステムを使えば良い」と拙速に仕様を作って導入しても、自治体では上手く機能せず、逆に標準化する前よりも効率が悪くなったり、コストが高くなってしまうこともあるのです。

福本:
公的なサービスのDXによって行政データの連携、流通が実現されると、自治体や住民はどのような恩恵を得ることが期待できますか。

大山:
データ活用については昔から言われていますよね。オンライン投票、不動産登記など、アナログで行われてきたことがデジタルを前提にしたものにシフトしていけば良いのですが、なかなか進展していません。その理由については分析が必要ですが、やはりデジタルを前提にしようとすると、現行制度や法令の壁があるのだと思います。例えば、必ず役所に出向かなければならない手続きや、面談が必要な手続きなどがあり、全面的なデジタル化が難しい部分も残っています。自治体の立場からすると、法令順守が原則になりますのでその壁を越えることは難しく、国側も規制改革に動いているようですがなかなか進んでいません。これも大きな課題だと感じています。

福本:
自治体DXを阻むものとして、ハンコレスや公的書類のデジタル化に対する各種アナログ的な規制などの課題も出ています。それらを解決する方法があれば教えて下さい。

大山:
やはり自治体のDX推進の一番大きな課題は人的リソースでしょう。私がいた戸田市では、まずDX推進のための組織を立ち上げてから全庁改革を進めました。そのデジタル推進室でCDO(Chief Digital Officer)としてデジタル戦略を示し、市長に「デジタル宣言」をしてもらうなど、職員が「自分ごと」としてDXを推進していくような機運を醸成してきました。例えば、DXのために初期投資が必要でも、結果的に業務時間の削減につながることを説明することで、予算を確保するとともに人員も増強することができました。
ただ多くの自治体では、そういうわけにはいかないかもしれません。法律で定められた仕事を行うために人員を割かれ、どうしてもプラスの仕事や新たなDXの取り組みにまで手が回りません。そこで外部人材を登用する方法もありますが、民間企業の方が雇用条件が良いので、募集しても人がなかなか集まりません。また、自治体職員は異動もあるので、せっかく育成しても5年くらいで異動してしまい、また新たな人員を探さなければいけないということもあります。私が最近一番必要だと感じていることは、人事面の改革ですね。そこに着手しないといつまでもDXが進まないと思っています。

小澤:
最近は自治体でもDX推進のため先進的な技術を取り入れる機運が高まってきましたが、例えばAIが出始めた頃は、どう業務に活かしていけばよいのか分からず最初にスタートを切ることを躊躇する自治体が多かったように思います。ブロックチェーン技術についても、言葉は知れ渡っていても、それを自治体に浸透させていくには時間がかかるのではないかと感じています。

東芝デジタルソリューションズ  ICTソリューション事業部 官公営業第三部 営業第三担当
参事 小澤 祐介

3.ブロックチェーンの特長を活かした自治体への適用と具体的な事例とは?

福本:
ブロックチェーンの話が出たのですが、自治体のDX推進の中で、ブロックチェーン技術に対する期待が高まっているのでしょうか。

大山:
実は自治体でブロックチェーンへの期待がそれほど高まっているわけではなく、そもそもブロックチェーンが何たるかを理解するところから始めなければならない段階です。我々がブロックチェーンに期待している点は、ブロックチェーンのノード(コンピューターやサーバー)に参加するだけで、ネットワーク上のデータを連携して保存、検証、分散管理ができるところです。また、中央集中型のシステムではないため、特定の管理主体を必要とせず高額な初期投資も不要で、原本性を担保する仕組みがあるなど、自治体に大変向く部分がありますから、DX推進のためのツールとして適材適所で上手く使っていけると良いでしょう。

小澤:
大山さんからご指摘いただいたように、ブロックチェーンは原本性の保証などをローコストで実現できる点に大きな特長があります。また、ブロックチェーンは自治体内部でいろいろなシステムの基盤として使えます。さらに、その基盤を複数の自治体で使えば、自治体をまたいださまざまなサービスや証明書などを共同利用できるようになるでしょう。

福本:
自治体同士で個人情報や秘匿性の高い情報などをやり取りする時にも、ブロックチェーン技術を使うことで信頼性を担保できるということですね。具体的なユースケースや活用事例はありますか。

