関西テレビ放送株式会社 様
放送局からコンテンツメーカーへ
変革を加速する統合映像コンテンツ管理システム「meify®」
1958年に開局し、フジテレビ系列の準キー局として近畿広域圏に向けた多彩な番組制作を担う関西テレビ放送。同社は、配信サービスの拡大や海外展開の進展に伴い複雑化するコンテンツ権利管理に対応するため、東芝の統合映像コンテンツ管理システム「meify®(メイフィ)」をベースとした新たなコンテンツ・ナビゲーションシステムを導入した。制作初期段階からのメタデータを共有することができる情報基盤を整備することで、煩雑な権利確認の効率化と部門横断でのコンテンツ活用を支援。放送局からコンテンツメーカーへの本格的な変革を加速させている。
課題
- 映像コンテンツの配信や海外展開の進展で、権利確認が複雑化
- マルチユース展開に必要な情報をタイムリーに共有できない
- コンテンツ活用の拡大に向けた柔軟性・拡張性の確保が課題
導入効果
- 権利処理に必要な情報をコンテンツごとにわかりやすく集約して表示
- 制作初期段階からの情報共有により、複数部門のコンテンツ活用を同時並行で実現
- オンプレミス+AWSのハイブリッド構成により、柔軟性・拡張性を確保
マルチプラットフォーム時代における権利管理の複雑化と「情報共有の分断」
同社をはじめとする放送局を取り巻く環境は、ここ30年間で大きく変化した。その変化について、総合技術局 放送推進センター 放送部長 岩佐 周悟氏は「テープからファイルへの転換と、国内外配信への対応という2つの大きな波を経験しました」と表現する。
見逃し配信サイトの急伸、グローバル動画配信プラットフォームの台頭、そして海外展開の活発化により、1つのコンテンツに紐づく権利確認の作業量は急速に増大したという。
「以前は放送ベースで権利処理するというシンプルな確認で済んでいたものが、どのプラットフォームに、どの地域で、どの期間、どのような対価でという多層の確認が必要になりました。また海外の配信に関しては権利関係について非常に厳格で、それに対応するために情報を一元管理し、しっかりIPビジネスとして連携させていく必要が生じています」と岩佐氏は語る。
さらに問題を複雑にしたのが権利情報の属人化だった。「担当者がいないと情報の所在が分からない、マルチユース展開が頓挫するというケースもありました」と総合編成局 知財推進部 部次長の堀田 秀治氏は振り返る。この「情報の分断」こそ、放送局からコンテンツメーカーへの変革を阻むボトルネックだった。
総合編成局 知財推進部 部次長
堀田 秀治氏
総合技術局 放送推進センター 放送部長
岩佐 周悟氏
マルチプラットフォーム時代に対応する新システム構築と部門横断の合意形成
従来のコンテンツ管理システムは、2013年に東芝と共同で構築したものだ。同システムは放送終了後の情報集約を前提とした、「アーカイブ管理システム」として設計され、番組情報や素材情報、権利情報などをメタデータとして管理してきた。しかし、配信・販売ビジネスの拡大や海外展開の進展とともに、メタデータの粒度や共有範囲は変化している。特に「権利(ライツ)」に関する情報は、従来の運用ではタイムリーな対応が難しくなっていた。
求められたのは、制作の早い段階からメタデータを収集し、社内の各部署でリアルタイムに情報を共有できるシステムだった。こうして新たなシステムの検討を開始したが、一番苦労したのが、多岐にわたる関係部署の合意形成だったという。「新たなシステムを検討するには、コンテンツのライフサイクル全体に関わる多くの部署を巻き込む必要がありました。部署ごとの立場や優先事項を調整しながら、目的とメリットを丁寧に共有した上で導入を実現できたことは大きな学びにもなりました」と岩佐氏は振り返る。
インフラ設計を担当したDX推進局 DX戦略部 主事の石井 克典氏は、今回のオンプレミス+AWSというハイブリッド構成を採用した背景について次のように語る。「コンテンツ活用の拡大に伴う柔軟性と拡張性を確保し、社内でのクラウド活用の知見を高めたい、という観点から検討段階からハイブリッド型をターゲットにしていました。セキュリティ対応や運用面で関係者の認識をすり合わせることに大きな時間を割いた結果、全体での共通認識を持ってプロジェクトを進めることができたと思います」
丁寧な社内での調整を経て、オンプレミスも含めた複数の構成パターンで中長期のコストを試算し、柔軟性とリスク分散の観点からハイブリッド構成の採用を決めたという。
こうして、東芝の統合映像コンテンツ管理システム「meify」をベースに構築した新コンテンツ・ナビゲーションシステムの導入が決定し、2026年4月に運用を開始した。
DX推進局 DX戦略部 主事
石井 克典氏
充実した機能・継続性・信頼が決め手に
岩佐氏は、meify導入を決めた理由として次の3点を挙げる。まず既存システムからのユーザー継続性による現場への影響の最小化、次に他社比較におけるmeifyの権利(ライツ)管理機能の突出した充実度、そしてなによりも、13年間にわたる東芝との信頼関係に裏打ちされた、放送局特有のワークフローを含む放送業務への深い理解だ。
