日本の量子産業が世界をリードする
~量子未来産業ビジョンの実現に向けた取り組みの最前線と日本の勝ち筋~

イノベーション、経営

2024年4月26日

「データのチカラで 世界をよりよい場所に」をテーマに、2023年11月28日と29日にオンライン開催された「TOSHIBA OPEN SESSIONS」。「日本の量子産業が世界をリードする~量子未来社会ビジョンの実現に向けた取り組みの最前線~」と題したセッションでは、日本が誇る量子セキュリティと量子・AI融合計算技術の産業利用推進、日本の産業力強化のポイントについて話を伺った。今回はこの内容を紹介する。

産業技術総合研究所が設立した新組織G-QuAT

岡田:
日本政府は「量子未来社会ビジョン」を2022年4月に策定し、本ビジョンに向けた「量子未来産業創出戦略」を2023年4月に公式発表しました。本日は量子技術の産業化、社会実装に向けた課題と解決策についてお話を伺えればと思います。では、最初に登壇者のお二人から自己紹介をお願いします。

堀部:
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)の堀部です。2023年6月まで経済産業省や内閣府で、量子戦略の策定などに携わってきました。そのような背景もあり、量子の社会実装・産業化の支援のために、産総研の拠点機能の強化を目的に量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)を設立しました。

藤原:
国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)の藤原です。私は以前は天文衛星用デバイスを開発していましたが、種々の変遷を経て現在は量子技術を研究しています。NICTは、量子技術イノベーション拠点のうち量子セキュリティ拠点に指定され、量子暗号技術を中心に研究を進めています。

岡田:
私からも自己紹介をさせて下さい。量子関連の産業とビジネス創出を目的に2021年に設立され2022年に一般社団法人化された、量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)の実行委員長を務めています。当初Q-STARは24の会員企業/団体で始まりましたが、現在は87会員まで増えました。その約半数が量子技術のユーザー企業であり、会員間で量子をどのように使っていくかについて議論を進めています。冒頭で触れた量子未来社会ビジョンや量子未来産業創出戦略の策定にも参加しています。

Q-STARの活動には、政策提言、標準化、国内外の団体との連携、人材育成などがあります。テストベッドや研究開発での連携を通じて量子技術の社会実装に向けて取り組み、どのような領域で量子技術を使うとどのような価値が生まれるのかというユースケースについても議論しています。

本日は量子技術の産業化に向けた課題や、社会実装のために行うべきことなどを中心にお話を伺いたいと思います。産総研もNICTも量子技術イノベーション拠点となっていますので、その拠点としての活動状況も含めてご説明をお願いします。

堀部:
産総研では、量子デバイスの開発拠点は設置されていましたが、量子未来社会ビジョン及び量子未来産業創出戦略により量子技術の社会実装の重要性が増してきましたので、新組織としてG-QuATを立ち上げました。量子デバイスの開発のみならず、実際に使える1万~10万qubit(量子ビット)レベルのシステム開発環境の立ち上げを推進しています。量子コンピュータだけでは多様な問題を解くことは難しいため、既存計算機と組み合わせた計算基盤を整備し、それを活用したソリューション開発も進めています。

産総研では、エネルギーやエレクトロニクス、バイオなど、技術的切り口で分けた7領域でコンピュータを使ったDXを推進しており、産業創出や社会実装に向けて各産業セクターの企業と連携しています。G-QuATのソリューション開発に関しては、産総研のこうした土壌に新しい計算機を使っていくという観点で、どの組織にも属さず独立した形で量子やAIによる計算の基盤を整備していこうとしています。例えばエネルギーやバイオの領域では、DXに量子やAIを組み込んだQX(Quantum Transformation)を進めることで、いち早く社会実装ができると考えています。

G-QuATは、産総研の全ての領域、更にはコラボレーターである企業、大学や研究機関と連携していく必要があり、CTO 兼 副理事長の村山宣光がG-QuATセンター長としてその推進役を担っています。クラウド基盤、アプリケーション開発からデバイス開発までの新たなシステムや、更にはコンポーネントテストベッドやサプライチェーンの構築まで、幅広い領域をカバーする取り組みを行うため、産総研の7領域から研究者が集結し、約120名体制でスタートしました。