小澤:
長崎市の電子契約システムでの活用事例があります。TDSLが同市と連携協定を結び、ブロックチェーンを活用した契約事務のデジタル化を2021年に実施し、その結果を踏まえて2023年から電子契約システムを本格稼働しています。それまでは、例えば市が公共工事を発注する際には、市と工事を請け負う事業者の双方が紙の契約書に印を押す必要があり、事業者側は紙の契約書を役所に持って行き、誤りがあれば修正し、契約書を最終化できるとようやく押印される、というアナログ的な業務プロセスでの契約締結が行われていました。これをデジタル化し、オンラインシステムで契約合意を交わしてその記録をブロックチェーンで保存し、契約書の原本として真正性を担保することに使えます。

福本:
国内では、ブロックチェーンが電子契約システムでの契約書の原本性保証に使われているということですね。欧州では、欧州ブロックチェーン・サービス基盤「EBSI:European Blockchain Services Infrastructure」という、欧州の公的機関が展開するデジタルサービスを支援するためのブロックチェーンを基盤としたプラットフォームがあります。欧州では基本的に欧州全体を統合しようという方針で、データスペースを作ってデータを流通させ、標準化を進める動きを進めてきた中で、ブロックチェーンの導入も進めています。このようなEBSIの取り組みは、文化の異なる日本では難しいのではないかと思いますが、どのようにお考えですか。

大山:
感覚的な話ですが、モデルとしては日本でも根付く可能性があると思っています。ただ従来のように、デジタル庁や総務省など国が推進すると縦割行政の弊害も出てなかなか進まないという懸念はあります。一方で、EBSIのように公的機関が連携してブロックチェーンを進めるという考え方ならば、日本に若干馴染みやすいという印象です。

福本:
欧州では、アーキテクチャーを先に作ってから下に落としていくアプローチを取っています。日本は意外とボトムアップになりがちで、積み上げた結果として綺麗なアーキテクチャーにならないケースが結構あります。アーキテクチャーを作ってトップダウンで進めた方がよいと感じているのですが、いかがでしょうか。

大山:
そもそも日本はアーキテクチャー自体が作れないと考えていて(笑)、標準化の考え方は良くても、実体に則した形で使えるものに落とし込めていない印象が強いですね。

小澤:
そういったところで、我々は自治体の方々の声を集めてどうあるべきかを検討して形にしたいと考えまして、2024年度に自治体の方々と「ブロックチェーンの公共利用研究会」を開催し、ブロックチェーン技術についての理解を深めた上で、それをどのように活用していくかを考えてきました。

福本:
当事者の声を聞いて、何をしたいのかという話と、テクノロジーとして何ができるのかという両面で理解をしてもらわないといけないですね。新たなテクノロジーを公共サービスに導入する上での課題はありますか。

大山:
自治体はやはり失敗してはいけないという思いが強く、新しいことにチャレンジする際にどうしても怖がってしまいがちです。自分が理解できないことになかなか手を出せない傾向もあります。ブロックチェーンではネットワークに繋がれば誰でも参加できるのですが、そこについても少し不安があるのかもしれません。

福本:
これはセキュリティと同じですね。今やセキュリティが心配だから繋がらない世界に逆行する、ということはあり得ません。繋がる世界が前提ということが基本になっています。データのやり取りをする安心感をいかに与えるかということが重要なのでしょうね。

大山:
むしろセキュリティの高い仕組みがブロックチェーンによって実現できることを、自治体にはきっちりと理解して欲しいですね。それが現状ではなかなかイメージが湧きにくいのでしょう。

福本:
何か納得してもらうための説明のポイントはありますか。国内でのブロックチェーン利用は、仮想通貨やNFTアートのようなところが先行してしまったので、そういうイメージを持った方が多いのかもしれないですね。

小澤:
確かにブロックチェーンというと仮想通貨のイメージが強く、公的サービスで使うことを理解するのは、まだハードルが高いように感じています。我々の取り組みとしては、先ほどの電子契約システムでも、ブロックチェーン技術を使う際に法的な保証をしっかりと担保していることも含めて理解してもらうように務めています。「グレーゾーン解消制度」という、新たな事業活動を行う際に事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度があります。我々はこの制度を使って、この電子契約システムが電子署名法に適合するかどうかを経済産業省に確認し、ブロックチェーン技術を電子契約に適用できるというお墨付きをもらっています。

4.ブロックチェーンの公共利用研究会で、自治体導入時の不安解消や技術認知を!

