儀メレオン★座談会

衣斐:田中翔子さんも田中一光さんや、山橋さん、網引さん同様、若手なのですが、入社してから、たくさんメイカースペースKM1を利用されていました。それもあり、田中翔子さんには、最初の1週間で行ったプロトタイプ発表会まで、スイスイ会の人たちを率いるリーダーとして参加いただきました。まずは、

 

―――スイスイ会について教えてください。

 

田中翔子:スイスイ会はさっきもお話にあった、KM1っていう工作機械がいっぱいあるスペースを水曜日の5時半から、アフターファイブの時間で誰でも自由に使えるっていう時間になっていて。その自由に使える時間を活かして、いろいろな部署から気ままに来た人たちがそれぞれの活動をやっているっていうような場になっています。なので分からないところがあったら聞けますし、何作ってるの?みたいに興味があることがあれば、ちょっとチームみたいになって制作してみたいなことも起きるような流動的な場です。

昨年の6月くらいから結構毎週のように通うようになったんですけど、毎年秋にMaker Faire Tokyo というメイカー達の祭典があるんですけど、そこに出展するべく作ったのが結構KM1を活用した最初の機会かなと思ってます。私もその時にプログラミングとかやったことなかったので、スイスイ会に来ていた研究開発センターの方にかなり聞いて、その人がプログラム書いたといっても過言じゃないんですけど、その人に手伝ってもらいながら、実際に実現するっていうところまでできたというのがすごく良い体験で。それが今の魔改造の夜への参加に繋がるところかなと思っています。

衣斐:ありがとうございます。そういった、スイスイ会の、かなり個性が強い、個性豊かな人たちを率いて、プロトタイプ発表会までの最初の1週間でいろいろなプロトタイプを作ってくれたかと思います。

 

―――プロトタイプ発表会までのアイデアで、印象の深いアイデアを教えてください。

 

田中翔子:最初の1週間、チームは結構アフターファイブで活動するメンバーが多かったので、やっぱり自分が持っているアイデアをどうにかして1週間後に実現してやろうみたいな心意気をみんな持ってたんです。そんな中で印象に残っているのは2枚のローラーが超高速で回転して、その中にダーツの矢を入れると射出される装置があって、すごい凶器だな、マジ怖いなって思いました。即興で作ったものなので、若干軸がブレてるんですよ。ものすごい音がして。

衣斐:怖かったねぇ

田中翔子:回転数が上がるとまた音が大きくなるので。あれを突き詰めていったら、それこそちょっと危ない魔改造されたカメレオンちゃんができちゃったかな。それも見てみたかったなと思います。

衣斐:確かに、見た目だけでなく音もやばいモンスターが生まれていたかもしれませんね。さて、田中翔子さんは今回、儀メレオン★のロゴも担当いただきましたが、

 

―――儀メレオン★のロゴについての想いを教えてください。

 

田中翔子:今回儀メレオンちゃんていう名前を衣斐さんが考えてくださったんですけど、それがからくり儀右衛門っていうものを由来としているので、やっぱり和の雰囲気を出したいなというふうに話していました。その中で和と言えば家紋をモチーフにしてみようっていうとこで。私、元々ちょっと紋に興味があって、本を3、4冊ぐらい持ってたんです。ただそれは宝の持ち腐れ的に家で眠ってたものだったんですけど、今回はこれはもう絶好のチャンスだと思って、ちょっと勉強して紋づくりをやりました。

一応紋にも、線と正円の組み合わせで曲線を描いていくというルールがあったので、今回の儀メレオン★ちゃんのロゴもルールに則るってことにこだわって作りました。

衣斐:ありがとうございます。あのロゴはすごくカッコよくて、ダーツの矢を装填するための道具にも、シール貼ったりしてましたよね。

田中翔子:そうですね。それが前日ぐらいですかね。矢を装填する時にホワイトボードマーカーを最初の週ぐらいからずっと使って、それが本番でも採用されたんですけど。

衣斐:途中で変わるかなって思ってたんだけど(笑)。最初、吉水さんが一生懸命親指で装填してて、爪が痛いんですって言ってて。手ごろなホワイトボードマーカー渡したら丁度良かったんだよね。

吉水:ベストフィットでした。あれしかダメでしたね。

田中翔子:アップでカメラで映った時にどうしてもこれがマーカーだということが分かると、それはどうなんだろうという話になって(会場、笑い)。儀メレオン★のロゴが完成したタイミングで、千頭さんがシールを作ってくれたので、それを貼ったら結構格好良くなりましたよね。

千頭:ロゴがカッコよかったからです。

吉水:SDカードのケースにもシール貼ってましたよね?