グローバルな取り組みをレビューする国際アドバイザリーボードも設置しています。委員長には慶應義塾長の伊藤公平先生に着任いただきました。産業化を意識してQ-STARの島田太郎代表理事、米国のQED-C(Quantum Economic Development Consortium)やカナダのQIC(Quantum Industry Canada)、欧州のQuIC(European Quantum Industry Consortium)のエグゼクティブ・デイレクターにもアドバイザリーに就任いただいています。そういった形でグローバルな展開状況もレビューいただきつつ、新たな情報も取り入れ、更に連携先としても、アプリケーションからデバイス開発、計算基盤の開発など全ての分野で、米国や欧州を中心とした国々との連携も推進しています。

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター
副センター長 堀部 雅弘 氏

岡田:
新しい量子・AI融合研究棟についても紹介していただけますか。

堀部:
量子・AI融合研究棟は建設中ですが、その中で特に注目していただきたいのは、本部棟1階に設置するAIと量子の両方で使える新しい計算資源である、量子・AIクラウド「ABCI-Q」です。隣接する建屋にも量子コンピュータを置き、インターネットを介さずに超高速インターフェースで接続して、古典・量子ハイブリッド計算基盤を構築します。

ただし、これはあくまで計算基盤であり、アプリケーション開発ツールに過ぎません。最も重視しているのは本部棟の3階と2階の部分です。3階は多様な産総研の研究者、2階は連携企業や大学の方々が滞在したり、オフィスを構えたりするスペースです。間に吹き抜けのインキュベーションスペースもあり、研究者や企業、ベンチャーに加え、ベンチャーキャピタルも誘致してスタートアップを創出したいと考えています。

岡田:
建物は2024年度中に完成するとのことなので、期待が高まりますね。

堀部:
また、今の量子コンピュータにおいて、日本の企業、特に中小企業の部品が多く使われており、日本の技術力は非常に高い関心を持たれています。本拠点が、様々な量子コンピュータのメーカー企業や日本のサプライヤー企業の結節点になることを目指していきたいと考えており、既に多くの要望や参画希望もいただいています。


世界に先駆けてQKDネットワークを構築し社会実装を進めるNICTの挑戦

岡田:
藤原様からも、NICTの活動状況についてご説明をお願いします。

国立研究開発法人 情報通信研究機構 量子ICT協創センター
研究センター長 藤原 幹生 氏

藤原:
NICTでは、盗聴の危険がない量子暗号を開発しています。量子コンピュータができると、現在インターネットで使われている暗号が危殆化する可能性があります。例えば、現在ゲノムデータを遠隔地に送っていますが、それが仮に漏れてしまうと、本人のみならず、将来その遺伝子情報を持つ子孫にまで悪影響を及ぼす危険があります。そのため、今の時点で情報を守る必要があります。

そこで我々は量子鍵配送(QKD:Quantum Key Distribution)技術を開発しました。光子の1粒1粒に乱数データ(鍵)を載せて遠隔地に送れば、情報理論的には安全に乱数データを共有することができます。これが実現できた後は、将来どのような計算機が登場しても安全な通信が可能になります。なぜ安全なのかについて簡単にご説明します。

もし誰かが盗聴しようとしても、QKDは光子1粒1粒に鍵を載せているため、それを盗むだけであれば盗聴として成立しません。なぜなら、正規の送信者と受信者が共有できる鍵の情報を窃取しなければ解読不可能だからです。同じ送信結果になるような状態の光子を再送するという攻撃方法が知られていますが、そのようなことが行われると量子力学では必ずエラーが発生します。正規の送受信者以外がその量子状態を測定しようとすると、量子状態が確率的に変わり、それをエラー率としてモニタリングできるため、盗聴行為が露見します。

