オープンコミュニティで拡がる モノやヒトが繋がる新たな世界(第2回)

イノベーション、テクノロジー

2021年5月26日

ifLinkオープンコミュニティに参加する会員企業の方々から、入会の動機やコミュニティでの活動内容などについて伺う座談会(3回シリーズ)の第2回。
第1回では、ifLinkオープンコミュニティへの参加のきっかけ、目的など伺った内容を掲載した。今回は、この1年のコミュニティでの取り組みや成果について紹介する。


ユーザー体験の変革をもたらしたオープンコミュニティでの具体的な活動とコミュニティの特徴

千葉:
続いて、この1年間のifLinkオープンコミュニティでの皆さんの取り組みについて伺いたいと思います。

安保:
自動車の可能性を知るために、異業種の方々の意見を伺いたいと思っていたところ、会員の皆さんからクルマの空間の使い方についてさまざまなアイデアをいただくことができました。また、クルマの情報をオープン化したら使ってもらえるのかを確かめたいと考え、実物のクルマを皆さんに配ることはできないので、ifLink対応したバーチャルカーを開発し、遊んでもらえるように公開しました。その説明会には30名ほどの方が参加され、実際に動くレシピも多数作成していただけたので可能性の大きさを感じました。

吉本:
ifLink Open Community 2021 Winter Festival」では、大学生がバーチャルカーを使って面白いアイデアを発表していましたね。クルマのIoTを学生が考えるというのは、今までにない取り組みだと思いました。

千葉:
私もすごいと思って見ていました。もう一つ驚いたのが、デンソーさんの取り組みスピードの速さです。2020年8月に開催された「ifLink Open Community Festival 2020 Summer」の時も、初めて会ったばかりの他社の複数会員の方々とオンラインミーティングだけで、わずか1か月の間にifLinkでモジュールをつないでアイデアのプロトタイプまで共創された取り組みについて紹介されていました。

安保:
ifLinkで本当に繋げることができるのかということを確認したかったので、異業種の方と繋がってみようという話になりました。そこでクルマと繋がってくれる企業を募集したところ、数社から連絡をいただき、そのうちの一社がノーリツさんでした。そして給湯器とドライブレコーダーを繋ぐことで、「家に帰ったらお風呂が沸いている」というサービスを作りました。デンソー側は、位置情報を利用して指定の場所に来たら通知を送る仕組みを、ノーリツさんは通知が来たらお風呂を沸かすモジュールを、それぞれが既存のアセットを生かして作り、それらをお互い郵送して交換しifLinkに繋ぐだけで、サービスのデモを実現することができました。このように簡単に、すぐに繋がるのがifLinkの良いところ。仕組みが標準化されているので、迷わず繋ぐことができました。

山田:
私は5年前から香川大学と共同研究をしていますが、ある先生からIoTの授業をどのような仕組みや仕掛けで行ったらよいかと相談がありました。IoTのHowだけではなく、ツールを使う目的や背景まで教えられるよう、アイデアソンとハッカソンをワンセットにしたような一連のイノベーションが体験できる授業をしたいとのことでした。これは絶好の機会だと思いifLinkを紹介したところ、さっそく「授業に採用したい」という話になり、リコーと香川大学との共同開発によって実現したのが「IoT人材育成教育プログラム」です。このプログラムのプロトタイピングのためのツールとしてifLinkを採用しています。授業では、4チームに分かれてアイデアソンでアイデアを練り、ハッカソンではifLinkを活用して顧客の困りごとを解決するものを実際に作りました。それに加えて、プレスリリースとプロモーションビデオを作成して発表するまでを体験してもらったのです。審査員を務めたのは大学の先生と私たち。先生はアイデアソン、ハッカソンの観点で審査をし、私たち企業の人間はマネタイズや事業化の観点で審査をしました。
この授業は元々、工学部の中でもITリテラシーの高い学生を対象にする予定でした。しかし、誰もが使えるというifLinkの利点に大学の先生方が共感してくれたので、経済学部やデザインを専攻している学生たちも参加することになりました。専門の異なる学生たちがチームを組んだことで、お互いに刺激を受け、とても柔軟なアイデア発想に繋がりました。その結果、この授業の満足度は74%と非常に高い評価をいただくことができました。
もう一つ、香川大学が開催している「まちのデータ研究室」という、香川県や高松市が提供している地域情報プラットフォームのオープンデータを利用したアプリ開発を行う市民講座の中で、ifLinkを使った講座をさせていただきました。幅広い年齢層の市民の方々にとって身近な課題を取り上げ、それを容易に解決できる手段まで用意する必要があると考え、ifLinkを使わせていただきました。プラットフォームから降雨計のデータを取ってきて、IF-THENのIoTレシピでプロトタイプを作りました。
その際に、例えば「この地区は雨が降っているので傘を持って行きましょう」という通知を出す仕組みのテストは晴れている時はできないので、API(Application Programming Interface)で取ってきた生のデータを途中で雨に変えて流す、といったアレンジを加えてifLinkを使いました。ifLink単体だけではなく、IFの前やTHENの手前でアレンジを加えることで、さらにifLinkの活用が広がると実感しました。