千頭:あれもこっそり作って。一光さんが帰った後とかに。

田中翔子:前日の夜の一光さんや皆さんお帰りになられた時間に、それに時間をかけていいのかっていうタイミングで作りました。一光さん達には特に何も言わずにシールを貼って、梱包しておきました。本番、現地に着いてSDカードホルダーどこだみたいな話になったときに、「ここにあるよ」とサプライズで渡しました。

衣斐:そんなのやってたんだ?

千頭:やってましたね。外装、そういう場合じゃないだろと思いながら。(会場、笑い)

田中翔子:ちょっと気分が上がるのをやるのは楽しいですね。

田中翔子さん

ローラー

ダーツ装填治具ホワイトボードマーカー

衣斐:確かに(笑)。ありがとうございます。他に何か印象に残ったエピソードがあれば教えてください。

大木:ねぷたの話とかどうですか?

田中翔子:あ、そうなんですよ。最初は外装班として千頭さんと一緒に動いていた時に、カメレオンちゃんが超巨大なので、どうやって外装をつけるかっていうのが課題でした。時間もないお金もないっていう中でどうやるかというところで、アイデアとしてねぶたみたいに和紙とワイヤーを使って、ちょっと立体的に表面を作ろうかという話になったんですけど、やっぱりねぶたは技術がかなり難しくて私が作ったら結局手のひらに乗るくらいのボールでした。

衣斐:でも、すごくカッコよくできてましたよね?

田中翔子:あれも元々安達さんが青森の出身で、高校の時にねぶたを作ったんですよね?

安達:高校の学祭で、クラスで1台ねぷたを作るんですよ。ねぷたって針金で作ったフレームに和紙を貼るっていう作業があるんですが、人手がいる作業だから、大体みんな経験するんですね。多分おんなじ感じでやることになるのかなぁって思ってたら、ある日半分紙が貼られた球体があって、「え、下手じゃん!」って思って。(会場、笑い)

衣斐:翔子ちゃんが作ったやつが?

田中翔子:全然できなくて。

安達:「ええ!?」って思って、血が騒いで勝手に半分貼って、きれいにできたなって満足したってことがありましたね。

衣斐:こんな所でも多様性が活かされているわけですね。

安達:あの経験が会社人生で役に立つとは思ってなかったですけど。

ねぷたの試作

衣斐:出身地が違うからこそですね。みんなの出身地が知りたくなってきました。ありがとうございました。次は、スイスイ会チームで入っていただいていた、武山さんからお話を聞いていきたいと思います。まずは、所属する部門について教えてください。

武山:デジタルイノベーションテクノロジーセンターというところです。実は今年の4月に大きくなって、もともと所属していた部署が併合されました。東芝グループ内で扱っている製品やサービスのデジタル化と、デジタルを活用して、いわゆるDXで、新たな価値を生み出すのを支援していくことが大きなミッションになっています。私はその中でも研究開発部門におり、今はソフトウェアサービスのプロトタイプを開発するための技術開発という研究のテーマを持っていたりします。ちょっと魔改造とはプロトタイピングというところで近いかなと思うところはありますね。

衣斐:では、魔改造の夜での経験が、本業でも活かせるところがあるかもしれないですね。今回、武山さんは、プロペラ式ジップラインに挑戦していたと思うのですが、

 

―――なぜ、プロペラ式ジップラインやろうと思ったんですか?

 

武山:最初の1匹目の舌を使って2匹目3匹目のダーツを動かすというアイデアなんですけど、アイデア自体はイケニエ発表された日にホワイトボードに皆さんが書いた中に既にあったんですよ。でも結局誰も使わなくて。

衣斐:誰も触っていないアイデアでした。

武山:衣斐さんによる(1匹目のダーツから射出位置まで糸を張り、そこに2、3投目のダーツをひっかけて、糸をロープウェイの様に)手で 回して動かすデモを見て考えました。やっぱり3発、直接飛ばして当てるのは、他の2チームの頭の中にはあると思ったし、2チームのどちらかが絶対やってくる。そればっかりだったら絶対面白くない。じゃあ、それ以外の手段何かいるよねって思いました。あと、すごく試技の条件が悪かったです。現場の状況が分からないし、当日のテストもできないし、調整もできません。その条件で3発、飛ばして正確に当てるのは難しいだろうなって。なので、何かを伸ばしてから当てるという方法はちゃんと確保しとかなきゃいけないと思いました。衣斐さんと安達さんのデモを見て、いや、これを作ってきたのかとすごく感動しました。

衣斐:ありがとうございます!アイデアはあったら何でも試してみようよっていう姿勢を見せたくて安達さんと作ったんですけど、ちゃんと届いてて良かったです。

武山:これを形にしなければ伸ばして当てるのが達成できなくなってしまうので、これはできるところまで持って行かなきゃいけないなと思いました。まず、プロペラ式になりました。プロトタイプ発表会の時に見事なデモを見せていただいたんですけど、終わった後にダーツボードのところに行って見てみると後から送ったダーツが、ちゃんと刺さってないなと(笑)。

