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公開鍵サイズを6分の1に圧縮する代数的トーラス暗号

2012年6月

概要

当社は、公開鍵のサイズをRSA暗号の6分の1に圧縮する代数的トーラス暗号を開発しました。この代数的トーラス暗号は、公開鍵サイズの増大に対応し、安全かつ高速な通信を実現します。

開発の背景

公開鍵暗号は、ネットワーク・セキュリティの基盤技術として幅広く利用されています。コンピュータが進歩し、新たな攻撃法も提案され、安全とされる公開鍵サイズは現在の約1024ビット程度から、今後20年間で2倍以上の2048~3072ビットに増大する見込みです。しかし、スマートメータなど、社会インフラ系サービスに今後導入される組み込み型センサは、メモリ容量、計算能力や通信帯域が十分とは言えません。安全とされるサイズの公開鍵暗号を導入するのは、大きな負担です。

従来技術と課題

安全性を保ちながら公開鍵サイズを圧縮する技術として、公開鍵を代数的トーラスと呼ばれる数学的な集合の要素として表現する代数トーラス暗号があります。しかし、従来の代数トーラス暗号は、複数の要素が同じ圧縮表現を持つため、暗号演算のうち、乗算ができない方式であったことが、実用化の課題となっていました。

本技術の特長

当社は、従来の代数トーラス暗号の圧縮後の公開鍵に数ビットの付加識別情報を加えた、新しい代数的トーラス暗号方式を開発しました。この新しい方式により、同じ圧縮表現を持つ複数の要素を完全に区別することができるようになり、従来演算ができなかった乗算も、世界で初めて、演算できるようになりました。公開鍵サイズに増大に対応しつつ、現在広く一般に使われている通信手順、認証手順まで代数的トーラス暗号の適用範囲を広げ、メモリ容量、計算能力や通信帯域が十分でない機器においても安全で高速な通信を可能にします。

今後の展望

この新しい代数的トーラス暗号は、ドイツで開催された国際学会Pairing2012で発表しました。今後、暗号演算の高速化と安全な公開鍵サイズの圧縮に向けて研究開発を進めていきます。また、国際標準化も進める予定です。