デジタル技術と現場をつなぐ対話から、社会インフラを支える
高速道路の日常点検業務の高度化に向け、画像認識AIを活用した社会インフラ分野への提案活動に取り組む高野歩芳。技術を一方的に提案するのではなく、現場に足を運び、お客さまと対話を重ねながら技術を使える形へと磨き上げていく―その姿勢の根底にあるのが、「試しながら考える」という考え方だ。技術の可能性と現場のリアル。その間を行き来しながら、一歩ずつ課題解決につなげていく高野にとっての「デジタル」について語ってもらった。
現場を知り、活用方法を検討する
私は現在、インフラ事業者に向けて、画像認識AIを活用したサービスを提案する活動に携わっています。具体的には、AIの精度や運用方法を確認しながら技術検証を重ね、それぞれの現場で真に役立つ提案を導き出す活動をしています。技術検証は、東芝の研究所で開発された先進技術を現場の課題解決に生かせるよう、お客さまや研究所と連携しながら進めています。いま重点的に取り組んでいるのは、高速道路の日常点検業務の高度化です。現在は人が目視で行っている道路の点検作業をAI技術で支援し、負荷軽減や省力化につなげることを目指しています。実際の画像データをもとにAIモデルの学習や検証を行い、現場で活用できる精度や運用方法をお客さまの声を聞きながら検討しています。
AI技術の活用に明確な答えはありません。だからこそ、AIモデルによって得られた結果をどう生かすか、現場で役立つ精度をどう実現するかを考え続けています。最適な答えを見つける過程においては、チーム内で知恵を出し合い、試行錯誤を重ねながら進めることが重要です。
仕事を進めるうえでは、現場を知ることが大切だと考えています。この考えから、これまでも路面の異常に関するデータを収集したり、実際に点検されている方のお話を伺ったりしてきました。こうした経験をすることで、私たちの技術が現場で使われるイメージがより明瞭になり、お客さまの業務に適した提案を検討する際にも役立っていると感じています。
また、そうして得た感覚は、新しい技術を導入することや、それに伴う現場の負担や効果などに不安を持たれるお客さまに向き合う際にも役立ちます。現場を知ることで、お客さまの不安や悩みに対する解像度を高め、そのうえでご意見を丁寧に聞いて対話を重ねています。お客さまの不安が解消され、「こういうこともできるのですね」「こういう形なら私たちでも使えそうですね」とポジティブな反応があった際は、やりがいを感じます。私たちが考えていた技術の可能性が、お客さまの中で具体的な利用シーンとして見えてくることがあります。技術の提案にとどまらず、「使える形」にして届けるための検討にも携われることは、この仕事の中で手応えを感じる場面の一つです。
人に寄り添うデジタルへ
デジタルは、私たちの「あたりまえ」を変える存在だと感じています。ただ、そのスピードはさまざまです。少しずつ変化が積み重なるものもあれば、ある時点で一気に形になるものもあります。
例えば、コロナ禍をきっかけにオンライン配信でライブに参加する仕組みが一気に広がり、いまやライブの参加方法のひとつにもなりました。リアルのライブでは臨場感や一体感をより強く感じることができ、オンラインでは場所にとらわれずに多くの人が同じ体験を共有できるという、それぞれの良さがあります。アーカイブ配信も加えると、鑑賞する時間までもが参加する側の自由です。こうした変化を通じて、デジタルが人々の選択肢や可能性を広げていることを実感しました。誰もが参加しやすい形を提供するという点では、仕事でも技術を使いやすい形にすることの大切さを感じています。
このように、デジタルによる変化は、これからもさまざまな場面で進んでいくでしょう。その中で大切なのは、技術そのものだけではなく、実際に利用する人や現場に合った活用方法を考えることだと思います。検証と改善を積み重ねながら、実際の現場に合った活用方法を見つけていくことが必要だと感じています。
ただその実現には、現場の声を知ることが重要です。高速道路の保全事業においては、その変革に向けてオープンイノベーションの取り組みが進められ、交流会も開催されています。こうした取り組みを通じて、現場が抱える表面的な課題だけでなく、その背景にある考え方や価値観に触れる機会を得ています。また、他社の先進技術や取り組みを知ったり、異なる立場の人々と対話したりすることで、自分にはなかった新しい知識や視点、考え方に気づかされることも少なくありません。私にとって、視野が広がり新たな気づきや発想を得られる貴重な機会となっています。そうした学びも、お客さまの課題を考える際のヒントになっています。
私が携わる社会インフラのメンテナンスのような分野は、普段は一般の人々にあまり意識されることがないかもしれません。それは裏を返せば、多くの人が安心・安全な暮らしや社会活動を営めているということだと思います。一方、技術は着実に進化し、現場の課題は時代とともに変化します。深刻化する人材不足もそのひとつです。こうした技術の進化や課題の変化に向き合い、お客さまがより効率的に業務を行えるように、広い視野を持ち、今できることを一歩ずつ進めています。技術と現場の間に立ち、対話を重ねながら社会インフラを支えるデジタルの形をつくっていく。そうした取り組みにこれからも携わっていきたいと思います。
大切にしていること
「試しながら考える」
実際に手を動かしてみて初めて見えることはたくさんあります。まず試してみる。その結果を見て、再度考え、理解を深める。そのうえで、次の選択肢を持つ。そうした進め方を常に意識しています。また、仕事に限らず、一人で完結できることは、それほど多くありません。ものごとは周囲とのやり取りの中で前に進んでいきます。だからこそ、周りの方々と連携しながら取り組むことも重要だと思っています。
高野 歩芳(TAKANO Honoka)
株式会社 東芝
ICTソリューション事業部
社会インフラソリューション技術部
AI画像認識技術を活用しながら、高速道路の日常点検業務の高度化に取り組む。営業技術としてお客さまや研究所と連携しながら、東芝の総合技術研究所で開発された技術の提案や検証に携わっている。
- この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2026年9月現在のものです。
- この記事に記載されている社名および商品名は、それぞれ各社が商標または登録商標として使用している場合があります。
関連情報
・DiGiTAL T-SOUL では東芝のデジタル事業領域における最新のデジタル技術とソリューションをご紹介しています

