マルチメディア処理

読むことが困難な人にも楽しめるオーディオブック作成を支援

2014年2月

概要

当社は、音声合成を活用して、朗読コンテンツを簡単に作成できる音訳支援システム「DaisyRings™(デイジーリングス)」を開発しました。本システムは、音声合成の読み誤りやアクセント誤りをウェブブラウザ上で簡単に修正することで、弱視や識字障がいの方のための朗読コンテンツを、図書館スタッフや音訳ボランティア、教員の方々が、簡単に作成できることを目指したシステムです。

開発の背景

電子書籍の普及に伴い、音声合成を利用した書籍読み上げが、弱視や識字障がいの方の読書支援手段としても期待されています。しかし、閲覧や表示のために作成されている電子書籍コンテンツは、そのまま音声として読み上げると、読み間違いやアクセントの誤り、間を空けずに読み上げてしまう等などの課題がありました。一方で、書籍を人が朗読して音声化する「音訳」作業は、従来、音訳ボランティアの方々によって行われていました。しかし、非常に手間がかかり作業が長期にわたるという問題がありました。

音訳支援システム「DaisyRings™」

そこで当社は、音声合成を活用し、肉声朗読では難しかった文量の多い書籍や、専門性の高い書籍の音訳を支援する音訳支援システム「DaisyRings™」を開発しました。ウェブブラウザ上で、手持ちのテキストをアップロードして音訳ができ、編集結果を音声ファイルやDAISY形式のファイルとしてもダウンロードできます。操作も簡易で、例えば「市場」を「いちば」と「しじょう」のどちらで読ませるかをルビで簡単に指定でき、一呼吸分の間も記号の挿入で簡単に行えます。
また、音声合成は、当社が開発してきた高品質な男女各2名の話者が利用でき、好みにあわせて話者を自由に選び、自然で臨場感の高いコンテンツ作成をサポートします。
なお、150ページ相当の書籍テキストを音訳するのに必要な作業期間として、従来の朗読・編集では1.5ヶ月程度必要だったものが、本システムを利用することで一週間程度となる見込みです。本システムは、2013年11月より1年間、音訳ボランティアや図書館関係者の方々にモニタ利用として無償公開中です(※注)です。また、日本点字図書館様にも、2013年12月よりご利用いただいております。

今後の展望

今後は、音声コンテンツの作成ビジネスなどへの展開を模索するとともに、より高品質で、さまざまなニーズに対応できる音声合成の研究開発を進めていきます。

(※注)本サービスの無償公開は2015年12月に終了し、この実証実験で得られた数々の知見を反映した商用サービス「RECAIUS音訳エディタ(東芝デジタルソリューションズ株式会社)」を開始しました。

「RECAIUS 音訳エディタ」 https://www.toshiba.co.jp/cl/pro/recaius/lineup/daisyrings.html