情報通信プラットフォーム

無線LANを用いた高精度無線同期制御技術を開発

2014年9月

概要

当社は、無線LANに標準装備されている時刻同期機能を利用し、接続された機器を約±200マイクロ秒(1/5000秒)以内の高精度に同期制御する機能を開発しました。本技術により、ハードウェア追加コストなく、ソフトウェア実装で高精度な無線M2M(Machine-to-Machine)通信における同期制御が可能になります。本技術の詳細は、米国ワシントンDCで開催される、屋内無線に関する国際シンポジウム IEEE 25th Annual International Symposium on Personal, Indoor, and Mobile Radio Communications (PIMRC) で、9月4日の14時 (現地時間) に発表します。

開発の背景

現在のM2M通信は、主に監視用途として、センサネットワークを中心に普及が進んでいますが、今後は、機器制御用途での拡大も期待されます。接続された複数の機器を制御するためには、それぞれの機器が同期して動作するための基準信号を機器間で共有する仕組みが必要です。
また、機器制御用途の拡大にともない接続される通信機器数の増大が見込まれるため、配線が複雑化し、設置の手間やコストが増大することが想定されます。そのため、有線ではなく無線で機器間を接続することも求められます。

高精度無線同期制御技術

そこで、当社は機器のうちの1つ(親)が出力する同期制御用基準信号を、無線LANを介して別の機器(子)での利用を可能とする技術を開発しました。本技術は、無線LAN内部で通信のために同期しているTSF(Timing Synchronization Function)タイマを利用し、ソフトウェア実装で実現されます。具体的には、親となる制御機器から出力される同期用の基準信号を無線LANチップ内部でTSFタイマを基準に推定し、子機に伝えます。子機においても、TSFタイマを利用して伝えられた基準信号を再現します。これにより、機器が同期して動作するための基準信号を共有可能となります。
また、ソフトウェア制御に伴い処理遅延が発生しますが、パルス信号の周期性を利用した処理や処理遅延量に応じた処理により影響を緩和しました。これにより、通信負荷が高く処理遅延が大きい状態であっても、親となる制御機器に対して±約200マイクロ秒 (1/5000秒) 以内の高い精度で、他の制御機器の同期が可能であることを確認しました。これは一般的な時刻同期方式としてよく知られているNTP(Network Timing Protocol)の100倍程度の高い精度となります。
本成果により、例えば無線接続されたインバータ間で、交流出力の周波数と位相の同期精度を一定以内に保証することができます。そのため、停電時のように系統の参照信号が得られない状況においても複数インバータで構成された電力システムを安定動作させることができます。

今後の展望

当社は、今後さらなる精度の向上等の課題を解決し、3年後に技術的な完成を目指して研究開発をすすめていきます。