儀メレオン★座談会

衣斐:今回、若手としてソフトウェアを担当いただきましたが、田中一光さんは、普段はどのようなお仕事をされているのでしょうか?

田中一光:普段は発電所で利用するコントローラーのソフトウェア開発チームで、IoTデバイス的なものを作っていて、会社で作っているクラウドサービスにセンサーのデータを送るデバイスのソフトウェアを開発しています。

衣斐:なるほど。では今回は本業でも担当されているソフトウェアで力を発揮してくれたわけですね。

 

―――ソフトウェア開発でこだわったことを教えてください。

 

田中一光:制御の難しい部分は担当していないんですけど、全体の大まかな部分を担当させてもらってて、今回のソフトウェアの特徴的な部分としては、制御を統合するために上田さんから提案されたROS(Robot Operating System)を利用しました。私は使うのが初めてだったんですけど、今回使ってみました。そのROSというのは、ノードと言われる単位で、制御毎にプログラムをくくって、分散して作ることができるのが便利なところです。例えばある機能を新しく作り直そうと思ったら、他の機能を動かしっぱなしで作れるとかですね。そういった感じでフレキシブルに作ることができるので、今回かなりアジャイルじゃないですけど、ガンガン作っていろいろな所を後から追加するみたいなのが多かったので、そういった部分で活用して頑張ったなと思っています。

衣斐:それがあったから何か開発しながらも実験ができたみたいなことですか。

田中一光:そうですね。

衣斐:終盤は、ベテランの人たちとも一緒に開発をやる場面も出てきましたが、ベテランの人たちが、あ~だこ~だ言ってきたと思いますが、どうでしたか?(会場、笑い)

田中一光:私は入社してからの開発PJでは、所属部署が今まで利用したことのない技術を活用した開発が多くて、たまたま私より誰かがその技術を知っているという状況が少なかったです。でも今回、各々の組織で全然違うソフトウェアの技術をやってきた方々が集まってるので、一つの問題を解決しようと思った時に、いろいろなアプローチをバーっと沢山言われて、まあ全部聞ききれなかったんですけど、その技術の情報のシャワーを浴びれて幸せな時間だったなと。

衣斐:嘘だ(笑)、(会場笑い)

田中一光:幸せだったんですけど、どれを採用すればいいかわからないとか、選択がなかなかできなくて困ったことはありました。

安達:期限さえなければ楽しかったですか?

田中一光:ちょっともう良く覚えていないです(会場、爆笑)自分の能力がまだまだ未熟なので、頑張らなきゃっていう気持ちだったので。でも、自分の課に帰ってから、儀メレオン★の開発で教えてもらったことを生かす場面があったので、どっかで覚えていたみたいですね。良かったです。

 

衣斐

 

―――本業で活かせた部分について、具体的に教えてください。

 

田中一光:本業でもLinuxっていうOSを使っているんですけど、そのシステムをSDカードに書き込んで使ってたりするんですけども、SDカードにコピーするところって結構面倒くさいというか、いろいろと考えないといけないことが多くて。今回、SDカードコピーの部分で同じく課題にぶち当たったんですけど、それを課に帰ってからも同じ方法で解決できました。

衣斐:石井さんや、武山さんがサポートしてた部分ですね。他に何か印象に残ったエピソードなどあればお願いします。

田中一光:Dナミクセルという会社のモーターを使おうって話になって。秋葉原までいって、知らないおっちゃんと話したりして、必要な物を買って、何とか使えるようにしたんですね。

衣斐:Dナミクセルと言うと森屋さんですね。森屋さん、Dナミクセル使いたがりますよね。

田中一光:使えるよって話になったので頑張って使えるようにしたんですけど、そしたら(価格が)高くて使えないって話になって。値段は買う前から分かってんじゃん!って泣きそうになりました。

菅沼:裏で、いろいろな次の手を打っているのがたくさんあったからよかったと思います。採用されたのは結局安いモーターの粗い制御でしたけど、あれがもしうまくいかなかったときには、Dナミクセルという手段で高精度に制御できた。皆さんそこを狙ってたんですよね。

衣斐:森屋さんはそこまで考えてたんですね。

菅沼:他にも何人かで話していました。

田中一光:その話に僕はたぶん入ってなかったかもです。(会場、笑い)

菅沼:安いモーターの精度ではズレが大きすぎるってなって、それをもっと細かく制御するにはモーター変えないとねって。2軸使うにはお金が足りないから、1軸だけでもDナミクセルで行くかって言う案は、確かに進んでました。

