新型コロナウイルス感染症は、私たちの社会や生活に大きな変化をもたらしました。ニューノーマルな時代に、社員の安全を確保しながら企業活動を継続させ、さらに社会貢献に結びつけるにはどうしたらよいのか頭を悩ませている企業も多いのではないでしょうか。東芝デジタルソリューションズでは、これまでに培ってきた技術や経験と、先進のデジタル技術、人材を駆使し、世の中にあるさまざまなデータを活用する、ニューノーマルな時代を切り開くソリューションの開発に取り組んでいます。ここでは、当社がすぐにご提供できるソリューションを中心に、その概要をご紹介します。


ニューノーマル時代を切り開く3つのカギ


新型コロナウイルス感染症が社会に与えたインパクトは、世界秩序やグローバル経済に留まらず、人々の働き方や生活様式、価値観までを変えてしまうほど大きなものとなりました。極力、人と接触させない、移動させないなど、企業は社員の安全面や衛生面に配慮しながら事業運営を継続するために、ニューノーマルな社会に迅速に適応し、さまざまな課題を解決する必要に迫られています。

東芝デジタルソリューションズでは、コロナ禍における課題解決には、デジタル化が有効であることが認められたと考えています。例えば、人と人とが接触しないテレワークの活用により、通勤や外出で移動する時間が不要となり生産性が向上した、会議では開催場所や参加人数の制限がなくなり迅速な情報共有が行えた、などの効果が実感できるケースが増えてきました。

また、IoTによって、人やモノ、設備、環境などを非接触でモニタリングしながらデータを収集し、そのデータを分析して活用することで新たな知見が生まれています。このことからは、データの価値が改めて高まったとも言えるでしょう。

当社では、このようなデジタル化においてカギを握るのは、「テクノロジー」と「人」と「データ」の3つの要素であると考えています。

新しいサービスの開発には、テクノロジーが欠かせません。またそこには、サービスを創造する人が必要です。そして世の中にあふれているさまざまなデータ。その中から有効なデータをタイムリーに取り出し、活用できる環境の構築がますます求められています。

私たちは、この3つの要素を意識したデジタル化で具体的に提供できる価値を、(1)安全・健康・人を守る「『ニューノーマル』への対応」、(2)遠隔化や自動化・知能化を実現する「デジタルテクノロジーの実装加速」、そして(3)「レジリエントな事業オペレーション」の支援という大きな軸で整理しました。この軸を基に、ニューノーマルな時代を切り開き、社会貢献につながるソリューションの中から、いくつかをご紹介します(図1)。


安全・健康・人を守る「『ニューノーマル』への対応」


非接触あるいは非対面によるコミュニケーションの実現や、人々の健康の支援、企業が社員の健康や安全をモニタリングしてソーシャルディスタンス(人と人との物理的な距離)の確保を行うソリューションです。

最初にご紹介するのは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、多くの企業で新入社員への集合研修などが困難になったことを受けて、期間限定で無償提供したeラーニングクラウドサービス「Generalist/LM」です。新人教育や若手社員を育成するための教育コンテンツに加え、テレワークの効率化やニューノーマルに役立つ旬なコンテンツも配信。コンテンツに関わる提供者、講師、受講者のみなさまに、より便利さを実感してもらうための取り組みを、今、新たに進めています。

次に2020年11月にリリースする、働くみんなの「人生を豊かにするサービス」を提供する従業員版Generalistポータル「kitekite」をご紹介します。このkitekiteは、提供を始めて20年以上の歴史を持つ人財管理ソリューション「Generalist」の実績とカスタマーベースに基づいて、当社が発想し、実現したものです。
Generalistは現在、1000社以上のお客さまに採用いただいており、そこで働く社員の方々に日々活用されています。これは、私たちが数百万人を超える方々とデジタルの接点を持っているということです。そこで、その方々に、ぜひ新しい価値を提供したい。そんな思いから生まれました。
kitekiteにアクセスすると、例えば「介護ヘルパーさんに来てもらいたい」「デリバリーを頼みたい」など、社員一人ひとりに合った便利なサービスを、必要なときに利用できるようになります。会社の人事システムとの連携により、事前に必要な各種情報を登録する手間を軽減できる機能を備えていることがポイントです。当社では、個々のサービスを提供する仲間(サービス提供企業)を随時増やしていくことで、社員の方々にさらなる便利さを届け、加えて社会貢献の幅を広げていくことを目指しています。

また、人びとの健康にフォーカスした、「疾病リスク予測AIサービス」。このサービスは、個人ごとに、現時点の健康診断のデータから、6年先までの生活習慣病の発症リスクをAIで予測します。新型コロナウイルス感染症が重症化するリスク因子のひとつに生活習慣病が挙げられている今、健康の改善に向けて日々の行動を変える動機付けになることを期待しています。

最後に、製造現場の作業を見える化し、そこで働く社員(作業員)の安全と健康を支援するソリューションです。コロナ禍においては、街中と同様に、製造現場においてもソーシャルディスタンスの確保が求められています。これを解決するために、作業エリアから離れた場所にいる管理者が、作業員全員の位置を確認しながら各作業を支援できる「Meister Apps 現場作業見える化パッケージ」の活用が有効です。作業員は、ウェアラブルデバイスやスマートフォンなどを装着するだけ。また仮に、新型コロナウイルスの感染者が出たとしても、行動記録からほかの作業員との接触の有無や、接触していた時間を確認できます(図2)。

