オープンコミュニティで拡がる モノやヒトが繋がる新たな世界(第3回)

イノベーション、テクノロジー

2021年5月31日

ifLinkオープンコミュニティに参加する会員企業の方々から、入会の動機やコミュニティでの活動内容などについて伺う座談会(3回シリーズ)の最終回。
第1回では、ifLinkオープンコミュニティへの参加のきっかけ、目的などについて伺った内容、第2回では、この1年間での取り組みや成果について伺った内容を掲載した。
今回は、今後のifLinkやifLinkオープンコミュニティに期待することなどについて伺った内容を紹介する。


ifLinkオープンコミュニティではなぜ、フラットな活動ができるのか

千葉:
ifLinkオープンコミュニティでは、「秒速!社会の不満不便発見トレーニング部」を含め、現在12の部活が行われています。梅原さんも行武さんも、コミュニティに参画される前は知り合いではなかったと思いますが、そういう方々が部活に入ることで、会社を超えてフラットに活動しているというのも、このコミュニティの大変ユニークな点だと思います。またプレミアム会員を中心にifLinkを活用して他会員とビジネス共創活動を行う「ビストロifLink」というオープンマーケティングプログラムでは、約30のプロジェクトが生まれました。
ifLinkオープンコミュニティはさまざまなフラットな枠組みで活動を推進しています。なぜこのようなことができるのか、あるいは難しいと感じていることや課題について、皆さんの意見をお聞かせください。

梅原:
フラットに意見交換をする場があって、それに賛同した方が参加しているからというのが大きな理由だと思います。企業の一員として参加すると、企業の目的や利潤といったものを求めがちです。しかし、このコミュニティでは、コラボレーションして新しいものを創り出す場であるということを明確に打ち出しています。だからフラットな場となり、フラットな活動ができるのだと思います。

安保:
さまざまな活動が同時並行で動いていて、いつでも誰でも参加できるので、興味があればその中にどんどん入っていくことができる。その点はとても良いことだと思います。一方で、それぞれの活動が個別に動いているので、その連携が今後の課題だと思います。
ifLinkオープンコミュニティはユーザー起点に立った、ユーザー課題を解決するためのプラットフォームです。会員自らがある意味ユーザーの立場になって課題を設定したりしていますし、「秒速!社会の不満不便発見トレーニング部」ではバーチャルなユーザーも活用していますが、これからはもっと多くの実ユーザーにフラットに参加してもらい、ダイレクトに意見を聞ける場が作れたらいいなと思います。


今後のifLink、ifLinkオープンコミュニティへの期待

千葉:
最後にifLinkオープンコミュニティで今後実現したいことや思いなどがあればお聞かせください。

安保:
デンソーは、クルマをひとつのデバイスと考えてIoT化に取り組んでいます。現状のifLinkはAndroidスマホ上のIoTにとどまっています。なるべく早くあらゆるデバイスの上で使えるようにしていきたいという思いがあります。
1年間、皆さんと共に活動して、アイデア創出や共創がうまく回るようになってきたので、今後はそれらの実用化にチャレンジしていきたい。PoC(Proof of Concept:概念実証)のためのものではなく、実用に耐えうるものにしていきたいです。

吉本:
実用化の第1弾は、「新型コロナ対策部会」で試作したコロナ対策アプリを商品化したCO₂濃度モニタリングサービスでしたが、これを皮切りに第2弾、第3弾とリリースしていきたいですね。

吉本:
京セラさんが提供されていたモジュールは、ビーコンに近づいたらクラウドで送信するという便利なもので、色々な部活で使われていてレシピカップでも大人気でした。

安保:
GAFAを超えるような、世界に通用するIoTの標準プラットフォームを作るというのは、言うのは簡単ですが、実現には血のにじむような努力を繰り返さなくてはなりません。それは当然1社でできることではなく、今の会員だけでも難しいかもしれない。でも、もっと会員を増やして、皆で同じ世界を目指し、それぞれができることをGiveし合うことによって実現できるのではないでしょうか。それがきっと環境問題をはじめとするさまざまな社会課題を解決する糸口にもなると信じているので、この活動に引き続き力を入れたいと思っています。

山田:
私はifLinkオープンコミュニティをより一層良くするため、コミュニティの活動を一般の方に広く分かりやすい形で伝わるようにできないかと考えています。ifLinkは非常に良いシステム、サービスですが、オープンマーケティングプログラムのことを「ビストロ」、ユースケースアイデアの発想・共創を行うワークショップを「オオギリ」と呼ぶなど、キーワードが独特過ぎて、頭の中で自分たちのやっていることとうまく結びつかないケースが多いです。社内で議論していると我々の活動とこの「オオギリ」がどう関連するのかがわからなくなる。
カタカナ用語を使うことは問題ないのですが世の中一般の用語で価値を語ることがオープンコミュニティとして大切なのではないかと思います。メタファ(暗喩)を駆使すると、メタファが通じる相手としかコミュニケーションが取れなくなるというのは主旨に反してしまうのではないでしょうか。一見、メタファで平易にしたつもりがその逆の効果を生んでしまうという点を危惧しています。さらにいうと、何をやっているかのコンテキストが理解できないことが参入障壁や心理的な抵抗となり、一見さんお断り状態になるのではという危惧もあります。今後どんどん新しいメンバーが入ってくることを考えると、なるべく一般用語に寄せたほうが共創活動は進むのではないかと思います。
それから、昨今、リコーでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の案件に関わることが増えているのですが、顧客が何かやりたいと考えたことを多額の費用や時間をかけずに、IoTをいかにうまく活用して実現するかがDXのカギとなっています。そこで、DXを加速させるための選択肢の1つとしてifLinkを活用することについても価値検証をしていきたいと思っています。