田中一光さん

情報のシャワーを浴びている一光さん

衣斐:なるほど。これだけ人数が多いと、情報伝達が難しいと思うのですが、そんな中、菅沼さんは、かなり頻繁に定例会とかを行っていましたよね?Dナミクセルの件は、伝達しきれなかったところがあるかもしれませんが、重要なことは定例の情報共有会でしっかり共有できていたかと思います。そんな

 

―――毎日、行っていた情報共有会について教えてください。

 

菅沼:1日30分のやつですね。最初2回やっていたんですけど、山橋さんに言われて最も効率良く情報伝達できる、お昼前の30分でやっていました。

吉水:山橋さんは「(夕方の打ち合わせは)いらねー」って言ってましたけどね。

山橋:そんなそんな。

吉水:「無駄な時間だと思うんですよ」って言われて。「じゃあ菅沼さんとこいこっか」って二人で直訴しに行きました。良かったと思いますよ。

毎日行われた情報共有会

衣斐:ではそんな山橋さんにもお話をきいていきたいと思います。まずは、所属されている部門について教えてください。

山橋:私が所属する東芝インフラシステムズ株式会社は、人々の生活を支える製品やサービスを提供している会社です。具体的には、鉄道・水道・道路・航空・気象・防災・物流・通信・産業など多岐にわたるインフラ事業を展開しています。人々に寄り添い、生活をより良いものへと変えていくことを目標としている会社です。

衣斐:普段はどういったお仕事をされているのでしょうか?

山橋:今は鉄道の車両に搭載する装置の設計を行っています。インバーター、コンバータなどの車両を制御する装置をどうやって車両に設置するか、装置をどんな形状で作るか、どうやって部品や配線を配置するか、を考える構造設計をやっています。

衣斐:先ほどからも、山橋さんがすごかったと話題に上っておりましたが、実は、私が魔改造の夜に出場を決めて動いていたのとは、別ルートで、番組に応募しようとしていたと聞きました。それだけモチベーションが高かったということだと思いますが、

 

―――何故、魔改造の夜に出場しようと思ったのか教えてください。

 

山橋:当社に入社の希望を出す時、いろいろな会社の事業を見ました。その時に東芝グループは技術力がすごく高いという印象を受けました。

衣斐:学生の頃に?

山橋:はい。ただアピールが控えめというか、もったいないなっていうイメージを受けて。魔改造の夜はいろいろな部門から人が集まって、いろいろな技術力をあわせて、短期間で結果を出すので、そういうところが魅力的に感じています。魔改造の夜なら、東芝の技術力の良いところをアピールできるのかなと思ったのが一つです。もう一つは、ひとつの製品がどういう仕様で発注されてどのような過程で出ていくのか間近で見てみたいと思いました。今回で言ったらカメレオンちゃんを7.5m先のダーツボードに刺すというのを、まず構想して、設計して、作って、それがちゃんと当たるか検証していく。それを繰り返して、納期に間に合わせて出す、というその一連を体験してみたいなという思いから応募しました。

衣斐:入社2年目というかなり

 

―――若手として参加いただきましたが、参加してどうでしたか?

 

山橋:めちゃめちゃ楽しかったです。人見知りなのではじめは緊張していましたが、皆さん優しくて暖かい雰囲気だったので楽しく過ごせました。若手ベテラン関係なく意見を出し合える雰囲気も好きでした。

衣斐:山橋さんは、ピット作業(試技のスタンバイ)も頑張ってくれていたかと思います。

 

―――ダーツの装填などを行うピット作業についてのエピソードを教えてください。

 

山橋:ピット作業については、モノがどんどん出来上がっていく様を見ていて、これはセットするのがすごく大変そうだなと、ピット作業の末松さんと網引さんを見て思いました。どういう項目をどういうタイミングでチェックするかなどがまとまっていなかったのでまずそれを文字化しようとなりました。全体を統括していた吉水さんにお話を聞いて、どういう項目が必要かをまずざっと挙げました。ただ、それがすごい量だったんですよ。これは5分じゃ無理だと。これは要らないというのは省いて、最後は中富さんと話し合いながら、どういう文章で本人たちに伝えたら一番素早くこなせるかをブラッシュアップして。そして本番に臨んだって感じです。

私は、末松さんと一緒に本番に挑んで、網引さんのチェックは中富さんにお願いしました。やっていくうちに、それぞれやりやすい方法があるのでチェックシート内容を分けようとなりました。言い方とか項目の順番とかもそれぞれアレンジして、本番に備えました。

衣斐:あれ、右と左で指示内容違ったんですね。

吉水:山橋さんがいたから成立したっていうのはありますね。本当に真面目なので、何か全部きっちりやってくれて。我々はかなり適当なことしかやらないけど、それを全部形式知にしてくれるので、そのおかげで本番乗り切れたかな。

衣斐:山橋さんは、メイカースペースもすごく活用されていて、皆が注文する部品の出力とかをやってくれたんですけど、「すごいお金がかかってます」って言って、お金がかからないようにって気を使っていただいて、まだ若いのに、こんなところまで行き届いててすごいなって思いましたね。

菅沼:在庫管理もやってくれてたんです。試験でどんどん割れて消耗していくので、あとどんだけだから追加しなきゃねって、先に先に。

衣斐:2年目ですよ!在庫管理とかどこで勉強したの?

