儀メレオン★座談会

衣斐:千頭さんの所属する部門と、普段のお仕事を教えてください。

千頭:僕はCPSxデザイン部(以降、CPxD)に所属してます。CPxDはサイバーフィジカルシステム x デザインの略称です。東芝はCPSカンパニーを標榜しているので、その浸透と推進をミッションとしている部門です。自分は工業製品の外観意匠を中心に担当しています。

衣斐:今回、工業製品の外観意匠をデザインする

 

―――デザイナーとして参加していただくにあたって、どのようなことを心がけていましたか?

 

千頭:「エンジニアをヒーローにする」という番組の趣旨を伺っていたので、主役はエンジニアの方。でも東芝の技術を発信する機会になると良いな。また、あわよくば東芝って技術だけじゃなくて、かっこいいものも作るんだなと思ってもらえたらいいなと思って前半は活動していました。

後半になるとそんなことも言っていられないスケジュールで進行していたので、僕の仕事としては、ちゃんと納期に間に合わせる、搬出までに外装を完成させる、というところで頑張りました。

でも、今回はすごく難しいお題だったんですよね。自分たちで掲げている目標も高くて、最初から満点ねらっていましたよね。その後は難しいお題と高い目標ということもあって、なかなかアイデアが収束しない、それを達成できる開発の方向が見えてこない状況だったと思うんですけど、そんな中、頑張って皆さんがいろいろなアイデアを開発している姿をみてプロフェッショナルだなって感じていて。自分もプロのデザイナーとして外装がそれを吸収して締め切りに間に合うように、最後の1週間頑張りました。

衣斐:これで行こうかなって、だんだんデザイン決めて来ても、次の日になったらまた大きくなってたってことありましたよね。

千頭:プロトタイプの時からヤバいんですよね(笑)。イケニエ発表の時、手のひらサイズカメレオンちゃんだったのに、プロトタイプの時点で1m超の構造体を作っているわけですよ。さらにこれを3m伸ばすんでと。最終的に小さくする気があるのかな?と思っていたら、その後さらに大きい5mのパンタグラフを作り始めていて、最終的にこれが本命になっていくので田中翔子さんと一緒に頭を抱えていました。

田中翔子:これはどうやったらカメレオンに見えるんだろうか。アルミフレームが。

吉水:すごいですよね。途中まで本当にあれはカメレオンに見えるようになるのか心配でしょうがなかったですよ。

千頭:最初の1週間はまだ皆さんの人となりが分かってなかったので、やべぇ奴らだなと。ちゃんとみんなレギュレーションを読んでるのかな?って。

カメレオンちゃんの改造をしてるのにゼロスクラッチし始めてるんです。でも、話を聞くとすごくわかるんですよね。0m地点から飛ばすと少しのズレが結果に影響するので、少しでも近づいて精度を高めたいと。そのためにも大きいパンタグラフが必要であったわけです。また、筐体の高さも大きかったため、1mの高さじゃなくて半分の高さにできないのか?という相談もしたんですけど、やっぱり1mの高さが無いと安定しないんです。っていう話でした。

吉水:まあ、理屈をつなげただけなんですけど。

千頭:そう若干それも感じたんですけど。(会場、笑い)

田中翔子:色は効きましたよね。

千頭:そうなんですよ。カッティングシートを翔子さんが買ってくれてたんですよね。赤と緑の。ファインプレーですね。最初は何か「ねぶた」みたいなロマンも語ってたんですけど、すでに後半戦に突入していて「ねぶた」案はもう間に合うはずがない。絶対無理じゃんってなって。

でも、そのカッティングシートが活きて、アルミフレームに赤と緑のカッティングシートを貼っただけでカメレオンらしく見えて、口の位置も示すことが出来ました。レギュレーションをクリアするために口のサイズや位置を視覚的に示す必要がありましたが、赤と緑の対比が効いたなっていう感じです。結果的には見た人を驚かす最高のカメレオンをデザイン出来ました。(会場、拍手)