このMeister Appsは、大手の自動車部品メーカー様と共に開発しました。製造現場には、新人からベテランまで、年齢や熟練度が異なるさまざまな作業員の方がいらっしゃいます。当然、作業効率は人によりバラツキが出るため、そのバラツキをなくしつつ、作業効率を上げたいという思いを受けて開発したものです。つまり、Meister Appsを活用することで、ソーシャルディスタンスの確保だけでなく、作業効率の改善も可能となります。現在では、共に開発した自動車部品メーカー様のサプライヤーでも活用され、さらにその評判を聞いた多くの企業からも引き合いをいただいているソリューションです。


遠隔化や自動化・知能化を実現する「デジタルテクノロジーの実装加速」


ここで、まずご紹介するのは、遠隔からの設備の監視と管理を実現するソリューションです。これは、設備メーカー側で行われるのと同時に、設備を使う工場やプラントなどのユーザー企業側でも行われる作業です。当社は、それぞれでの監視や管理に向けたアセットIoTクラウドサービスとして、「Meister RemoteX」「Meister OperateX」を提供しています。これらの活用により、設備の保守サービス員が現地へ移動する回数や現場で作業する時間が削減できることから、コロナ禍における感染リスクの低減にも役立ちます。これらのソリューションをより便利に活用するためのデータ基盤の提供も新たに始めました。

また、自動車の開発をクラウド上で行う、分散・連成シミュレーションプラットフォーム「VenetDCP」。これまで、各社が開発したソフトウェアを持ち寄り、試作車で行っていた車両全体の動作検証を、クラウド上でできるようにしたものです。ニューノーマルな時代にもフィットした、新たな自動車開発環境の形とも言えます。各社にとって企業秘密である設計情報などを守りつつ、リモートで共同のデジタル試作車をつくることが可能になる、自動車開発の効率化を実現した画期的なソリューションです。

もうひとつ、2020年8月に、西村大臣率いる新型コロナウイルス感染症対策テックチームの会合で発表した活動をご紹介します。発表したのは、さまざまな企業から構成される「ifLinkオープンコミュニティ」での共創の取り組みと、その活動の中で作りあげた、密集や密閉および発熱者の検知や通知を行うソリューションです。ifLinkとは、誰でもカンタンに、さまざまなIoT機器やWebサービスを自由に組み合わせて便利な仕組みをつくりあげることができるIoTプラットフォーム。このifLinkを使って、コミュニティに集った仲間と時勢に応じた活動を続けています。

  • ifLinkおよびifLinkオープンコミュニティの活動は、Vol.34の2つ目の記事で詳しくご紹介しています。

ここからは、東芝のAI技術により自動化や知能化を実現したソリューションです。まずは「RECAIUSコンタクトセンタープラス」。コロナ禍で運営が難しくなる中、必要とされるお客さまを思い、座席を間引きしたり、シフトを組み直したりして運営を継続されているコンタクトセンターを支援します。例えば、オペレーターが応対している内容をリアルタイムにテキスト化して見える化する、応対に関連するFAQをAIが自動的に検索して表示する、問い合わせの傾向を可視化するなど、各種機能の知能化や自動化で、急増するオンラインでの問い合わせ対応の効率化を支援するソリューションです。

  • FAQ:Frequently Asked Questions
  • RECAIUS コンタクトセンタープラスは、Vol.30の2つ目の記事で詳しくご紹介しています。

そのほか、人海戦術に頼っていた検査工程において、人が集まることが難しいコロナ禍での検査業務を自動化により支援する「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ」。これは、良品の画像データのみの学習で、良品なのか不良品なのかを判定できる東芝のAI技術で実現しました。効率良く、短時間で判定の精度を上げることが可能です。


変化する時代を生きる 「レジリエンス(強靭化)」で事業を支援


コロナ禍において最も深刻な問題となったのは、サプライチェーンの寸断でした。この問題に対応する戦略調達ソリューション「Meister SRM」に触れておきたいと思います。これは、東芝グループの調達改革に基づき始まったサプライチェーンの強靱(きょうじん)化を支援するソリューションで、特にここ10年ほどの間に発生した自然災害の際に東芝グループで活用し改善を続けてきました。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、自社商品の生産への影響調査やその後の対応で活用されたお客さまからも、評価をいただいています。

当社では、「やさしく、あたたかなデジタルで社会を豊かにする。」をビジョンに掲げ、デジタル技術を活用した、さまざまな新しいサービスやソリューションを開発しています。

ニューノーマルな時代を切り開くこれらのソリューションを通して、新型コロナウイルス感染症の対策への寄与、さらには企業としてESGの強化に努め、東芝グループは、サイバーフィジカルシステム(CPS)テクノロジーによって、持続可能な社会づくりや企業を支えていきます。

  •  ESG:Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取ってつくられた言葉
  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2020年11月現在のものです。

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