吉水:先を見越してやって、網引さんが下請けで(笑)

山橋:サポート材取ったりしてもらいました。

安達:メイカースペースKM1でよく一緒になってました。

山橋さん

ピット作業リハーサル

山橋さんの予備品ボックス

衣斐:じゃあ、そんな頑張っていただいた網引さんに話を聞いていきたいと思うんですけれども、山橋さんの下請けはどうでしたか?(会場、笑い)

網引:本当に的確な指示が飛んでくるので、やりやすい仕事でした。(会場、爆笑)

衣斐:その中で印象に残る指示は何だったのでしょうか?

網引:基本的に私自身、3D プリンタとか使ったことがなかったんですけど、今回の企画を通じて山橋さん、衣斐さんに3Dプリンタの使い方とかいろいろ教えてもらったことで、本当にすごく簡単に使えるんだなっていうことが分かりました。そういう中で、いろいろな人から来る作製依頼を一旦取りまとめていただいたおかげで、スムーズに作製をすすめられたことが印象的でした。今回は結構時間の制約がある企画でいろいろ忙しい時もあったんですけれど、前日の夜に作ってと言われたものを、次の日にはちゃんと用意できたのは良かったなと思っています。

衣斐:確かに、後半、会場がメイカースペースKM1から離れて、誰かが出力したり、取りに行ったりしないといけない時に、すごく網引さんや五十嵐さんが動いてくれているなと思っていて。今回、メイカースペースKM1をたくさん使っていただいたと思うんですけど、

 

―――メイカースペースKM1を今後も活用できそうでしょうか?

 

網引:個人的な趣味なんですけど、時々模型を作ったりするので、何か作りたいなって思った時に気軽に使いに行ける環境があるのは本当に助かるなと思います。メイカースペースは業務利用だけでなく、東芝グループ社員であれば、私的利用でも自由に使っていいというルールにしていただいていますので、何か思いついたらまた活用したいです。

衣斐:ぜひ、どんどん、活用してください。

 

―――若手として、参加いただきましたが、参加してどうでしたか?

 

網引:そうですね。今回通じて思ったこととしては、東芝には本当に様々な技術を持った技術者の方がたくさんいるというのを実感しました。特に今回、私達が作った儀メレオン★は、見るからに複雑な機械設計の部分もありますし、それを動かす電気とか、制御する技術とか。また、素材選びとか本当に様々な要素が組み合わさって、ようやくあの儀メレオン★はできていると思います。こうした複雑な儀メレオン★を形にしてしまう技術者の存在や、アイデアがいろいろなところから湧き出てきたのがすごく印象的でした。このように様々な技術を持っている東芝の姿を体感できたのが、今回の企画を通じて一番良かったかなと思っているところです。

衣斐:締めに持ってこれそうなお言葉ありがとうございます(会場、笑い)。まだ紙面に余裕がありますので、他に印象に残ったエピソードがあれば、教えてください。

網引:これも個人的なエピソードなんですけど、当日の10分間の調整タイムがすごく印象に残っています。というのも、当日私は3発目のダーツの装填や調整を担当していたのですが、1回目の試技で3発目のダーツがチクワ(ダーツが空中で刺さる部品)に刺さらないというトラブルが発生してしまいそれを修正する必要がありました。二試技目までに何とかしなければいけないというところで、本番の10分間の調整タイムは心を若干すり減らし、心配になりながら作業をしていたのがとても印象的でした。

衣斐:夜会当日の夜は”魔”がいましたからね。その経験は今後、仕事に活かせるのかな・・・あの緊張感は、中々仕事では味わえないかもしれませんね。

網引:そうですね。10分で何とかしろという仕事があるかは分からないですが。(会場、笑い)

衣斐:メイカースペースの話になりましたが、毎週水曜日のアフターファイブにメイカースペースを使いに来てくれている、「スイスイ会」というのがあります。普段から、いろいろな作品を作られていますが、今回も、たくさんのプロトタイプを作っていただきました。次は、そのメンバーにお話を伺っていきたいと思います。

網引さん