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MRI検査における閉所での不安感を解消する広視野バーチャル映像表示技術を開発

2015年11月

概要

株式会社東芝と東芝メディカルシステムズ株式会社は、MRI検査装置の検査空間であるボア(注1)内に設置したドーム型スクリーンにプロジェクターから映像を投影することで、検査空間を感じさせない広視野・高臨場感映像を表示できる技術を開発しました。本技術は、2015年11月29日からシカゴで開催される「第101回北米放射線学会(RSNA)」で参考展示(注2)します。

開発の背景

両社はこれまで、MRI検査を受ける患者の狭い空間や騒音による不安を軽減するため、直径71cmの大口径オープンボアや、検査時の騒音を低減するPianissimo™機構(注3)を開発し、製品化してきました。今回開発した技術により、さらに快適性を向上させ、検査空間を感じさせないMRI環境を提供します。

本技術の特徴

本技術は、寝台(注4)の位置に応じて動く半透過ドーム型スクリーンをボア内に設置し、磁界の影響が及ばないMRI検査装置の後方に設置したプロジェクターから、スクリーンとボア内カバーに映像を投影し、寝台に設置されたミラーに反射された映像を患者が見ることにより、検査空間を感じさせない映像空間を実現しています。

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ボア内に設置されたドーム型スクリーンは、当社が研究開発してきた車載用ヘッドアップディスプレイ(注5)や超高臨場感用頭部搭載型ディスプレイ(注6)の基盤技術が活かされています。物体の色や形状を処理する中心視野(注7)に加えて、空間の奥行や広がり、動きを処理する周辺視野(注8)に映像刺激を与えることで、視野角60度以上の広視野・高臨場感映像を実現します。患者はミラーに反射されたその映像を見ると、実際のボア内カバーより遠くに映し出されているように感じられ、広々としたバーチャル空間を得られます。

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検査前には、ドーム型スクリーンはボア入口に位置して映像を表示しており、トンネル構造が見えないため検査への不安を軽減します。

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また、検査開始時には、ドーム型スクリーンが寝台と連動してボア内に移動することで、患者は常に一定の映像を見続けることができ、閉所であるボア内へ入り込む感覚を低減します。更に、検査中はミラーに反射された映像とボア内カバーに投影された高臨場感映像が患者の視野内に入るため、広々とした明るい空間を実現しています。

今後の展望

今後は、患者がボア内で検査していることを忘れてしまうようなリラックスできる空間を提供するため、騒音低減技術を融合させ、早期の実用化を目指します。

(注1)MRI検査装置において検査を行うためのトンネル状の構造部分。

(注2)医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)の認証を取得しておりません。現時点では販売・供与できません。

(注3)http://www.toshiba-medical.co.jp/tmd/products/mri/pianissimo/slide05.html#pm(キヤノンメディカルシステムズ株式会社)

(注4)MRI検査で被験者が横になる台。検査に応じてボアの内外に移動する。

(注5)東芝レビュー Vol.66 No.6 (2011)に掲載。
    運転手が視線を前方にしたまま、フロントウィンドウ等に映し出された遠方虚像により、車速やナビゲーション表示などのさまざまな情報を確認できるシステム。

(注6)SID2006, “Hyper reality Head Dome Projector (HDP) using LED Light Source”, pp.2003-2006.

(注7)視線を中心にした約30度の範囲を中心視野という。

(注8)中心視野から外れた上下約130度、左右約200度の範囲を周辺視野という。

東芝メディカルシステムズ株式会社 ホームページ:http://www.toshiba-medical.co.jp/