工場の作業環境改善から次世代プラント検討までDX推進に貢献
現場作業の可視化を実現する「Meister Apps™ 現場作業見える化パッケージ」

 医薬品や化粧品、食品分野などに、植物を中心とする天然物由来のさまざまな素材を提供している丸善製薬株式会社。同社では、三次工場の新規プラント設備の設計や生産の効率化、作業環境改善を目指し、現場作業の見える化を推進している。その新たな環境づくりに活用されているのが、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供する、IoTやAI技術を活用し現場作業の可視化を実現する「Meister Apps™ 現場作業見える化パッケージ」だ。


Before

拡大する市場への対応に向けて工場の将来像を描く中で、次世代プラントの建設を検討していた。従来よりも生産性の高いプラントづくりを実現する環境整備が求められていたが、フロアをまたぐ既存ラインでの作業動線や生産性に関する現場データが十分にない状況だった。また、常に改善が求められる現場の作業環境について対策を立案するには、人の感覚による経験値だけではなく、明確なデータによる現場作業の可視化が必要となっていた。

After

作業者の動作データの解析結果や各フロアへの動線データを時間軸で取得するとともに、見守り機能により作業者の脈拍や作業場の温度、湿度などから暑さ指数を把握。こうした現場データの取得と可視化により、現在の作業環境の改善に活用するとともに、次世代プラントの設計や生産性を高める環境整備に向けた施策立案が可能に。データ活用の可能性を広げるなどDX推進の第一歩を踏み出すことができた。

注力分野の1つである健康食品素材製造の中核拠点としての三次工場


 甘草の抽出技術を原点に研鑽を重ね、植物を主とした天然物から有用成分を抽出した素材を医薬品や化粧品、食品といった幅広い分野に提供している丸善製薬株式会社。同社は“自然の恵みをつなぐ”ことを企業理念とし、人に優しい世の中に役立つ事業継続と、地球環境の保全に努めつつ美と健康に貢献している。多岐にわたるマーケットに対し、提案型の営業から研究開発、製造まで一貫して素材を提供できる環境を整えていることを強みとしている。
 成長を続ける健康食品素材の分野において、より安定した製造を維持、拡大するための中核拠点となるのが同社の三次工場だ。

作業環境改善と効率化の課題から見えてきたエビデンスの必要性


 全社で現場の生産性や効率改善についての課題をいかに解決していくかを模索する中で、三次工場において新規プラントを建設する計画が立ち上がった。設計要件を整理するため、現在のプラントの問題点を洗い出しそれらの改善点を検討していた。

 「会社の中で生産性向上、DXとさまざまな議論を重ねる中で、新規プラント計画に向けて、どのようにアプローチしたらよいのか悩んでいました」と製造本部 三次工場 工場長 梶矢 哲博氏は当時を振り返る。ビーコンなどを使って現場を見える化するサービスがあることは知っていたが、現場の担当者の理解も必要となるためこれまで導入には踏み切れていなかったという。

製造本部 三次工場 工場長
梶矢 哲博氏

同工場 副工場長
堀内 剛氏

 少人数で運用している製造現場では、原料を装置に投入した後、製品が出来上がるまでの多岐にわたる工程を一人で担当していることが多い。また、一階から三階までフロア間を何度も行き来したり、複数人で作業が集中する際には待ち時間が発生するなど、非効率な状況だった。これまでも負荷を軽減し効率化するためにさまざまな対策を試みていたが、大きな改善効果にはつながっていなかった。

 また、高熱処理が必要な装置もあり、作業エリアによって夏場は50℃を超えるなど、労務管理の面から作業環境の改善も課題となっていた。「暑さ対策として空調設備を導入したこともありましたが、客観的なデータによる裏付けがなく感覚に頼って設備を導入したことで、十分な効果が得られなかった経験があります」と語るのは同工場 副工場長 堀内 剛氏だ。

 少人数で運用している製造現場では、原料を装置に投入した後、製品が出来上がるまでの多岐にわたる工程を一人で担当していることが多い。また、一階から三階までフロア間を何度も行き来したり、複数人で作業が集中する際には待ち時間が発生するなど、非効率な状況だった。これまでも負荷を軽減し効率化するためにさまざまな対策を試みていたが、大きな改善効果にはつながっていなかった。

 また、高熱処理が必要な装置もあり、作業エリアによって夏場は50℃を超えるなど、労務管理の面から作業環境の改善も課題となっていた。「暑さ対策として空調設備を導入したこともありましたが、客観的なデータによる裏付けがなく感覚に頼って設備を導入したことで、十分な効果が得られなかった経験があります」と語るのは同工場 副工場長 堀内 剛氏だ。

同工場 副工場長
堀内 剛氏

手軽に導入可能なオールインワンパッケージとサブスクリプションサービスによる提供


 そんな折、東芝の製造業向けソリューションMeister シリーズを販売するパートナー企業から提案があったのが、現場作業のデータ収集から可視化、分析を可能にする「Meister Apps 現場作業見える化パッケージ」だ。

 「DX推進、効率化という会社全体の方針もあり、まずは試してみようと考えました。サブスクリプションで利用できるため、大きな投資をせずにトライできる点も進めやすかったですね」と梶矢氏。

 ビーコンやリストバンドなど必要なハードウエアと分析のためのソフトウェアが1つのパッケージになっており、サブスクリプションサービスで提供されるため、設備投資も不要で細かな事前調整をする必要がないことも大きなメリットだった。「当初は新規プラントに向けた具体的な活用イメージまでは湧いていなかったのですが、パッケージとして手軽に利用できたことや、どんなデータが取得できどう活用できるのかという興味から、まず試してみようと考えました」と堀内氏。