福本:
大山さんが座長をされた「ブロックチェーンの公共利用研究会」のお話も伺いたいと思います。この研究会はどのような目的で、どのような活動をしたのでしょうか。

大山:
もともとブロックチェーン技術が公共利用に非常に有効に使えるのではないかという発想から、本研究会を発足しました。自治体の方々が集まり、ブロックチェーンについて勉強しながらその使い道をしっかり考えていくことが絶対必要だと思っていました。導入時の不安を解消する面もありますし、新技術を知っていただく面もあります。そこで、自治体職員の方々に参加していただく研究会を開催し、活動内容について報告書をまとめました。このような活動を知っていただくことも一つの目的です。

(画像をクリックすると拡大表示されます)

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小澤:
我々TDSLも事務局として関わらせていただくことで、自治体の皆さんにブロックチェーンという技術について知ってもらい、同時に我々も自治体のどのようなサービスにブロックチェーンを使えるかを一緒に学びました。ブロックチェーンにはプライベート型やパブリック型などの種類があるので、公共サービスに適用する際にベストなものを一緒に検討しました。

福本:
研究会に参加された皆さんの反応はどうでしたか。

大山:
どちらかというと勉強会的な活動になり、いろいろな事例や技術解説がメインになりましたが、参加者からはブロックチェーンに関する理解が深まったという声をお聞きしています。自治体のサービスでどのような使い方があるのかについて、ディスカッションも行いました。

福本:
公的サービスの話として、DAO(Decentralized Autonomous Organization:特定の管理者や中央集権的な組織構造を持たない自律的に運営されるオンライン上の分散型自律組織)のようなことも含めて、ブロックチェーンを活用していくアイデアもあるのでしょうか。

小澤:
自治体の小さなコミュニティ、例えば町内会やPTAなどの維持が最近難しくなり、組織運営の新しい形としてDAOが注目されています。管理者がいて指示される形ではなく、参加者が自律的に活動を盛り上げていくというユースケースです。実際にそういったことが必要になると思っており、そのDAOの仕組みもまさにブロックチェーンで実現できるので、一つの可能性として考えられますね。

福本:
これは中央集権的に何かを決めるのではなく、それぞれの違いも認識しながら、みんなで物事を決めて一緒にやっていこうといった動きですね。こういうことを含めて、パブリック型のブロックチェーンネットワークはどのようなものであるべきだと思われますか。

大山:
まだ日本も含めて世界的にパブリック型のブロックチェーンが浸透しているというわけではありません。それをどうやって進めていくべきかが、我々の研究会のテーマの一つになっていました。ただ日本の特性として、パブリックなものはあまり使われにくく、クローズドで使いたいという要望も根強くあります。そのため、ガバメント的な、あるいは中立的な組織が管理するネットワークの方が安心して使えるのではないか、という意見も多く聞かれました。

福本:
公的ブロックチェーンに対する受け取られ方は、自治体によって温度差があるのですか。

大山:
先進的な取り組みをしている自治体や、大きな自治体は非常に積極的ですが、中規模以下の自治体は実際に使えるようになったら導入したいという感じです。ですからブロックチェーンの実証実験を小さな自治体でもトライしてもらい、役立つことを示すことが重要ですね。

福本:
DWPIでは、自治体DXや社会課題の解決に向けてどのようなパーパスを持ちながら、将来的にどのようなことを目指そうとされているのかを教えて下さい。

大山:
中小規模の自治体はDX人材が圧倒的に不足しており、そこを何とか解決しなければなりません。最終的には自治体のデジタル広域連合を立ち上げ、DWPIが各市町村のデジタル戦略室やIT推進室などの仕事を「まるっと」請け負えたらと考えています。そうすることで、人材がいなくてもある程度はDXの推進が可能になるでしょうから。

福本:
支援や伴走だけでなくて、代替してあげることも含めて考えているのですね。

大山:
最終的には代替まで考えています。ネットワークにノードとして参加すれば日本全国どこでもデジタル広域で施策を行えるようになるという点で、ブロックチェーンはDWPIが目指すコンセプトに非常に合っています。

