ナノ材料・デバイス

高耐圧SiC-PiNダイオードを用いた世界最大容量の1MVA級高電圧・大電力変換装置の開発

2012年1月

概要

当社は、独立行政法人 産業技術総合研究所、公立大学法人 首都大学東京、独立行政法人 国立高等専門学校機構 茨城工業高等専門学校および、東芝三菱電機産業システム 株式会社との5者共同で、高耐圧SiC(炭化ケイ素)製のPiN(P-intrinsic-N)ダイオードを適用した世界最大容量(当社調べ)の1MVA級 社会インフラ向け高電圧・大電力変換装置を開発しました。今回開発した高電圧・大電力変換装置は、従来比(※注)8倍の4kHzの高周波スイッチングを達成し、装置設置面積3分の1、重量60%削減を実現することができます。

(※注):Si(シリコン)ダイオードを用いた当社製品との比較

(左)4.5kV-400Aハイブリッドペアモジュール(W177mm x D105mm x H52mm)、(右)1MVA級 高耐圧・大電力変換装置(W750mm x D1,150mm x H760mm)

背景

鉄鋼圧延などの産業用ドライブ装置、送配電システム、鉄道車両ドライブなどに利用されている社会インフラ向け高電圧・大電力変換装置は、低炭素化社会の実現に向けて世界的に市場が急速に拡大しています。今後の大量生産化と普及に向けた次世代の高電圧・大電力変換装置には、小型・軽量化とコストパフォーマンスの向上が求められます。これら高電圧・大電力変換装置には、定格電圧が4.5kV以上の高耐圧パワー半導体モジュールが多用されており、小型・軽量化のために低損失化と高速動作化が課題です。そのような中、2007年から5者共同で高耐圧化に適した構造のSiC-PiNダイオードの開発、SiC-PiNダイオードとSi-IEGTを組み合わせた高耐圧・大電流ハイブリッドペアモジュールの開発、および、それらを適用した高電圧・大電力変換装置の小型・軽量化に関する研究開発を実施してきました。

技術の特長

今回、定格電圧4.5kVで実用レベルの電流容量である定格電流400A級の高耐圧ハイブリッドペアモジュールと、高周波化の周辺技術として、直接水冷型モジュール、高速ゲート駆動回路および、低インダクタンス主回路配線技術を並行開発しました。これらの技術を適用して1MVA級高電圧・大電力変換装置を開発し、従来比8倍の4kHzでの高周波駆動に成功し、次世代型の高電圧・大電力変換装置に必要な低損失・高速動作化の実現可能性を実証しました。本技術により、従来の高電圧・大電力変換装置に必要であった大型変圧器の削除、フィルタ容量の低減が可能になり、装置設置面積1/3、重量60%減が実現できます。さらに、今回開発した高耐圧SiC-PiNダイオードの技術は耐圧4.5kV以上の高耐圧化への展開が可能です。

今後の展望

今回の実用レベルでの実証成果を機に、今後も5者共同で、急速に市場が拡大する社会インフラ向け次世代高電圧・大電力変換装置の研究開発を進めていきます。