 こうして現場作業環境の改善や生産性の高い次世代プラントの検討に向けたデータの取得手段として「Meister Apps 現場作業見える化パッケージ」が採用されることになった。

現場作業の改善根拠と作業者の見守りデータとして活用へ


 3カ月ほどの試用期間を経て、2024年12月から正式に利用を開始。現在はデータを取得したいエリアに30個ほどビーコンを設置し、最大5名の作業者がリストバンド型センサとスマートフォンを装着して分析に必要なデータを取得し、現場に設置された無線アクセスポイント経由でパソコンにデータを集めている。必要なタイミングでデータを収集することが可能で、ビーコンの移動、取り外しも必要に応じて行っている。

 具体的には現場の作業分析に必要な位置・動作・移動データを収集することで最適な人員配置の検討の根拠として活用し、さらに見守り機能により暑さストレスとなるデータを収集し、分析を進めている。パッケージに含まれるテンプレートにより作業状況を可視化し、AIを活用した作業者の動作解析データや各フロアへの動線データを時間軸で取得できるようにするとともに、作業者の脈拍や作業場の温度、湿度などから暑さ指数を導き出している。「これから本格的に暑い季節を迎えるので、暑さストレスのデータの収集に期待しています」と堀内氏は説明する。

スマートフォンとリストバンドを装着した現場の様子
得られたデータを確認、分析

 現場への展開にあたっては、ビーコンの設置場所や出力強度を調整するなど試行錯誤を重ね、最適なデータを取得できる環境づくりを意識している。「設置についてはそれなりに苦労する部分もありますが、1つのパッケージだからこそ悩みも相談しやすいですね」と梶矢氏は言う。

 Meister Apps 現場作業見える化パッケージを導入し、豊富なテンプレートを活用して現場作業を迅速に可視化できたことは今後の大きな効果につながると同工場 生産課 リーダー 増田 諭氏は言う。「すでに設置済みの環境を大きく変更することは正直難しいでしょう。しかし、現場作業を可視化できることで、どうすれば負担が軽減できるかについて根拠のある具体的な案を示せるようになりました。より生産性の高いラインづくりに役立てるなど、データ活用の大きな可能性を実感しています」。

 得られたデータを活用することで、次世代プラントの設計の精度が上がることも期待している。「現場作業の見える化により価値の高い作業、いわゆる価値作業が定義でき、それを原価管理に反映するといったことにも役立てられます。経営的な目線でも有用なDX推進のツールになると考えています」と梶矢氏は評価する。

同工場 生産課 リーダー
増田 諭氏

 また、施策づくりにおいて新たな選択肢が得られたことも効果の1つだ。「何かあれば、Meister Apps 現場作業見える化パッケージのような可視化ツールを使うという選択肢が得られたことは大きいですね。根拠となる具体的なデータがあることで改善案が出しやすくなったと言えますし、データ活用の有用性を示すことで、社内の他の部署に対してもいい影響になると思います」と堀内氏。

 今回ソリューションを提供した東芝については、定期的なフォローアップやノウハウの提供など継続的で手厚いサポートを高く評価する。「改善活動は現場にとってプラスαの仕事となり、日々の業務に忙殺されているとなかなか手が付けづらい分野です。定期的にフォローアップいただけたことで見直しのきっかけになるなど、とても感謝しています」と梶矢氏。

これまでにない改善テーマの発見などデータ活用の可能性が広がる


 今後は、引き続き三次工場で現場作業の見える化を進めながら、いずれは他の工場への展開も期待しているという。「単にMeister Apps 現場作業見える化パッケージを導入しても使われなければ意味がありません。データを取得する目的や動機をしっかり現場に持ってもらうことができれば、有効な情報が得られるはずです」と梶矢氏。特に作業内容の可視化によって価値作業量を原価管理に展開するなど、データ活用の幅をさらに広げていきたい考えだ。

 得られたデータは、現場における改善活動のアイデアのタネにもなり得ると見ている。「年に一度QC活動の発表会がありますが、新たなテーマ検討にも活用したいですね。発表することで他部門にも同じような動きが広がり、製造全体の業務効率化に役立つことになるはずです」と堀内氏。増田氏も「今は我々が見たい部分しか可視化できていません。細分化や広域化していくことで、これまでとは違う目線で改善できるポイントが得られることを期待しています」と語ってくれた。

 現場作業のさまざまなデータを取得して新たな価値創造につなげる同社の取り組みに、これからも東芝の「Meister Apps 現場作業見える化パッケージ」の大いなる活用が期待される。

SOLUTION FOCUS

Meister Apps™ 現場作業見える化パッケージ

IoTやAIの技術を活用し、現場の多様な作業データを収集・見える化し、さらなる作業効率の改善と安全で働きやすい作業環境の構築を実現することで、現場主体の課題発見とそれらを解決する「現場力」の向上を支援するソリューションです。エッジデバイスやウェアラブルセンサなどから作業員の位置・動作・状態・発話の情報を収集し、時系列に統合蓄積して、多彩な見える化テンプレートを使って表示することが出来ます。必要なソフト、ハードをオールインワンパッケージとして提供しているため即日導入・利用開始が可能です。

この記事の内容は2025年4月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
丸善製薬株式会社

創業
1938年9月5日

本社所在地
広島県尾道市向東町14703-10

事業内容
医薬品、医薬品用素材抽出物、医薬部外品用素材抽出物、化粧品用素材抽出物、食品添加物、食品、食品用素材抽出物、健康食品、健康食品用素材抽出物の製造販売

URL
https://www.maruzenpcy.co.jp/