小澤:
当社もブロックチェーンは多くの可能性を秘めていると考えており、エンタープライズ向けプライベートブロックチェーン「DNCWARE Blockchain+」を提供しています。自治体のブロックチェーン基盤を作るところでは、まずはビジネスよりも、とにかく多くの人々が利用してもらえる環境を整備し、その上でブロックチェーンを活用した多様なサービスを提供していきたいと考えています。

福本:
東芝のブロックチェーン・サービスに関しては、以前、本ウェブメディアでも紹介させていただきました。

 ブロックチェーンがもたらす新たなビジネスの可能性
 (前編)~ブロックチェーンの価値とその利用動向~  
 (後編)~ブロックチェーンを活用した協業の取り組みと未来社会への貢献~

先ほど欧州の動向でEBSIの話を伺いましたが、将来的に日本版EBSIのようなガバメント・ブロックチェーン的なものができるのか、その実現性を教えて下さい。

大山:
実現できる可能性は十分にあります。ブロックチェーンは初期コストがそれほどかからず、参加することも容易なので、非常にネットワークを広げやすい技術です。一方で、やはり自治体の皆さんに理解していただくことが大きな課題ですね。これも同時に進めないと普及していかないでしょう。そのためにも実際にやってみて、成果を出していくことが大切だと思います。

福本:
ブロックチェーンを推進する際、自治体ごとにピア・ツー・ピアでやっていくのか、欧州のようにガバナンスを効かせて進めていくのか、どちらが良いと思われますか。

大山:
日本では完全にフリーで進めるのは厳しい気がします。ただ逆にガバナンスを効かせすぎるとブロックチェーンの良さが失われるので、その中間ぐらいが良いのかなと。

小澤:
国が動くにしても、ある程度はボトムアップで自治体が声を上げていかないと、なかなか話が進まないでしょうね。そういう意味では、自治体の皆さんが自主的にブロックチェーン基盤を構築していくことが重要だと考えています。

福本:
住民目線から見ると、引っ越しで住所を移動したときなど、どこの自治体でもワンストップで同じサービスが受けられると嬉しいわけで、そういうことも含めて住民の観点から考えることも大切ですよね。

大山:
まさにおっしゃるとおりです。国の政策は、どちらかというと技術中心に進めているように感じます。でも本当に必要なことは、住民目線で便利になるように進めていくこと。そのギャップを解消する必要があります。

福本:
ギャップを埋めるには、自治体の方からボトムアップで上げていくアプローチが求められるということですか。

大山:
我々は、僭越ながらその役割を果たすべくいろいろと活動しています。自治体としてはなかなか直接言えないこともあるため、我々が代わりにメディアに向けて発信している部分もあります。

小澤:
技術も重要ですが、ユーザーありきで、自治体や住民の方々の利便性を第一に考えることが大事ですね。

福本:
最後になりますが、大山さんからTDSLや東芝グループに期待していることをお伺いできると嬉しいです。

大山:
東芝グループは以前からブロックチェーンに関して積極的に取り組んできた企業です。先ほどのプラットフォームによって、今後ブロックチェーンの普及が加速していくでしょう。既に御社はブロックチェーンを使った電子契約システムなども提供していますが、日本企業ではブロックチェーン技術に注力する企業は少ないため、今後も大いに期待しています。ぜひ我々と共に自治体へのブロックチェーン導入を推進していただきたいですね。


大山 水帆氏
一般社団法人 デジタル広域推進機構(DWPI) 代表理事

1987年 川口市に入庁。2017年 戸田市に入庁。2021年 デジタル戦略室長(CDO)。総務省地域情報化アドバイザー、経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー、埼玉県市町村デジタル支援コンサルタントなどを担当。2023年4月 一般社団法人 デジタル広域推進機構(DWPI)を設立し、代表理事(CEO)に就任。

小澤 祐介
東芝デジタルソリューションズ株式会社
ICTソリューション事業部 官公営業第三部 営業第三担当 参事

入社以来、官公庁のソリューション営業を担当。現在は自治体向けソリューションの営業推進に従事している。

  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2025年10月現在のものです。

関連リンク

(一般社団法人 デジタル広域推進機構のサイトに遷移します)

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