国立研究開発法人情報通信研究機構からTokyo QKD Network向けに
QKDシステムと量子インスパイアード最適化ソリューション「SQBM+™」を受注

2022年8月31日(水)

東芝デジタルソリューションズ株式会社

 東芝デジタルソリューションズ株式会社(取締役社長:岡田 俊輔、以下 当社)は、国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長:徳田 英幸、以下NICT)が量子鍵配送(Quantum Key Distribution、以下 QKD)に関する研究のために運用する量子鍵配送ネットワーク(以下「Tokyo QKD Network」)向けに調達する「分散管理型量子鍵配送装置」と「量子・古典ハイブリッド型情報処理装置」を受注し、当社のQKDシステムと量子インスパイアード最適化ソリューション「SQBM+™」注1を納入します。

 NICTではかねてから、「理論上いかなる計算能力を持つ第三者(盗聴者)でも解読できないことが物理法則により保証されている鍵(乱数)共有方式」であるQKDと、QKDの鍵を利用した情報理論的安全な秘匿化を可能とする暗号(量子暗号と定義)の社会実装に向けて研究を行うとともに、複数のQKD装置から構成される試験用量子鍵配送ネットワーク環境である、Tokyo QKD Networkを運用してきました。このネットワークは2010年より運用を開始した世界で最も長い期間の運用実績注2を持つQKDネットワークで、これまで企業や大学と協力してさまざまな実験を行うことで、多くの技術が蓄積されてきました。

 政府が、量子技術イノベーション戦略注3(令和2年1月策定)及び量子未来社会ビジョン注4(令和4年4月策定)に基づき、産学官一体での量子技術の取り組みを推進する中、将来の量子コンピュータ時代の到来に向けてQKD及び量子暗号の社会実装の加速が求められていることから、NICTはTokyo QKD Networkを拡張し、官民を問わず多様なユーザーの実証を可能とするテスト環境の構築を進めています。今後、NICTでは量子・古典ハイブリッド型情報処理装置を利用した次世代コンピューティング基盤と、QKD・量子暗号など超長期セキュリティを保証する次世代暗号基盤を融合した量子セキュアクラウド注5の実用化に向け、Tokyo QKD Network環境下で実証研究を推進していく予定です。

 今回、当社のQKDシステムを導入することで、多拠点間通信や複数のQKDネットワークの接続といった実用化に向けたネットワーク構築が可能になります。また、医療、新素材、製造、金融分野など官民のユーザーのさまざまな課題に対して、Tokyo QKD Network環境下の高い秘匿性を確保した状態で、「SQBM+™」を活用いただき、量子セキュアクラウドの実用化に向けた取り組みを支援します。

 東芝グループは、これまで20年以上にわたり量子関連技術の研究開発に取り組んできました。また、Tokyo QKD Network においては、これまでもNICTが展開する共同検証注6や標準化活動注7に参画してきており、さらに英国での世界初のQKD商用メトロネットワークの提供をはじめ、世界トップクラスの成果と実績を積んでまいりました。今後も、国内のQKDネットワークの構築とその応用に取り組み、さらなる量子関連技術の社会実装と新たな産業の創出に貢献していきます。

注1:
東芝における量子コンピュータの研究過程で発明された古典力学に基づく組合せ最適化ソルバーで、社会や産業における複雑で大規模な組み合わせ最適化問題の高精度な近似解(良解)を短時間で得ることを可能とします。
 (参考)
東芝デジタルソリューションズプレスリリース(2021年5月):世界初、金融市場における疑似量子計算機による高速高頻度取引の有効性の共同検証を開始
https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/21/2105-01.html
東芝デジタルソリューションズプレスリリース(2022年6月):量子インスパイアード最適化ソリューション「SQBM+™」を活用し、計算創薬への適用技術を検証
https://www.global.toshiba/jp/company/digitalsolution/news/2022/0627.html

注2:
NICT調べ。

注3:
内閣府に設置された「統合イノベーション戦略推進会議」で2020年1月21日に策定された量⼦技術イノベーションの実現に向けた戦略。
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/ryoushisenryaku.pdf(652KB) (内閣府)

注4:
内閣府に設置された「統合イノベーション戦略推進会議」で2022年4月22日に策定された量子技術により目指すべき未来社会ビジョンとその実現に向けた戦略。
https://www8.cao.go.jp/cstp/ryoshigijutsu/ryoshimirai_220422.pdf(1.84MB) (内閣府)

注5:
量子暗号技術と秘密分散技術、耐量子計算機暗号技術等を融合し、データの安全な流通/保管/利活用を可能とするクラウド技術。NICTでは、量子セキュアクラウド技術の確立により、改ざん・解読が不可能な高いセキュリティ性を担保するだけでなく、例えば、医療、新素材、製造、金融分野でなど秘匿性の高いデータの収集、分析、処理、利用を可能とする環境の構築を目指している。

注6:
東芝プレスリリース(2020年12月):金融分野のサイバーセキュリティ強化に向けた量子暗号技術活用の共同検証を開始
https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/20/2012-04.html
東芝プレスリリース(2021年8月):量子暗号通信技術と秘密分散技術を活用しゲノム解析データの分散保管の実証に成功
https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/21/2108-02.html

注7:
東芝プレスリリース(2019年7月):国際標準化機関ITU-Tで初の量子鍵配送ネットワークに係る勧告が成立
https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/19/1907-01.html

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    発表日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

■ 東芝の量子暗号通信
 https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/security-ict/qkd.html

■ 量子インスパイアード最適化ソリューション 「SQBM+™」
 https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/ai-iot/sbm.html