JSR株式会社様

GHG削減のための、
クリーンルーム省エネ化支援

JSR株式会社様

GHG削減のための、クリーンルーム省エネ化支援

JSR株式会社様の取り組み

【導入前の課題】


  • GHG(温室効果ガス)削減目標のため、クリーンルームの省エネ化に課題があった
  • 従来のクリーンルームは、温度・湿度のコントロールや清浄化する空気の循環回数に主眼を置いた設計のため、運用方法の改善が必要だった
  • 社内の省エネに対する社内の意識をさらに高める必要があった

【導入後の成果・効果】


  • 既存の図面や運転データを基に精査し、ソフト・ハード両面からエネルギー消費の改善を見いだすことができた(従来対比 -5~10%)
  • 具体的な省エネテーマが立案でき、中長期的なGHG(温室効果ガス)削減の目標達成が現実的となるにつれ、社内の意識が変わり始め、コミュニケーションが取りやすくなった

普段どのような業務をされていますか?


JSR株式会社
生産技術部 技術企画チームリーダー
岡﨑 悟士氏

JSR株式会社の生産技術部技術企画チームは、各事業分野の製造プロセス、設備技術、DX(デジタルトランスフォーメーション)、GHG(温室効果ガス)削減技術等の効率的な事業展開や工場運営をサポートするほか、社内の設備・プラント設計部門として、工場設備の安全かつ効率的な管理運用を図るとともに、運転管理技術の維持・向上を担っています。また、新規事業の実行可能性、採算性などを検討するフィージビリティ・スタディも行っています。


JSR株式会社のGX(グリーントランスフォーメーション)に関する取り組み状況についてお聞かせください


効率的な事業を展開する重要な視点として、環境に関わるGHG(温室効果ガス)削減は特に重視しており、当社の中期的な目標として2020年対比で2030年度までに30%のGHG(温室効果ガス)削減を掲げています。2020年10月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への支持を表明し、2021年には「2050年GHG排出“実質ネットゼロ”を目指すこと」を経営方針に組み込みました。
具体的な取り組みとしては、エネルギー使用量の最適化、再エネ電力への切り替え、非化石証書の適応など多岐に渡ります。2030年度までの中期目標達成に向けて、サステナビリティ部や環境安全部と連携しながら、取り組みを進めています。


今回、依頼された経緯とポイントをお聞かせください


2022年にエラストマー事業をカーブアウトする以前は、エネルギー使用量の大部分を占めるのは石油化学事業であり、デジタルソリューション事業でのユーティリティ使用量に対する意識はそれほど高くありませんでした。しかし、省エネルギーという観点から見た場合に、それが大きな課題だったことに気づいたのです。

現在、当社四日市工場でエネルギー使用量の多くを占めているのは、デジタルソリューション事業の研究・製造部門にあるクリーンルームで、技術の進歩によって近年はよりハイレベルな清浄度が求められるようになっており、設備費や運転費も高くなる傾向にあります。これまでのクリーンルームは、温度・湿度のコントロールとFFU(Fan Filter Unit:ファンで吸い込んだ空気をフィルターによって清浄化して送り出す装置)の循環回数に主眼が置かれており、クリーンルームの品質と機能性を最優先に据えており、電気や蒸気などのエネルギー効率については省エネを目指しますが、具体的な手法は空調ベンダー決定後に詳細設計でベンダー提案をベースとして進めることがメインでした。

クリーンルームは温湿度がコントロールされた風量を如何に制御するかでエネルギー消費量が大きく変わってきます。空調制御は主に5パターンあり、これらは①INV(インバーター)室圧制御、②VAV(可変風量装置)オーバーエア(外気)室圧制御、③VAV風量演算制御、④INV+VAV室圧制御、⑤VAVリターンエア(還気)室圧制御という形で、それぞれの給気系統に応じた最適な方法を採用しています。 

①INV室圧制御は、インバーターを用いて室内圧力を調節し、エネルギー効率を最適化。
②VAV(OA)室圧制御は、外気を利用して室内圧を管理しエネルギー消費を抑制。
③VAV風量演算制御は、可変風量装置を用いて必要な風量を精密に計算し調整。
④INV+VAV室圧制御では、インバーターと可変風量装置の組み合わせで、高いエネルギー効率と精密な室内圧制御を実現。
⑤VAV(RA)室圧制御は、還気を利用して室内圧を調整し、室内の空気品質を維持しながらエネルギー消費を低減。

これらの制御は基本的に設置スペースや予算、さらには空調ベンダーが得意とする提案によって異なるため、製造拠点ごとに制御手法が異なっているのが現状です。

VAV:可変風量装置(Variable Air Volume)
INV:インバーター(Inverter)
OA:外気(Outside Air)
EA:排気(Exhaust Air)
SA:給気(Supply Air)
RA:還気(Return Air)

これまで東芝さんには、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連のソリューションを提供していただいていました。そのお付き合いの中で、当社のクリーンルームの省エネ化について相談したところ、これまで東芝さんが培われてきた知見やノウハウを、コンサルティングという形で提供いただくことになったのです。東芝さんは、当社よりはるかに大きな半導体製造工場のクリーンルーム設計の経験がありますし、その設計を担当している専門チームがコンサルティングに応じていただけるとのことで、この機会を逃してはいけないと思いました(笑)。

実は東芝さんに依頼する以前にも、いくつかの空調機器メーカーに省エネルギー施策の検討を依頼してはいましたが、装置の大幅な入れ替えを前提とした提案が多く、コストも多大に掛かり実施が困難なものが大半でした。装置の入れ替えとなれば工場の稼働を止めなければならず、現実的ではありません。
東芝さんのアプローチは、既存の図面や運転データを基に、従来の問題点、特にエネルギーの無駄に着目し、その解決のために設計資料や稼働データの分析にまで踏み込んでいただいたことは、リソースが限られている中で大変ありがたいと感じました。


ご相談いただいた内容はどのようなものだったのでしょうか?