株式会社Insight Tech 行武良子氏

吉本:
現実情報をシミュレーションするようなツールがifLinkにあるといいですね。香川大学との取り組みで素晴らしいのは、文系や理系、年齢など関係なくダイバーシティ・多様性のある方々が参加されていることだと思いました。私も以前、昭和女子大学でIoTのワークショップをしたのですが、参加者は全員文系。でも、ifLinkを使うと、実際にモノが動くので、自分のアイデアがすぐに確かめられると好評でした。学生たちはビジネスデザイン専攻だったので、このサービスをいくらで売ろうかといったところまでリアルに考えていました。

山田:
これまではテクノロジーが難しくてIoTの敷居を高くしていたところがありましたが、ifLinkはそれこそ文系の方までしっかりと受け入れられるツールになっているというのが、かなりインパクトのあることだと思います。

梅原:
私のこの1年間の活動を紹介させていただきます。京セラはモジュール企業なので、自分たちのアセットであるセルラー通信を利用したIoT機器をifLinkオープンコミュニティに提供しています。当社が提供できるモノの幅はあまり広くないのですが、自分にできることはすべて提供したいと思って活動に参加しています。アイデア出しなら自分の時間さえ使えばいくらでもできます。アイデアをもらってばかりではコミュニティのコンセプトにも反しますし、自分から出さないと得るものが無いというのが私の考えです。まずはやってみるというのが自分の行動理念でして、私としてはできることをやっているだけ。引き続きそれがコミュニティに役立つよう、活動を続けていきたいと思います。

吉本:
京セラさんが提供されていたモジュールは、ビーコンに近づいたらクラウドで送信するという便利なもので、色々な部活で使われていてレシピカップでも大人気でした。

千葉:
ifLinkで活躍している方の共通点は、まずはやってみる、そして、惜しみなくGiveすること。ifLinkオープンコミュニティでは「Give & Give」がコミュニティの文化になっています。

安保:
梅原さんもおっしゃっていましたが、お客さまにとって最適なモノを提供しようと思うと一社ではできることに限界があります。もしかしたら自社が関わらなくても、他の会員同士を繋げてあげるほうが良いものが提供できるかもしれません。このように会員同士を繋いで何かを作ることはGiveですが、いつか自社にも同じように出番がくるかもしれません。全会員が仲間で、全員のものを自分のものと同じように考えれば、新しいパワーが生まれると思っています。

行武:
「秒速!社会の不満・不便発見トレーニング部」では不満データと、IF-THENを通して、サービス作りを一気通貫でスピード感を持って実現することを目的としています。普段、マーケティングにあまり携わらないエンジニアの方に参加してもらって、不満のデータを目にした時に、思いついた解決策をすぐ実現できるような世界観ができれば面白いと思い、部活名の頭に「秒速」という言葉をつけています。
部活では、「生活者の生の声」を見てもらい、強制発想的にそこから思いついたものをすぐ形にするといったトレーニング的な取り組みをしてきました。

梅原:
この部活の部員の立場から少し話をさせていただくと、不満データをインプットし、問題点を見つけてどうやって解決していくかという流れをトレーニングとしてたくさん実践してきました。そこで思ったのは、アイデア出しも一人では限界があるということです。世の中の人々の不満データを読むと、立場の違いによっては、同じ物事に対してもまったく違った切り口からの不満があることに気づき、それがとても新鮮でした。
ただ、「トレーニング部」というだけあって、不満に対して黙々と解決策を書いていくという時間が多かったので、楽しい反面、頭の使い方を変えていかなければならず、しかも毎回インプットが変わるので、なかなか大変でした。でも、その名の通り非常に良いトレーニングになりました。

【最終回はこちら】


執筆:中村 仁美
撮影:鎌田 健志


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  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2021年5月現在のものです。

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