千葉:
ifLinkオープンコミュニティが誰もが参画・活用しやすい場になるためにも、言葉ひとつにしても身近なものにすることは大事ですね。自戒を込めて、とことん平易な言葉でみなさんとこれからの活動をつくっていきます。

京セラ株式会社 通信技術部 プロダクト3部 第1技術課 梅原正教氏

梅原:
私が将来的に目指したいのは、ifLinkで掲げている誰でも簡単にというところです。私は元々、携帯電話の設計に従事していました。その時に嬉しかったのが、電車の中で自分が設計した携帯電話を使ってくれている人を見かけたことです。肩をたたいて「僕が設計したんです」と言おうかと思ったぐらい感動した覚えがあります。それと同じで、ifLinkも世の中に出回って、電車の中でパッとifLinkアプリを開いて使っているような人に出会えたら、とても嬉しいだろうなと思います。
身近な課題を解決する手段としてifLinkを当たり前に使ってもらえるようになれば、使う人たちの困りごとを一つずつ解決できるようになります。解決する喜びを提供するだけでなく、ストレスを減らすこともできるので、生活だけではなくメンタル的にも豊かな世の中になると思っています。例えば何かが自動化されただけでも少し心に余裕ができるようになり、そうするとまた違ったところに頭を使うようにできるので、新しくクリエイティブな発想ができたり、仕事の工夫もできるようになります。そういう変革が日本をはじめ世界中のあらゆる場で起きれば、すごい相乗効果を生み、豊かでクリエイティブで楽しい世の中になっていく。ifLinkはそのパズルのピースになれる可能性がある。そういった未来を目指して、コミュニティ活動に少しでも尽力できたらなと思っています。
ifLinkはまだ一般のユーザーに使ってもらえるところまでは普及していません。普及と実用化に向けて新たに「みんなで普及・実用化プロジェクト」が始まりましたが、実際に使ってもらって問題をあぶり出したり、価値を体験してもらうことが重要だと思うので、自分にできることがあれば進んで協力していきたいと思っています。

行武:
私は、我々が持っている不満データを活用するとこういうことが見えてくるというような活用方法を、もう少しモノづくりをしている人たちの中で体感してもらえる仕組みを作っていきたいと思います。ユーザーが製品に対する不満やアイデアを提供したいと思っても、それを可視化することはできません。ユーザーが体験して感じた不快な点や嫌な思いなどを、作った側の人が取り入れるツールとして、不満データを使っていただけるといいなと思います。また先ほどの香川大学での取り組みなどを聞いて、データそのものの偏りや社会課題をあぶり出すような仕組みとしても、不満データが使えるなと思いました。色々な分野で少しずつ活用の場面を提案できればと思います。

吉本:
不満データは本当に貴重な情報なので、会員の全員が共有して見られるようにし、これやってみようって誰でもがそこから選んで実現できるような形にできたらいいですね。

行武:
一般的な商品に対する不満は分かりやすいのですが、実際の投稿は人間関係の不満など、人と人とのかかわり方の投稿だったりもします。そういった不満を何かアイデアに転換して、モノづくりに転換できるコツをつかんでうまく使えるようにすると、最終的にはストレスのない社会が実現できるかもしれないと考えています。

千葉:
ifLinkオープンコミュニティにはタレントも多く、スキルや技術はもちろん、モジュールやアイデアもあります。今少し足りないのは、ユーザーに届ける方法やマネタイズの部分です。ですが、そういうところも、今日、皆さんと話をさせていただいて具体化に向けて加速できそうだと感じ、これからがますます楽しみになってきました。

吉本:
ifLink Open Community 2021 Winter Festival」でも発表したように、ifLinkプラットフォームは今後、IoTビジネス創出の発想から事業化までの様々な活動で生まれるアイデアや情報を共有・活用していくための「ifLinkデザインシンキングプラットフォーム」を目指していきます。その第1弾として、2021年5月にifLinkプラットフォームの使用環境を一般公開しました。10月以降には、ifLinkと繋がるモジュールやifLinkで実現可能なレシピなどの情報を共有するWebサイトも一般公開する予定です。このように試作のためのネタをたくさん用意し、試作したものを事業化まで持っていけるような仕組みを作り、それを共通化して回していけるようにし、より満足感のある活動をしていただけるように進めていきたいと思います。

千葉:
参加者の皆さん、本日はありがとうございました。


執筆:中村 仁美
撮影:鎌田 健志


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  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2021年5月現在のものです。

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