2023年2月製造棟、その後8月同様の手法で研究棟(1棟)のクリーンルームに関する省エネコンサルティングを依頼しました。具体的にはこちらから提供した設備図面と現地設備の詳細な確認を行い、設備の改造、更新、および運用変更を含む総合的な省エネ提案を実施いただきました。このプロセスでは、東芝さんの建設部が持つ多数の省エネ事例を参考にして、貴社の設備に適用可能な装置や仕様の提案を行いました。さらに、各ユニットにおける省エネ効果の試算や施策の優先順位付けだけでなく、各省エネ施策の実施にかかるコストとその効果に関する概算まで行うなど、弊社の今後のGHG削減に向けた省エネテーマ立案について総合的にサポートいただきました。
いずれもわずか2~3カ月間という短期間で、具体的な運用アドバイスの提言と運用シミュレーションの提案を取りまとめていただいたのも驚きでした。

施設を建設する際に作成した何百ページにもおよぶ設計図書(施設の設計図や仕様書、構造説明書など)から空調フローなどを確認し、実際に四日市工場にも足を運んでいただき、運転データから読み取れる無駄や理想的な運転との乖離・精査をこの期間で実施いただいたことに大変感謝しております。現在、2月に製造棟で立案いただいた省エネテーマをベースにさらに詳細設計に向けた深掘りについても同様にサポートいただくことと、別の研究棟についても同様に検討いただく方向で進めております。

▲四日市工場外観

実際にコンサルティングを受けた効果についてお聞かせください


東芝さんのGXコンサルティング を導入したことにより、エネルギーの無駄を大幅に見直すことができました。特にありがたかったのは、即効性のある省エネ対策を示していただけたことです。ソフトとハードの両面から、具体的な改善策を明確にすることが可能になりました。
製造棟のコンサルティングは、建設当初の設計思想とは異なる運用がなされていたこともあり、細かな改善点が数多く見つかりました。空調フローを見直したところ、清浄度の高い「高価な空気」が不必要な部屋に使われているなどの指摘も含まれていました。正直、ここまで詳しく調べてくれるのかと驚きました。また研究棟(1棟)では即効性の高いソフト対策を中心とした省エネテーマが数多く見つかり、実施することで四日市工場全体の数%の省エネに繋がります。数値は小さいと感じるかもしれませんが金額換算で数億規模のメリットとなるため、コストをかけずに運用改善で出来る省エネは大変有効なものであると思います。今後さらに対象拠点を増やしていくことで同様の改善テーマが生まれることに期待しています。


今後の展望やご要望についてお聞かせください


右:JSR株式会社 岡﨑悟士様 / 左:東芝 Nextビジネス開発部 エネルギーマネジメントマッチング推進室 宋政祐

JSR株式会社では、省エネルギー化を推進するために、ソフト面の施策を計画的に進めると同時に、ハード面では中期計画を通じて必要な予算を確保し、具体的な省エネ対策を実施する方針です。特に、クリーンルームを構成する重要設備のエネルギー効率改善に注力します。
ソフト面では、エネルギー消費の分析とプロセスの最適化に力を入れています。IoT技術を利用したエネルギーモニタリングシステムの導入を進め、見える化を通じて無駄なエネルギー使用を削減しつつ、生産性と品質を向上させることを目指しています。
ハード面では、中期計画に基づく予算確保と共に、クリーンルームのような重要設備のエネルギー効率を根本から見直しています。特に、空調システムの最適化、高効率な設備の導入、そして自動制御技術による精密な温湿度管理が重点です。またLED照明への移行や太陽光発電の導入も積極的に進め、環境への影響を最小限に抑えつつ、持続可能なエネルギー源への転換を図っています。


JSR株式会社様 概要


1957年に日本合成ゴム(Japan Synthetic Rubber)株式会社として設立。石油化学メーカーとして3つのコア事業、半導体材料、ディスプレイ材料などの「デジタルソリューション事業」、個別化医療のための研究・診断やバイオ医薬の創薬・製造など医薬分野の最先端ニーズをとらえた「ライフサイエンス事業」、さらにABS製品などの「合成樹脂事業」をグローバルに展開しています。

事業拠点:国内19拠点、海外28拠点(2023年現在)
従業員数:7,994名(2023年3月31日現在)

JSR株式会社様 コーポレートサイト

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  • この記事の内容は2023年10月に取材した内容を元に構成しています。
    記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。
  • JSRとそのロゴはJSRの商標、または登録商標です
  • その他、このページに記載されている社名・商品名・サービス名などは、それぞれ各社が商標として使用している場合があります。