吉水:「僕は何というモノを作ってしまったんだ」って言ってましたよね。(会場、笑い)

千頭:いやほんとそうなんですよ(会場、笑い)デザイナーの示すビジョンに向かっていく家電チームの進め方を見ていて、「あれが真のデザイナーか。俺はエンジニアの設計に引きずられまくっているみたいな感じで。これ放送されてしまうのか、嫌だな~」と思ったんですけど、本番の会場でたたずむ姿を見たら、これは最高の答えを出すことが出来た。と感じました。

衣斐:今回、家電チーム、玩具チームそれぞれにデザイナーがいて、いろいろな東芝のデザイナーの活躍の仕方も見せることができたので、すごく良かったなって思います。ありがとうございました。

安達:どっちも正解ですよ。だってあれがカメレオンに見えたってのがやっぱり、千頭さんの起こした奇跡だと思うんで。

千頭:最後の一週間、まじ地獄でした。でも後半の方は手の空いた方に手伝ってもらったり。

吉水:上田さん、手伝ってましたよ。

千頭:上田さんのもったいない使い方をしたっていう。(会場、笑い)

吉水:楽しいっすって言ってましたよ。

千頭:我がチームの頭脳に、半紙貼るって言う単純作業をさせるという。

田中翔子:藤戸さんとかも、昨日あれ、組み立ててめっちゃ楽しかったんだよね。今日は無いの?って。(会場、笑い)"

千頭:一人じゃ終わらないカッティング地獄をやっていただいて。

田中翔子:吉水さんと、息合わせてましたよね。

衣斐:試射もしないといけないけど、舌を赤くもしないといけないっていうので、

吉水:最初いきなりモクモクと貼り始めたから何してんだろうと。(会場、笑い)

千頭さん

儀メレオン★

衣斐:さて、そんな大変な一週間でしたが、そのころ同時にリモコンも頑張っていただいたかと思うのですが、

 

―――ダーツを発射するためのリモコンについて教えてください。

 

千頭:夜、藤牧さんからチャットが来たんですね「ちょっと今あるリモコンをブラッシュアップしようと思います」と。

山橋:バスタブ。

千頭:そう、バスタブ。最初めちゃめちゃ高さ方向が高いスイッチボックスを作ったんですよ。それがバスタブって呼ばれてたんですけど。それをせっかくなんで、リモコンって手元も映るので、かっこよくしたいねって。それと、東芝エレベータのボタンを佐々木さんが持ってきてくださったんで、作ろうと。

結構ギリギリのタイミングだったんですけど、藤牧さんと電話で相談しつつ。藤牧さんがその場で構想設計もしてくれたので、すぐ外装のCADデータ作って、翌朝出力しました。

衣斐:3Dプリンタで作ったの?

千頭:はい、作りました。表面はレーザーカッターで黒のアクリル板を切って、リモコンがエレベータの操作パネルに見えるように作りました。

大木:見た目だけじゃなくて、押し心地も本物そっくりなんですよ。

千頭:そうなんですよね。クリック感がすごいんですよ。

衣斐:クリック感はどうやって再現したの?

千頭:そこもスポンジなんですよ。

衣斐:あ、ソフトロボット共通のスポンジなの?

野沢:そうなんですよ。ソフトロボットの作製で余ったスポンジを持っていって、切って取り付けて。スポンジの厚さを変えると押し心地が変わるじゃないですか。それで藤牧さんがソフト、ノーマル、ハードの3パターンの硬さのボタンを作っていて、「朝にエレベータ乗ってきたときどれだった?」って聞かれて。

衣斐:このスポンジのメーカー名言ったら、売れまくるんじゃないでしょうか。

野沢:Dイソーです。

本番用リモコン

衣斐:あ。イニシャルにしておきます(笑)。さて、ここまでいろいろなエピソードが出てきました。最後に菅沼さんから、何か言い残していることがあれば、お話をお願いします。

菅沼:とにかく皆さんいろいろなプロトタイプを作って遊び心を試しているんですけれども、やっぱり実はやってる人たちがエンジニアであって、設計とか解析とか評価のやり方はすごくエンジニアリングしていたなって。

