コラム

地域包括ケアひとつばなし(2)

2019.6.27

「地域包括ケアに求められる地域マネジメントとは何?」


高齢者のライフステージを「疾病予防 → 介護予防 → 介護 → 在宅医療」と、心身の状態の変遷によって大きく4つに分け、各シーンに対応できる事業主体は異なる、という話を前回のコラムでお伝えした。これを踏まえて、今回のテーマである「地域包括ケアに求められる地域マネジメント」について話を進めていこうと思う。

各シーンにおける地域マネジメントとは?

簡潔に言うと、地域マネジメントでは、地域医療・介護・福祉・保健のサービスの包括的な最適化を目的にPDCAサイクルを回すことになる。マネジメント分野の普遍的なキーワードであるPDCAは、「P」計画策定、「D」施策実行、「C」実績評価、「A」課題分析であり、地域マネジメントにおけるPDCAを業務面で整理してみると、

P=小地域の課題を把握し、介護保険事業計画等を策定すること

D=具体的な施策を実行すること(下記例参照)

  • 「地域ケア会議」⇒地域のさまざまな課題を検討・解決するための場を運営
  • 「サービス担当者会議」⇒ケアプラン決定・効果計測のための場を支援
  • 「ケアプラン点検」⇒ケアプランの成果把握やケアプラン見直しを提案
  • 「インセンティブ事業」⇒好取組の事業者を支援など

C=事業計画の予実績を把握し、実績を評価すること

A=実績を評価した結果、次期計画に対する解決策を検討・準備すること

このサイクルを好循環で回すためには、健康寿命延伸や給付費抑制の効果を実感できるかが重要で、例えば、行政が策定した各施策に関わる事業主体が行動変容を起こし、サービス提供側が質の高いサービスを探求し、サービス利用側に改善効果が現れる、これらの効果を少しずつでも測定できれば、この循環は自発的に回りだすと考えられる。

この循環の原動力は、自治体と事業所が緊密にやりとりする期間となる「D」の充実度合により異なってくる。

自治体の各部門では、おのおのが担う役割で地域マネジメントに関わりながら、高齢者が次のステージに進まないように、それぞれのアプローチで予防に取り組まれており、各部門で事業効果の測定方法(効果の視点と尺度)は異なる。例えば、介護予防を担当する総合事業部門では、介護予防事業の中でPDCAを回し、要介護状態に進めないという視点と尺度で取り組まれている。

3年周期の介護保険PDCA

これまで説明してきたPDCAは、介護保険事業計画の策定単位である3年周期で考えていくことになる。

2018年度からスタートした「第7期介護保険事業計画」は、この4月から2年目に突入した。いわゆる「D:施策実行」の真っ只中なのだ。このときの「P:計画策定」は、2017年度に行われており、計画策定ネタとして必要な「C:実績評価」と「A:課題分析」はさらに前の2016年度から取り組まれている。

つまり、2019年の後半頃からは、次の第8期に向けたCとAを始めなければいけないことになる。第7期が終わってから始めたのでは間に合わず、DとC(A)を並行して行うことになるのだ。

このようにあらゆる業務のポイントを外さずに、効率よく地域マネジメント進めるにはどうしたらいいのか、次回は各業務に踏み込み、データの活用方法をお伝えしたい。

【データの活用とは…】行政は活用できるデータの宝庫

自治体の各部門の、健康管理システムや国保事務システム、介護保険事務システムなど、行政システムには、健診データ、要介護認定データ、及び介護・医療レセプトデータといった多種多様な履歴データが個人単位に蓄積されている。

例えば要介護認定データは、高齢者の身体機能、生活機能及び認知機能等に関する数々の細かい項目を、認定調査員が聞き取りを行った調査結果もある。介護レセプトデータからは、誰が、いつからいつまで、どんなサービスを利用したのかが月単位で把握できる。

このようなデータを活用すると、高齢者の心身状態を変化させる「要因」と「その結果」についてデータから読み取ることもでき、集計単位を工夫すると、小地域別、サービス種類別、事業者別に傾向を掴むことも可能となる。そう言った意味で、別々に管理される情報でも、人単位に名寄せして経年情報としてまとめると、各部門の各施策検討に必要な地域動向の可視化が行える「戦略データ」となるのだ。

ただし、その宝のデータも各部門の事務処理を行うためだけに、別々に管理されている状態では、残念なことに機能は発揮されない。

PDCAを回す過程でこうしたデータを分析したり、部門をまたがって相互連携しながらデータ共有したりと、いまは眠っているビッグデータを戦略的に活用することで、その地域ならではの「地域マネジメント」に成長していくのではないだろうか。