QKDは20年程前には実現が難しい技術と考えられていましたが、東芝が製品化し現在ではすぐに使えるものになりました。NICTでは、これを一対だけで利用するのではなく、ネットワーク化することでサービスエリアやユーザーの拡大を図っています。2010年に東芝のほか日本の産学機関及び一部海外機関のQKD装置を光ファイバーに実装したQKDネットワーク「Tokyo QKD Network」を世界に先駆けて構築し、様々なユーザー企業に使っていただきながら実証を進めています。小規模ながらも、世界で最も長い期間の運用実績を持つQKDネットワークで、鍵管理技術などのノウハウを蓄積しています。これにより日本は世界で初めて医療やゲノムなどの分野にリーチできるようになりました。異なるメーカーのQKD装置の相互接続のために必要となる標準化技術についてもリードしています。そういう意味で、日本はQKD技術に関してリーダーシップを取っていると言っても過言ではありません。

ただ、光ファイバーではどうしてもロスが生じるため、伝送距離は100km程度が限界です。それを日本全国に広げ、更に海外とも安全な鍵を共有するため、QKD装置を衛星に載せるアイデアがあります。QKDそのものではありませんが、物理レイヤ暗号装置をISS(国際宇宙ステーション)に搭載し、ISSと地上間で安全な鍵共有を行う実験を進めています。地上から宇宙にQKDネットワークを広げることで、日本全国やグローバルに安全に鍵を配ることが可能となり、どの通信キャリアでも利用できるようになります。途中の通信路でタッピングされてもデータは漏れませんので、民間の通信インフラを安心して使えるようになるのです。

岡田:
社会実装して使いながら、課題を見つけ、どんどん進化させていく。こういった動きが進んでいることがよく理解できました。


ユーザー主体での量子技術の実装の取り組みと、中小製造業の高度な技術力が日本の強みに

岡田:
ここから日本の産業力をどう強化していくかという話に入ります。Q-STARには部会活動があり、量子技術で社会課題をどう解決すべきかを議論してきました。各種ユースケースを検討し、その実装も目前に来ています。特に量子アニーリングは、日本が世界に先駆けて商用化し、東芝や各社がサービスを開始しています。Q-STARでは、量子技術を使っていく上で重要となるのは、いろいろなテーマで共通して使えるプラットフォームを作ることだと議論しています。このような議論は、国内外の様々な団体や企業との話し合いから生まれてきたものです。

グローバルで産業化や社会実装に向けて取り組む中で、果たして日本としての強みはどこにあり、何をビジネスに繋げるべきか示唆をいただければと思います。堀部様、いかがでしょうか。

堀部:
経済産業省の経済産業政策新機軸部会で、日本と海外の強みについて分析を行っています。Q-STARではユーザーが参画した形で様々なユースケースが検討され、それを実証していくとのことでしたが、日本の強い材料や製造技術、物流サービスなどのエンドユーザー産業が持つ課題をいち早くDXやQXに取り込んでいく枠組みが産業、社会全体に広がっていることが、日本の強みだと考えます。

海外のアドバイザリーボードの方々と話をしていると、ボトムアップで量子技術をどう使っていくかという視点で量子産業にアプローチされていますが、最終的にエンドユーザーの課題にリーチしきれない部分もあります。ボトムアップのアプローチは技術開発の面では重要になってきますが、目指すゴールを設定するためには、ユーザーが主体になって量子技術を理解し、既存のDXの不足部分を量子技術で補完していくような取り組みにする必要があります。更にソリューションを創出する際に、現行より価値を生む点を明確にしておかないといけません。実装したものの使われないということになれば、量子技術に対する期待値を下げてしまうからです。Q-STARの部会で議論されているユーザーの課題と、経済・社会的な価値は、日本の強みになるところだと思います。

もう1つの強みは、日本の製造業、特に中小企業の高い技術力であり、センシングシステムや暗号通信装置など、量子の特殊部品を作れる土壌があることです。ただ、サプライヤーから話を聞くと、量子コンピュータのメーカーがどのような性能のものをいつ欲しいのかという情報が入っていないようです。逆にメーカー側も、サプライヤーに「これが欲しい」とアプローチする際、「いつどれぐらいの量が必要なのか」と聞かれても、市場が形成されていない段階では予測が難しいことが課題になっています。両者とも市場に対する期待感や興味はあるものの、課題を抱えているのが実情です。

