高耐圧パワーデバイス
高耐圧パワーデバイス

電力変換器の
キーコンポーネントを作る

電子デバイス研究部門 吉田 訓
2020年度入社 物理工学専攻

電子デバイス研究部門 吉田 訓
2020年度入社 物理工学専攻

高耐圧パワーデバイス
高耐圧パワーデバイス

電力変換器のキーコンポーネントを作る

パワーデバイスの性能をフルに引き出す

私が研究しているのは、パワーデバイスの応用技術です。パワーデバイスは電力を制御する半導体で、電力変換器の中で重要な役割を担っています。電力変換器は、発電や送配電、産業機械のモーターを動かすため、さらにパソコンのACアダプタなど、インフラから家庭用製品まで幅広く使われています。脱炭素化の流れでエネルギーの電化が進み、パワーデバイスの重要性はますます高まっています。私が所属する電子デバイス研究部では、次世代パワーデバイスの研究をしています。ただ、半導体チップができただけでは性能を最大限に引き出せません。そこで、チップを実際に使えるモジュールにしたり、性能をフルに発揮するための制御方法を考えたり、完成したデバイスを組み込んだ回路全体の検証まで取り組んでいます。私は数kV以上の高電圧で利用されるデバイスをメインで担当していて、これらはインフラや産業機器向けのものになります。研究レベルでは性能を追求したパッケージもありますが、製品化を見据えて、現在使われているパッケージとある程度互換性を持たせながら、具体的な製品をイメージして開発することもあります。

次世代デバイスで新しい社会的価値を生み出す

これまでのパワーデバイスはゲートが1本だけでしたが、今は2系統や3系統のゲートを持つ次世代デバイスを扱っています。ゲートが増えたことで、従来のモジュールやパッケージには収まりません。そこで、複数ゲート対応のモジュールを研究開発したり、制御も複雑になるので最適な制御方法を探す必要があります。回路応用の部分も複数ゲート対応が必須です。試作には時間がかかるため、まずシミュレーションで確認し、その後試作品を仕上げてデータを取ります。学生時代は物理工学を専攻し、薄膜成長とその物性測定を行っていました。博士課程卒業後はアカデミアへの進路と企業への就職の両方を考えていましたが、東芝の雰囲気が良さそうだと思って入社しました。入社当初は大学の研究室の延長のようなアカデミックな雰囲気が心地よいと思っていましたが、今はむしろ企業ならではの社会課題へのアプローチや、研究の先にある社会実装の方に興味があります。入社当初はパワーモジュールの研究から始めましたが、それだけでは社会実装できないので、制御や回路も学び、協力会社に足を運ぶなどして、パワーデバイスだけでなく上位のパワーエレクトロニクス全体を俯瞰できるようになってきました。こうした視野の広がりが、自分の成長を感じる部分です。


ある出勤日のスケジュール


08:00:出社

  • メールチェック
  • 一日のスケジュール確認

09:00:実験

  • 電力変換回路の動作実験。実験内容の確認、実験系のセットアップから始めて、データ取得を行う

11:00:実験データ整理

12:00:昼食

  • たまに事業所の外のお店に食べにいく

13:00:実験再開

  • 追加データ取得

15:00:片づけ

16:00:退社

  • 子供の保育園の迎えのため、早めの退社

ある在宅勤務日のスケジュール


08:30:勤務開始

  • メールチェック
  • 一日のスケジュール確認

09:00:課内会議

  • 進捗報告や情報共有など。他テーマのメンバーとディスカッションすることも多い

10:00:シミュレーション

  • 時間のかかるシミュレーションは前日の内に仕掛けておき、結果を確認する
  • 結果をもとに、新しくシミュレーションを仕掛ける

12:00:昼食

  • 昼休みのうちに犬の散歩に行く

13:00:デスクワーク

  • 会議用資料作成、特許案作成、論文サーベイなど

15:00:打ち合わせ

  • 事業部との会議や、外部業者との打ち合わせなど

16:00:技術開発業務

  • 実験結果の解析や、シミュレーション結果のまとめ、比較・考察など

18:00:勤務終了

常に社会課題の一丁目一番地に注意を向ける

これからも自分が研究してきた技術や東芝の技術をどう社会に実装していくかに取り組み続け、さらに新しい事業として世の中に出していくことにも関わりたいです。技術を社会実装まで持っていこうとしたとき、自分にとって衝撃だったのは『こういう効果があります』と説明しても、ユーザーがその効果や新機能をありがたいと思わない場合があることでした。それは技術力が足りないからではなく、社会的な制約や別の優先課題があるからです。つまり「価値がある」と信じていた仮説が外れ、社会課題の一丁目一番地は別のところにあったわけです。落胆する一方で、『社会課題ってこんなに複雑なのか』という気づきもありました。技術で課題をストレートに解決できると思っていたアカデミックな世界とは違う現実があるんだと感じ、そのことを常に意識しておかなければならないと思いました。


学生の皆さんに一言


『転んでも立ち上がれるように学生時代に鍛えておきましょう。』

企業で働くなら、自分の仮説が外れたときでも立ち直れるタフさを身につけておくといいと思います。実験がうまくいかなかったら、自分で仮説を立てて試してみて、ダメならディスカッションや調査をしながら新しい仮説を作って、地道に進めていく。研究室でも当たり前にやっていることですが、企業の研究者として社会課題に向き合うと、そのスケールがぐっと大きくなります。そこで折れずに、今まで通り立ち直って、また新しい仮説を立てればいい。そんな気持ちを持っていてほしいです。