ナノ材料・デバイス
気象レーダの増設を可能にする超伝導フィルタ
2011年11月
概要
当社は、気象レーダ用小型超伝導受信フィルタユニットを開発しました。本ユニットの開発により気象レーダを増設してきめ細かく雨量データを観測することが可能となり、より効果的なゲリラ豪雨対策が期待されます。
開発の背景
近年、ゲリラ豪雨による水害が多数報告されており、その対策の一貫として、高性能気象レーダの増設が進められています。きめ細かく雨量データを観測することを目指した増設ですが、気象レーダの運用数の増加に伴い、近隣の他の気象レーダからの干渉に起因する問題が表面化しています。ノイズ低減には、狭帯域なフィルタが必要なうえ、仕様や大きさが異なる気象レーダに広く搭載するためには、受信フィルタユニットの小型化も求められていました。
特長
当社は、世界一の狭帯域性能である比帯域0.08%を誇る世界最小10リットルサイズの気象レーダ用小型超伝導受信フィルタユニットを開発しました。超伝導フィルタは動作温度が上昇すると通過損失が増えてしまう特性を持ちますが、70Kの動作温度において高い性能を実現できる超伝導共振器を開発したことにより、小型冷凍機の利用が可能となり、従来我々が開発してきた受信フィルタユニットに比べて50%の小型化に成功しました。
今後の展望
今回開発した気象レーダ用小型超伝導受信フィルタユニットは、2011年10月6日のCEATECのARIBブースで展示されました。このフィルタを用いることで、現行システムと比較して2倍の数の気象レーダを運用することが可能となります。この超伝導フィルタは他の機器にも応用可能なため、今後、通信インフラ機器等の高性能化に向けて研究開発を進めていきます。