我々もロードマップを示し、性能やコンポーネント、技術進化の絵図に加え、全体を見渡せる俯瞰図も作らなければならないと感じています。Q-STARでも情報の整理が進んでいますが、サプライチェーンの分析は特に重要で、その情報を元に開発したものが十分に性能を発揮できているかを評価する必要もあります。超伝導の量子コンピュータは典型例ですが、絶対零度近くで動かすため、そのような環境を各社単独で持つことは困難です。G-QuATではコンポーネントを評価するテストベッドも用意していますし、もともと産総研にはサービス部隊があり、品質管理で重要なデータの提供や出荷前の性能評価も行えます。このように産業全体を盛り上げるためには、品質の管理や保証の取り組みも求められ、ここはパブリックセクターの我々が進めるべきところです。

このような強みがある一方で、日本は、いち早く製品化、サービス化する面で弱みがあります。特に米国企業は、システム化する技術やそれを運用する技術に長けていると思います。先んじて量子コンピュータのサービス提供を行っている米国企業に対して運用の経験値で巻き返すのは難しいのですが、当面は米国ときちんと連携し彼らが求める部品やサプライヤーを繋げ、提供される計算基盤を活用して日本が強みを発揮できるソリューションを開発して、3つの強みをきちんと組み合わせていくことが重要になってくると考えています。

岡田:
部品サプライヤー側から見ると、誰にニーズがあるのか分からず、量子コンピュータのメーカー側から見ると、どのような部品があるのかが分からない。コミュニケーションをいかに活性化するかという点もポイントになりそうです。G-QuATやQ-STARがこういった活動のハブになれば嬉しいですね。


量子と古典のハイブリッド技術による日本独自の量子セキュアクラウドで、競争力を強化

岡田:
藤原様からも、日本の強みや競争力についてご意見を伺えますか。

藤原:
量子鍵配送は量子状態を利用しますが、量子状態は非常に壊れやすく、量子暗号だけでは通信がなかなか成立しないので、古典技術と組み合わせることで、量子ならではの特長を大幅に広げたいと考えています。具体例としては、秘密分散という歴史の長いプロトコルを量子鍵配送ネットワークに載せることによって、安全にデータを伝送するだけでなく、長期保管できる技術開発を行いました。

我々はこれを「量子セキュアクラウド」と呼んでいます。将来にわたり機密漏洩と不正改ざんを防ぐことができ、一部のサーバが棄損しても原本データを復元できます。また、データが安全に分散保管されているので、複数の参加者で安全なデータ処理と共有を可能にする分散コンピューティングを行い、統計情報のみ取得することが可能になります。例えば、分散保管された個人情報などを全て復元するのではなく、統計情報だけを取得できるようになります。このような量子と古典のハイブリッド技術による量子セキュアクラウドは、日本独自のものです。これを使って医療の電子カルテやゲノムデータの安全な二次利用を実現しています。

将来の日本の強みは情報にあると考えており、その情報を日本の中に留め、日本のユーザーに還元することが重要です。NICTの量子セキュアクラウドを民間企業がセキュアデータセンターとして使っていただければ、日本人のゲノムデータを海外のクラウドサービスに預けるのではなく、国内にデータを預けて安心して創薬に役立てられます。こういったユースケースの開拓でも、日本は世界に先んじています。

我々自身が持っているデータを集めれば、非常に成長戦略に資するようなものになります。そのような貴重なデータを国内で安心して保管し、二次利用できるようにすることに量子技術は必ず役立つと思っています。量子技術をいきなり一般家庭に導入することは難しいでしょうが、我々の電子カルテを安心して預けられるようになり、パーソナルな創薬ができるような時代が到来すると嬉しいです。

また、このようなサービスを国内だけでなく海外にも展開するためには、衛星と組み合わせることも必要になってきます。衛星回線で日本国内にこのようなサービスを引き受けられるプラットフォームを構築することが、日本の競争力につながるでしょう。


ハイブリッド計算基盤でのソリューション開発、利用循環のエコシステムづくりが成功のカギに

岡田:
先ほど古典と量子のハイブリッドという話がありました。これは計算機についてもよく言われている話で、今は量子技術だけで解決できることは少ないので、いかに現在の技術と組み合わせていくかが社会実装のハードルを下げるためにも重要だと考えています。このハイブリッド環境の重要性と日本の強みを踏まえて、何かアドバイスはありますか。