衣斐:刺さってたよ。いや、当たってはいたんです!(笑)

武山:そこそこスピードが出て当たれば、結構簡単に刺さるんですけど、ロープを手繰り寄せてグッと刺すのは結構大変だろうなと思ったんですよね。

衣斐:確かにロープウェイ方式でやると、2投目と3投目を刺すときに、1投目を引っ張ってしまうから、1投目が抜けちゃうんですよね。だから、当てるだけで実は止めていたんですけど、それを解決したのがプロペラだったんですね。

武山:解決するには速く当てなければならないということで、ロープの上をダーツが自走して刺されば、ちょっとゆっくりでも、できるんじゃないかってことで自走式を考えました。じゃあ動力をどうしていこうかと、ひとりでブレストしてホワイトボードにモーターとか、ネタで風力とか書いていたんですね。そこに、たまたま石井さんがふらふらって入ってきて、これは何かと聞かれたので、「風力とか面白いですよね」と答えたら「ドローンのプロペラならあるよ」と返ってきました。4次元ポケット的な(笑)。それがきっかけですね。

衣斐:その後、本番機はジップラインの動力としてカタパルトを使うことになりましたが、その際に必要だった

 

―――1匹目の儀メレオン★の舌を、2匹目と3匹目の横に伸ばす機構について教えてください。

 

武山: 1匹目の口の中から、横方向に別の舌を動かして2匹目3匹目の前に持ってくるという機構になっています。動かす仕組みは本当に単純で、アクリル板を3枚重ねて作ったレールを使って、紐を引っ張るとスライダーが横に伸びるみたいな感じです。

衣斐:ちょっとしたカラクリみたいな感じなんですね。

武山:そうですね。スライダーは、飛ばす機構の残骸と、プロペラ式ジップラインのプロトタイプで使っていたものをばらして作りました。

武山さん

プロペラ式ジップライン

衣斐:あそこは、プロトタイプの残骸を再利用したりしてたんですね。2匹目、3匹目のカメレオンちゃんの背中が光ってた部分も、スイスイ会メンバーが頑張ってくれてたと思うのですが、

 

―――カメレオンちゃんの背中の光について教えてください。

 

田中翔子:週末、山下さんが来てくれるんですね。で、子カメレオンはそのままでいいの?って。1匹目は大胆に変えているのに、2匹目3匹目は殻割りしただけで。やっぱりちょっと光ったらいいよねっていう話になったんですが、光るっていう機構はアディショナルなので、一光さんが大変だということで、秘密裏に動いてたりして。電源だけ頂いて、後は違うプログラムが動いている感じになってます。

虹色に光るプログラムを山下さんがサッと30分ぐらいで書いてくれたのを、裏で仕込んで、フレームに線が一本増えたねくらいで、誰にもわからないように(笑)

衣斐:あれで2匹目と3匹目も、はらわたが抜かれただけじゃなくなったわけですね。

武山:発射ボタンを押すと光るようになってたんですよね。

田中翔子:そのあたり、藤牧さんがボタンとの連携はやってくださってたので、マイコンが信号をちょっともらうみたいなシステムにしてもらいました。

衣斐:夜会の時、武山さんと藤牧さんが、本番の1分前に、カメレオンちゃんの光を見て、慌てて何かやっていたかと思うのですが、その時の

 

―――本番1分前に起こったピット作業での裏話を教えてください。

 

武山:あれはその仕組みのファインプレーで。発射ボタンを押したら光るはずなのですが、本番、ボタンを押す前、セットアップしている状態で既に光ってたらしく、それを藤牧さんが見つけました。「誰かボタン押したぞ」って。

衣斐:誰だボタンを押したのは(笑)

武山:一旦セットアップは完了していたんですけど、光っていることに気づいて、やっぱりリセットしないといけない。あと何分ある?ってやりとりがありました。

田中翔子:残り1分20秒くらいでしたね。

武山:そこで、急いで儀メレオン★のところに戻って、システムを再起動したのでした。

衣斐:山下さんの作っていた、カメレオンちゃんをカラフルにするためだけに作ったこのLEDが無ければ、気づかなかったトラブルだったんですね。すごい所で、活きてきましたね。

安達:これが無かったら何も動かないまま終わってた可能性がありますね。

背中が光る子カメレオン

衣斐:なるほど。機能的には無駄とも言える、光る装飾ですが、その無駄も追及したことが、まさかのエラー回避につながるという奇跡もあったんですね。ありがとうございました。では、安達さんに話を振っていきたいと思います。今回、統括サブリーダーという事で参加いただきました。

 

―――統括サブリーダーとして、どういう想いで参加されたのか教えてください。

 