meifyは、東芝が10年以上にわたって放送局への導入・運用の中で培ってきたノウハウを基に、地上波放送のアーカイブやメタデータ管理に加え、コンテンツのライフサイクル全般にわたる情報をシームレスに管理可能な仕組みとして開発したものだ。
「2013年にアーカイブ管理システムとして導入して以来、今回の新しいシステム開発にあたっても難易度の高い要件をお願いすることも多くありました。そのような中でも東芝さんは一方的に可否を判断するのではなく、実現可能性を含めて常に真摯に検討し、解決策を模索していただきました」と岩佐氏。もちろんより安価な他社製品や内製システムに置き換えられるのでは、という社内意見もあった中で、コストと効果について丁寧に整理し、現場負担を最小限にする内容を提示できたことで納得感をもって意思決定ができたという。
使いやすさが現場を変える――情報集約と活用を生む好循環へ
2026年4月の運用開始直後から現場で最も多く聞かれたのが「わかりやすい」という声だ。新コンテンツ・ナビゲーションシステムでは権利情報や番組内容、素材情報、関連ファイルなどが用途別にタブで整理され、各部署が必要な情報に一目でスムーズにアクセスできる設計となっている。
UIの改善は操作性の向上にとどまらない。「使いやすいシステムになったことで、現場が積極的に使うようになりました。その結果、より詳細な情報が早くから新コンテンツ・ナビゲーションシステムに集まるという好循環が生まれ始めています」と堀田氏。すべての現場担当者の意識向上につながり、今後のIPビジネス、コンテンツマルチユース構想の実現へ向けた活用も期待されている。
導入を通じて生まれた変化として、堀田氏がとりわけ重要と語るのが「社内課題の顕在化」である。「新コンテンツ・ナビゲーションシステムの導入にあたって、社内のコンテンツ流通における課題や希望が明確に見えてきたことが、大きな進歩だと考えています。」システムの導入が組織の情報管理に対する意識を高め、次の自発的なアクションへ繋がる仕組みができたことも、重要な成果の1つといえるだろう。
また、インフラ面での変化について、石井氏は「AWSのアラートやログを通じて状況をリアルタイムで共有し、運用に関われるようになりました。また、クラウドとのハイブリッド型にしたことでシステムメンテナンスの負担が少ないという安心感もあります」と評価する。
メタデータ活用が切り拓くコンテンツ価値創出とメディアミックス展開
「管理から創出へ」——。岩佐氏のこの言葉が、関西テレビが新コンテンツ・ナビゲーションシステムに期待する役割の核心を表している。制作の初期段階からメタデータが社内で共有される環境が整えば、配信・販売部門は放送を待たずに先行して活用へと動き出すことができる。
岩佐氏はその先にメディアミックスの可能性を見据える。「制作段階から情報を先行して持つことで、例えばドラマの出演者が決まった段階から、表には出さない水面下で、公式ウェブやCM、音楽、イベントなど、これまで現場と連携していなかった多様なメディアと展開を計画でき、複数の部門が同時に準備することができます」
堀田氏は新コンテンツ・ナビゲーションシステムを、「情報を取りに行く」場所にとどまらず、「アイデアが生まれる」場所にしたいと語る。「すべての業務のスタート地点として、コンテンツに関する情報や権利情報を新システムに集約し、部門横断のビジネス展開を支える未来に繋がる基盤に育てていきたいです。ちょうど図書館が資料を探す場所であると同時に、そこからアイデアが生まれる場所でもあるように、新コンテンツ・ナビゲーションシステムをそういう存在にしていきたいと考えています」
将来的には東芝が持つ顔認識AI「カオメタ®」やAIテロップ文字認識「モジメタ®」との連携によるメタデータの自動付与にも期待を寄せる。「人力でのメタ付けにAIを活用できれば、効率化とコスト削減に直結します。クラウドにデータが蓄積される環境はAI活用とも親和性が高く、様々な可能性が見いだせると思います」と堀田氏は力を込める。
最後に、石井氏は「今回のプロジェクトは運用チーム全体でシステムを一体運用していく、その第一歩です。セキュリティや運用体制を継続的に評価、改善しながら、東芝さんに寄り添っていただきつつ次のステージへ進んでいきたいと思います。これで終わりではなく、これからが始まりなのです」と語ってくれた。
東芝の統合映像コンテンツ管理システム「meify」をベースにした新コンテンツ・ナビゲーションシステムは、放送局からコンテンツメーカーへの本格変革を実現するための情報基盤として、今後も現場に寄り添いつつ同社の進化と発展を支え続けていくだろう。
SOLUTION FOCUS
放送局が扱う権利者情報や番組情報など、権利の取り扱いを含めた映像コンテンツに関するメタ情報を一元管理し、制作・編成・放送・アーカイブ・マルチユースなどの業務に対応した情報共有を可能にすることで、映像コンテンツのライフサイクル全体での活用を促進し、業務効率化とビジネス価値の創出を支援します。
この記事の内容は2026年5月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。
COMPANY PROFILE
会社名
関西テレビ放送株式会社
設立
1958年2月1日
所在地
大阪市北区扇町2丁目1番7号
事業内容
テレビ番組の制作・放送、その他放送に関連するすべての事業