例えば初日、2日目にまず弾道計算をしたんです。それで水平で当てるのが一番良いって言って、その後どういう速度で飛ばして刺さればよいのかっていうのを数値化する為にボードを下に置いて、重力を使ってどういう角度や速度であれば刺さるかっていう目標値を定量化したんですね。そういうのを皆さんがちゃんとメンバーに伝えて情報を共有する前提があった上で、いろいろな手法を試していた。

あとは、速度計や高速度カメラを使った評価手法を早期に確立していたことです。最初の2週間くらいでもう計測方法や目標値が確立していたので、それでかなり評価しやすくなったっていう。

衣斐:なるほど。じゃあ、バラバラに動いていたわけではなくて、実はロジカルに動いてたんですね。

菅沼:末松さんが、ゴムを評価し始めたり。皆さんかなりそのエンジニアリングスキルを使って裏でいろいろやってました。パンタグラフの強度設計とか寸法もちゃんと計算していたんです。ソフトのところもいろいろエラー処理とか入れてて。エンジニアリングって観点ではコンティンジェンシープランとかエラーが起きた時のリカバリー案とか。メンバーがいろいろ仕込んでおりました。それがあって、儀メレオン★のシステムができている。

田中一光:本番に入れる用のソフトと、ハード周りのエラー処理は石井さんがやってくれたんです。

菅沼:西川さんは不具合が発生した時に、すぐにどこがおかしいか分かるようにテスターのようなツールも作っていましたね。システム大きくなってくる場合、断線箇所の特定が難しくなってくるんですが、それが分かりやすくするように、配線の途中でもチェックができるツールを実は自作していて。

衣斐:そんなチェックツール自作してたんですか!?

菅沼: 話すときりがないのですが、皆さん、遊び心があるプロトタイピングをたくさんやっていたんですけど、実はしっかりプロとしての仕事をしているんだなと思いました。

衣斐:プロジェクトに掛けた想いや姿勢に加えて、いろいろなエンジニアや、デザイナーの、プロたちの試行錯誤が聞けて、T芝の魅力が伝わるお話がたくさん聞けたと思います。長時間ありがとうございました!

西川さんが自作したテスター

参加メンバー

衣斐 秀聽
東芝 CPSxデザイン部 デザイン開発部 共創推進担当

安達 浩祐
東芝 CPSxデザイン部 デザイン開発部 共創推進担当

菅沼 直孝
東芝エネルギーシステムズ エネルギーシステム技術開発センター 機械技術開発部 機構技術グループ

田中 翔子
東芝 CPSxデザイン部 戦略デザイン部 エネルギーシステム担当

吉水 謙司
東芝エネルギーシステムズ エネルギーシステム技術開発センター 機械技術開発部 振動技術グループ

野沢 亨介
東芝エネルギーシステムズ 府中工場 発電システム制御部 発電システム電機制御設計グループ

田中 一光
東芝エネルギーシステムズ 府中工場 電力プラットフォーム開発部 電力プラットフォームハードウェア開発グループ

山橋 悠希
東芝インフラシステムズ株式会社 府中事業所 交通システム部 交通システム設計担当

網引 寿大
東芝インフラシステムズ株式会社 鉄道システム事業部 鉄道システム技術部 第三担当

武山 文信
東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター 先端ソフトウェア技術室 サービス開発技術部

末松 妃菜子
東芝エネルギーシステムズ エネルギーシステム技術開発センター 材料技術開発部 機能性材料・分析評価技術グループ

前田 浩
東芝エネルギーシステムズ エネルギーシステム技術開発センター 機械技術開発部 水車技術グループ

大木 健司
東芝エネルギーシステムズ グリッド・ソリューション事業部 浜川崎工場 水素エネルギーシステム部 水素エネルギーシステム設計・製造技術グループ

千頭 龍馬
東芝 CPSxデザイン部 デザイン開発部 プロダクト・ブランドインタラクション担当