堀部:
ユーザーにおいては古典型を用いたインフォマティクスは非常に盛んですし、そのような方々が求める計算基盤を作ることも大切ですが、国内メーカーだけで作ろうとすると限界があると思います。日本に強みがある古典ベースのGPUで動くイジングマシンなどをフル活用し、本格的な量子コンピュータをハイブリッド化して計算基盤を強化していけば、新しいソリューションが生まれる土壌になるでしょう。その部分は、グローバル連携を進められる協調領域ではないかと考えています。

また、量子コンピュータも超伝導方式だけにこだわらずに、イオントラップや中性原子などの方式もありますから、その特徴を見極めつつ、どのようなソリューションを開発するにはどの計算基盤を使うのがよいかを見出せればよいと思いますし、ここが今後の競争領域になると感じています。そのために我々は計算基盤をしっかり整備していきます。

岡田:
イジングマシンは既に日本で商用化されており、アプリケーションやユースケースも多くあるため、将来の強みになるのではないかと考えています。イジングマシンも含めいろいろな方式の量子コンピュータの利用が可能となり、かつ古典と量子のハイブリッドで使える環境がG-QuATの新建屋にできることを大いに期待しています。

堀部:
量子コンピュータを本格的に使えるようにするまでは長い時間がかかると思いますが、数年後の大きな市場を盛り上げていく取り組みも重要です。そのためには、短期、中期、長期で開発する技術は変わっていくと思いますが、ユーザーから見ると、時代とともに使えるリソースが豊富になり、より高度なソリューションを開発できる環境ができるようになります。量子技術開発の視点では、異なる技術を、異なるロードマップで、異なる時間軸で開発し、それらを一体で考えた計算基盤の構築を進めていくことも重要ですね。

まずイジングマシンで市場を開拓し、ユーザーに参画してもらって利益を出し、それが量子アニーリングマシンなどの中期的な技術の開発に繋がって次の市場を創出し、その結果としてFTQC(Fault Tolerant Quantum Computer:誤り耐性型量子コンピュータ)などの技術が開発され、その利用環境が登場する。そのような循環を実現できるエコシステムを形成することが勝ち筋ではないかと思います。


量子技術の社会実装を拡げ、データのチカラで世界をよりよい場所に

岡田:
先ほど藤原様から説明があったTokyo QKD Networkの新しいメトロネットワークも、間もなく完成すると伺っています。利用の観点では、その上でいかにアプリケーションを使っていくかという点も非常に重要になりそうです。活用に向けて最後にメッセージをいただけますか。

藤原:
令和3年度の補正事業によって、Tokyo QKD Networkは以前の約2倍の規模に拡張します。金融機関などにも賛同いただき、複数の企業間で使えるように進めています。また、QKDネットワークに量子アニーラが組み込まれました。そこから出力されるデータが価値の源泉になり、それらのデータを安心して保管・伝送するのが、量子セキュアクラウドです。そこで量子・古典コンピュータから出力される非常に高い価値のあるデータを受け取ることによって、社会に貢献していきたいと考えています。

岡田:
今回のTOSHIBA OPEN SESSIONSのテーマは「データのチカラで 世界をよりよい場所に」です。データがたくさん溜まった時に解決できるのも、それをセキュアに送るのも量子技術の重要な役割です。まだ量子技術は実装されてない領域も多いですが、社会の様々なシーンで使えるため、今後更に新しい世界が広がるでしょう。お二人の話を伺って、ユースケースが1つずつ蓄積され、社会実装に繋げていくことの重要性を改めて実感しました。日本ではTokyo QKD NetworkやG-QuATなど、皆さまが使える環境が着々と準備されています。これらをQ-STARも使い倒していきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。

一般社団法人量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)実行委員長
株式会社 東芝 執行役上席常務CDO
東芝デジタルソリューションズ株式会社 取締役社長
岡田 俊輔

  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2023年11月現在のものです。

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