二次電池SCiB™の開発・製品化で
第68回(令和3年度)「大河内記念技術賞」を受賞

2022年3月17日
株式会社東芝

概要

当社はこのたび、第68回(令和3年度)大河内賞において、当社の「リチウムチタン酸化物負極を用いた高入出力、高安全性長寿命大型二次電池の開発」について、「大河内記念技術賞」を受賞しました。贈賞式は3月22日に行われます。
大河内賞は、財団法人大河内記念会が生産工学や生産技術分野の研究において、学術の進歩と産業の発展に大きく貢献した業績を表彰する権威ある賞です。
当社は、リチウムイオン電池の負極に従来の黒鉛に替えて、高入出力性能・安全性・長寿命性能に優れたリチウムチタン酸化物(LTO)微粒子からなるLTO負極(図1)を開発し、LTO負極の高速塗布技術とセルの高速・高信頼製造技術の導入により、2008年に業界に先駆けてLTO負極を用いた大型二次電池SCiB™(図2)の量産化に成功しました。今般の受賞は、これによりカーボンニュートラル実現に向けてエネルギーの有効利用を推進する自動車・バス・鉄道車両・船舶・自動搬送車・大型蓄電池システムに適合する高い性能・経済性・安全性を実現したことが高く評価されたものです。

受賞技術の開発背景・特長

地球環境、エネルギー・資源の問題解決の視点からカーボンニュートラルとエネルギーの有効利用が世界的規模で求められる中、自動車等のモビリティの電動化や再生エネルギー用の定置用蓄電システムに適合可能な大型二次電池の開発・実用化が進められています。このような大型二次電池に要求される性能として「高入出力・急速充電・高安全・長寿命」が重要な位置づけとなりますが、従来の民生用途の小型リチウムイオン電池では一般に黒鉛を負極に用いているため、これらの性能を同時に満たすことが困難でありました。

そこで当社は、従来の黒鉛負極に比べて化学的に安定し、充放電に伴う体積変化が殆ど無いLTO粒子の電極反応機構を解明することにより電極の高性能化の指針を得るとともに、LTO特有の内部短絡に対する安全機構を発見することで高い安全性を実現しました。電極開発においては、表面の不純物を除去した高品質・高結晶性のLTO微粒子を開発することにより、低抵抗でサイクル寿命性能に優れたLTO負極を実現しました。生産技術開発においてはLTO負極の高速塗布技術とセルの高速・高信頼技術を開発導入した柏崎工場(図3)にて量産製造に成功し、高入出力・急速充電・高安全で20000回以上のサイクル寿命性能に優れた大型二次電池SCiB™の製品化を実現しました(図4)。SCiB™は、自動車、バス、鉄道車両、船舶、自動搬送車、大型蓄電池システムなどに採用され、普及が拡大しています。

今後の展望

当社は、持続可能な循環型社会の形成、安心・安全な社会の実現に貢献することを目指し、今後もSCiB™事業の拡大と研究開発を続けてまいります。

図1: LTO微粒子からなる負極
図2: SCiB™の外観
図3: SCiB™を量産製造する柏崎工場
図4: SCiB™の長寿命サイクル性能