安達:多分私は今回の魔改造の夜に参加したメンバーの中で衣斐さんとの付き合いが一番長いのかなと思います。前々から出たいって話は聞いていました。今回本格的に巻き込まれたのは3月だったと思います。私は今同じ部署にいるので、正直なところ「出ないって選択肢はないな」って言うのが最初の感情でした。そのうえで、じゃあ開発メンバーとして出るか、衣斐さんのサポートとして出るかというのは結構迷いました。

衣斐:悩みましたね。

安達:でも決め手は、衣斐さんといろいろな打ち合わせに出るにつけ、これ衣斐さん一人では捌けないって思ったんですね。衣斐さんはチーム全体を盛り上げたり、「あっちいこうぜ」っていう役割をするべきだし、それがたけていると思ってたんですね。だからそれ以外は衣斐さんにしたら余計な仕事だと思うので、それをやれる分やろうって思ったというのがあります。結果として蓋を開けてみたら、木村さんとか五十嵐さんとかそういうスーパーサポーターたちが現れたので、私が担当しようと思っていたテリトリーも結構彼らがやってくれたという所があったので、やっぱり私一人ではできませんでしたね。

衣斐:よく安達さんは「衣斐さんは前だけ見て走ってください。こぼしたものは私が全部拾っていきますから」みたいなかっこいいことを言ってくれてて。で、今回も、安達さんにサポートに回ってもらえるなら安心だ!と思ってありがたかったです。でも、サポートメンバーとして、いろいろな方が協力してくれたお陰で、サポートという意味では後半、安達さんの手が空けられるようになってきたかと思います。実際に手を動かすということをしてもらえるようになり、後半は、玩具チームメンバーになってましたよね。その時、開発に関わった

 

―――ダーツの矢を接続する「チクワ」と呼んでいたパーツについて教えてください。

 

安達:あのチクワの部分ってのは、1匹目と2、3匹目の舌が最初からつながっててはいけないというレギュレーションがあって。なので、1匹目の舌が横に出てきたところに、2、3匹目のダーツを何らかの方法で1匹目の舌と合体させる必要がありました。そこのつなぎとなるパーツを作る人がいなかったので、じゃあやりますという話になりました。

この期間で私の中ですごく印象に残っているのは、開発期間終了数日前の、終バスの後ろの方にみんなで座っているシーンで、すごくフラッシュバックするんですけど。あの時何をやっていたかというと、今日何やろうと決めて、朝モノを作って、検証して、夕方修正して、夜3Dプリンタ流して、翌朝来てそれを取り出して検証してを繰り返しているときだったので、いっぱいいっぱいではあったんです。で、それとは別に、私は最初サポートという立場だったので、この開発メンバーに入れてもらえるのかな、みたいな気持ちがちょっとありました。なんだけど、そのバスの中で、みんなと話をしている感じ、自分のつくっているものが搭載されそうだなっていう感じから、何か良かったなって思ったし、大げさじゃなく生きてるって感じがしたんですよね。だからそのバスが印象的なんです。そのバスで傘忘れたんですけどね。

衣斐:傘忘れてた日のことですか。覚えてます(笑)。実は、そんな心境だったんですね。ありがとうございました。あと、安達さんと私のエピソードになるのですが、

 

―――プロトタイプ発表会で発表したロープウェイプロトについて教えてください

 

安達:月曜日がプロトタイプ発表会でしたっけ。

衣斐:そうそう。月曜日だった。平日は、全然時間が取れなかったから、土日に作ったの覚えてる。

安達:木曜の夜に衣斐さんから「良い案が思いついたから一緒にやらない?」ってポンチ絵(構想図)が4枚送られてきたんですよ。付き合いが長いので、それを見れば大体何やりたいのかなってのはわかったし、その案は他の案とメリットが違ったんですね。競争するところが違ったというか。いかに正確に飛ばすかでもないし、いかに伸ばすかでもない案だったので、これはやっておくべきだなって直観的に思って、金曜中に全部やろうって心に決めました。その日はもう帰る時間だったので、帰りの電車の中とかで頭の中でどうやって作ろうかなって考えてました。

翌朝、出社と同時にモデリングを始めて、その日のうちにいろいろ試した覚えがあります。やっぱりそれくらいのスピードで作って試すってなんかワクワクするし、実際のところ刺さってなかったのではという話もありましたが(笑)、あそこで試せて、うまくいって、結果としてみんなが集まってディスカッションが始まったので、やってよかったなって思いました。それに衣斐さんのほわっとした考えを形に出来たってのも、自分のスキルを再確認したというか、鈍ってないなって確認できたので、その後チームに入るってなった時も、その点での心配はなくなったなって思います。

衣斐:いや、本当にお世話になりました。今後ともよろしくお願いします。

安達:よろしくお願いします。

安達さん

チクワ

ロープウェイ方式のプロトタイプ