画像処理と深層学習モデル解析、材料開発への応用
画像処理と深層学習モデル解析、材料開発への応用

深層学習技術で
新たな材料生産プロセスを開拓する

アナリティクスAI研究部門 古庄 泰隆
2020年度入社 情報科学科

アナリティクスAI研究部門 古庄 泰隆
2020年度入社 情報科学科

画像処理と深層学習モデル解析、材料開発への応用
画像処理と深層学習モデル解析、材料開発への応用

深層学習技術で新たな材料生産プロセスを開拓する

専門家に頼らない材料特性の識別方法

私が取り組んでいるのは、EVなどのパワーユニットに使用される窒化ケイ素基板の研究開発です。今までの開発・生産管理では、材料の専門家が直接基板を観察したり、走査電子顕微鏡で撮影した画像(SEM像)を調べたり、あるいは曲げ試験などコストの高い試験を行って基板の硬さや伝熱性といった基板の性能(材料特性)を測るなどしていました。しかしこれには時間もコストもかかり、専門家の知識に依存しているという問題点がありました。そこで画像処理と深層学習技術を用いて、生産管理を自動化できないかというテーマで研究を進めています。あらかじめSEM像の中からどのあたりが材料特性に関係していそうか当たりをつけて、その材料組織を画像処理によって抽出し、抽出された組織の数や面積と材料特性が相関しているかどうかを確認します。相関が確認できれば、基板の画像のみから材料特性を推測することができます。ただこのような方法だと、あらかじめ材料技術者が材料特性と関係しそうだと当たりをつけた材料組織しか確認できません。そこから一歩進んで、材料技術者ですら考えつくことのなかった材料組織のパターンを発見することで、目的の材料特性を得られるような製造プロセスの改善につなげることにも取り組んでいます。

既存の開発方法では得られない知見

具体的なプロセスとしては、基板のSEM像を小さな断片の画像(パッチ画像)に分け、パッチ画像を類似度に基づいてグループ分け(クラスタリング)します。似たような材料組織パターンを持つパッチ画像には似たクラスタ番号を割り振ることで、各基板でのクラスタヒストグラムが得られます。硬くて伝熱性が良いといった良い材料特性の基板と、そうではない悪い材料特性の基板のクラスタヒストグラムを比較すると、良い基板はこのあたりのクラスタの数が多い、といった傾向が読み取れます。そこから、このクラスタは材料特性を良くするのに関係するのではないか、といったことが分かります。実際にそのクラスタに属するパッチ画像を眺めて、『こういったパターンが材料特性を向上させるのかもしれない』といった今まで材料技術者が思いつかなかったパターンを発見することを目的としています。仕事のやり方は、半年ごとの目標に対する小さな目標を月単位で立て、それがクリアできるように柔軟なスタイルで進めています。在宅勤務は週4回程度で、ほぼ1週間に2回のペースでチーム内でディスカッションをしています。私のいるチームはバックグラウンドが全く違う人材で構成されていて、数学出身の人もいれば工学寄りの人もいます。あるいは高専から東芝に入って画像処理をバリバリにやってきた人もいます。東芝全体を見ても様々な知識やバックグラウンドを持った人たちがいて、技術を学んだり相互に協力し合ったりして自分の研究を高めることができる環境なので、本当に来て良かったと思っています。


ある出勤日のスケジュール


08:30:出社

  • メールチェック
  • スケジュール確認

09:00:実験 or データ解析と技術調査

  • 計算機サーバーで学習中の深層学習モデルの進捗を確認
  • 進捗状況に応じて、実験結果のまとめ、別設定で再度学習、その他既存研究の調査などを行う

12:00:昼食

  • 2024年に完成したイノベーション・パレットの食堂は、開放感があっておしゃれ、メニューも豊富でおいしい

13:00:チームメンバーと対面でディスカッション

  • 自由活発にアイデアを言い合うブレインストーミングなどは対面の方が効果的

15:00:ディスカッションの振り返り

  • ディスカッション内容やアイデアをまとめて、具体的な手法を考える

16:00:退社

  • メールチェック
  • 明日のスケジュール確認

ある在宅勤務日のスケジュール


07:00:勤務開始

  • メールチェック
  • スケジュール確認
  • テーマ定例向けの資料などを作成

10:00:テーマ定例

  • チームメンバーとスケジュール確認や進捗共有、ディスカッション

12:00:昼食

  • 電気圧力鍋で自炊。朝セットするだけで厳密に制御された熱が食材に化学変化を起こし、食感や風味を変え手間なくおいしい料理が楽しめる。このような生活を一変させる技術を開発したいものだ。

13:00:研究ディスカッション

  • 同じ研究内容に取り組んでいるメンバーと詳細なディスカッション

15:00:実験 or データ解析と技術調査

  • 計算機サーバーで学習中の深層学習モデルの進捗を確認
  • 進捗状況に応じて、実験結果のまとめ、別設定で再度学習、その他既存研究の調査などを行う

18:00:勤務終了

  • メールチェック
  • 明日のスケジュール確認

企業研究者の目的は事業と結びつくこと

入社して1〜2ヶ月の頃、部門内で進められていたある研究を見て、『これは改善できるのでは?』『もっといいアプローチを使えばもっと性能が上がるのでは?』という気づきがあり、それから1〜2ヶ月で成果を出し、特許取得と論文発表に1年、事業部へと売り込んで製品向けに提供する段階にもう1年かけて行くことができました。ひらめきから企業研究者としての一連のサイクルを回せたという点で、ダイナミックで貴重な体験でした。当時は学生から企業研究者になったばかりで、研究って何らかの技術の開発で終わりかな?と思っていました。しかし実際には技術の開発だけでは終わらず、しっかり事業部へと渡し、その技術がどの程度の利益が見込まれるものなのかまで見積もる必要があるという経験を通じて、そこは学生の研究とは違うのだと実感しました。将来的には、革新的な技術によって会社を立ち上げて、その事業に思い切り専念してみたいという思いがあります。これまで東芝内から立ち上がったベンチャー企業もあるので、自分の作った技術で事業を起こし、会社も成長しているのを見届けられたとしたら、企業研究者として理想的な生き方なのかなと思います。そのためにまずは革新的な技術を見つけないといけないですね(笑)。


学生の皆さんに一言


『常にチャレンジャー・ファーストペンギンであるべきです。』

子供時代は何にでも好奇心を持って恐れずに挑戦できる、刺激に満ちた楽しい時期でした。研究者も同じように普通の生活では出会えないようなチャレンジングな問題に常に向き合い、それに対していろんなアプローチを試行錯誤しながら問題を解決していくので、子供時代と同じような刺激が得られる本当に楽しい職業です。この幸せを感じ続けるには、何にでもチャレンジし、ファーストペンギンになる姿勢がないと研究者でいても幸せになれないと思いますので、それが一番重要だと思います。