機械学習を活用した熱解析技術
機械学習を活用した熱解析技術

物理現象を
莫大なリソースを使わずに読み解く

機械・システム研究部門 上原 英晃
2019年度入社 物理学専攻

機械・システム研究部門 上原 英晃
2019年度入社 物理学専攻

機械学習を活用した熱解析技術
機械学習を活用した熱解析技術

物理現象を莫大なリソースを使わずに読み解く

製品の構造的な劣化を小規模な計算で解析する

私が取り組んでいる研究では、東芝が製造するさまざまな機器について、不具合の発生時期や保全が必要となるタイミングを予測する技術を開発しています。これができるようになると、部品交換のタイミングを最適化できるだけでなく、保守員の作業計画最適化にも役立ちます。機器は動いていると温度が上がり、それよって構造的な劣化が生じます。この劣化の様子を調べるために使うのが、熱解析や構造解析といったシミュレーション技術です。大規模コンピュータを使って長時間計算すれば精度の高い結果は得られますが、細かい解析をしようとすると、数週間もかかってしまうことがあります。これでは、実際の製品開発や保守の現場で使うには時間がかかりすぎてしまいます。そこで私たちは、機械学習などの新しい手法を使って計算コストを下げ、より短時間で、場合によってはリアルタイムで解析結果が得られる仕組みを開発しています。解析を高速化するために物理式を利用するのですが、物理現象を表すにはたくさんの理論式や経験式があり、今起きている現象にどの式を組み合わせるべきかは、これまでエンジニアの経験や勘に頼らざるを得ませんでした。この課題に対し、「どの式とどの式を組み合わせれば現象を説明できるか」を自動で提案できる仕組みの実現を目指しています。いわば、物理式をパズルのピースに見立てて、それらを最適に組み合わせる“自動パズル解き”のような技術です。

機器の異常検知・予防保全に応用できる技術

機械学習を使えば、任意の式を組み合わせることで、ある現象を表す式(モデル)を作ることはできます。しかし、その式は「なぜその形になるのか」「どんな物理的意味があるのか」といった解釈性(わかりやすさ)がありません。例えば、冷却のために当てる風の速度を変えたとき、その変化がどの部分にどれだけ影響するのか、といったことは任意式の組み合わせからは読み取れません。一方で、物理式をパズルのピースとして組み合わせるモデリング方法であれば、それぞれの式に物理的な意味があります。そのため、熱解析の技術者が見れば、「この式が入っているということは、こういう現象が起きているんだな」といった解釈ができ、さらに「この部分が劣化しているのでは?」といった異常検知にもつなげることができます。私たちは、東芝が納入している実際の機器に、この開発中のモデリング技術を適用することを目指し、事業部と共同でいくつかの案件を進めています。現場のデータを活用して解析結果と照らし合わせることは、デジタルツインの分野でとても重要です。実際の測定データから、解析で使うパラメータを推定し、解析の精度を高める技術についても研究を進めています。こうした取り組みにより、現象の理解、異常検知、予測精度の向上を一体的に実現しようとしています。


ある出勤日のスケジュール


08:45:出社

  • メールチェック
  • スケジュール確認

09:00 :技術開発業務

  • コーディング、解析など

12:00:昼食

13:00:部内定例

  • 社内情報共有
  • コミュニケーション活発化のための雑談会

14:00:研究メンバーとの会議

  • 進捗の確認
  • 先端技術の情報共有

15:00:実験、データ解析、資料作成など

18:00:退社


ある在宅勤務日のスケジュール


08:00:勤務開始

  • メールチェック
  • スケジュール確認

08:30:技術開発業務、事務作業

  • コーディング、解析など

12:00:仮眠、昼食

13:00:事業部との打合せ

15:00:研究、資料作成、論文・文献調査など

18:00:勤務終了

手がけていた解析や測定の能力が活かせる仕事

学生時代の研究テーマは現在の仕事とは離れていますが、私は素粒子の研究室に所属し、中性子の寿命測定を行っていました。修士課程を終えたら就職するつもりでしたが、大学で扱っていたテーマと同じことを仕事として続けられる企業は多くありません。そこで、「解析も測定も両方できる」という自分の強みが活かせる場所を探すようになりました。その中で東芝は、入社後に挑戦できる仕事の幅が広く、いろいろな分野に関わるチャンスがありそうだと感じたことが決め手でした。学生時代も複数の研究テーマを抱えていましたが、企業に入ってからはさらに多くの研究を同時に進めています。マルチタスクで研究を進められるようになったのは、自分の成長を実感する部分でもあります。チームのメンバーとは普段から相談したり、勉強会でアプローチ方法を聞いたりしながら、常に学び続けています。社内にはとても優秀な方が多く、追いつくのは簡単ではありませんが、まだまだ知識を深めていきたいと思っています。休日はウォーキングをすることが多いです。川崎から都内や横浜まで歩いたりすることもあります。コロナ禍で運動不足を感じたことがきっかけで始めましたが、千葉駅から東京駅までの約50kmを歩いたのが、これまでで最も長い距離です。


学生の皆さんに一言


『自分がどれだけ研究に夢中になったかをアピールしましょう!』

自分の研究がどれだけ面白いものかを、分野が違う人に話す機会は、実はあまり多くありません。就職活動でも、選考が進むにつれて、専門分野は違っても研究者として一流の方々にプレゼンする場が増えていきます。そんな中で、他分野の人に向けて「自分の研究のここが面白い!」と紹介し、それに興味を持ってもらえた瞬間が、私にとって就職活動で一番楽しい時間でした。面接は不安に感じることもあると思いますが、研究を伝える機会としてポジティブに捉え、「自分の研究の面白さを知ってもらう場」として楽しんでもらえたら良いと思います。