地熱発電所のトラブル予兆診断技術の実証試験をインドネシアで開始

― IoT・AI技術を適用し、発電所のトラブル発生率20%低減を目指す ―

ニュースリリース

再生可能エネルギー

研究開発・技術

2019年10月23日

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
東芝エネルギーシステムズ株式会社

 NEDOの地熱エネルギーの高度利用化に向けた技術開発事業において、インドネシアで地熱発電所の利用率向上に向けた、IoT・人工知能(AI)技術を適用した地熱発電所のトラブル予兆診断技術の実証実験を開始しました。
本実証試験では、NEDO事業において2018年より東芝エネルギーシステムズ(株)が開発してきた「ビッグデータ解析技術を活用した予兆診断技術」を現地国営地熱発電会社であるPT Geo Dipa Energi (Persero)(GDE社)のパトハ地熱発電所の発電設備に搭載し、トラブル予兆の検知が可能かどうかを評価するとともに、技術の導入による効果検証を行います。
 本実証試験を通じて地熱発電所のトラブル発生率の20%低減を目指し、発電所の停止期間の短縮を図ります。設備の利用率が高まり発電量増加と発電コスト低減が可能となれば、今後の地熱発電の導入拡大への貢献が期待できます。

図1 予兆診断のイメージ
図1 予兆診断のイメージ

1.概要

 2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」において、「脱炭素化」への挑戦などが掲げられ、これらに対する取り組みとして2030年のエネルギーミックスの確実な実現を目指すこと、再生可能エネルギーを主力電源とするため低コスト化などを図ることなどが記載されています。世界第3位の地熱資源ポテンシャルを有する日本では、地熱発電は、安定した出力が得られることから、ベースロード電源※1として大きな期待がかかっており、エネルギーミックスの中で、2030年までに地熱発電容量で最大約155万kWの導入目標が立てられています。
 このような背景の下、日本では新たな大型地熱発電所の運転開始など、近年新規の地熱発電所の立地計画が進んでおります。一方で、既設の地熱発電所は、発電設備の老朽化によるトラブルやタービンに付着した地熱蒸気成分の除去作業により停止するなど、暦日利用率※2が60%程度と低い状況で、発電コスト低減のためには、利用率向上が喫緊の課題となっています。そこで、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の地熱エネルギーの高度利用化に向けた技術開発事業において、東芝エネルギーシステムズ株式会社は2018年度よりIoT・人工知能(AI)技術を活用した地熱発電所の利用率向上に向けた技術開発※3を進めてきました。
 今般、本事業で東芝エネルギーシステムズ(株)が開発したビッグデータ解析技術を活用するトラブル予兆診断技術の実証試験をインドネシアの国営地熱発電会社であるPT Geo Dipa Energi (Persero)(GDE社)の協力の下、同社のパトハ地熱発電所※4において実施します。
 本実証試験を通じて運転停止を招くトラブルを事前に予兆・検知可能な技術を更に改良し、地熱発電所におけるトラブル発生率を20%低減し、トラブルによる発電所の停止期間の短縮を目指します。これにより、利用率向上による発電コストの低減を図り、地熱発電の導入拡大につなげます。

図2 パトハ地熱発電所
図2 パトハ地熱発電所

2.予兆診断技術と実証試験の内容

 東芝エネルギーシステムズ(株)が開発したトラブル予兆診断技術は、各種センサーから得られる日々の発電所の運転データをAI手法により解析し、正常な運転時にトラブルの原因となる異常兆候を検出する技術です。
 本実証試験では、地熱発電の導入が盛んなインドネシアで、ビッグデータ解析技術を活用する予兆診断技術を既設の地熱発電所に導入し、当該技術によるトラブル予兆の検知が可能かどうかを評価するとともに、技術導入による効果検証を行います。実証試験期間は、2019年10月から2021年2月までを予定しています。
 具体的には、GDE社のパトハ地熱発電所の発電設備に東芝エネルギーシステムズ(株)が開発したトラブル予兆診断システムを設置して、発電所の運転データをリアルタイムで解析します。解析結果はICT(Information and Communication Technology)を活用してGDE社の本社と東芝エネルギーシステムズ(株)の各拠点の技術者間で共有化し、トラブル回避のための対応検討などに利用します。こうした取り組みを通じて、システム全体でのトラブル予兆診断技術の有効性を検証します。

図3 開発したトラブル予兆診断装置(左)
図3 開発したトラブル予兆診断装置(左)
開発した装置をパトハ地熱発電所に設置した様子(右)
開発した装置をパトハ地熱発電所に設置した様子(右)
図4 遠隔地(日本)で技術者がモニタリングする様子(イメージ)
図4 遠隔地(日本)で技術者がモニタリングする様子(イメージ)

※1 ベースロード電源
発電コストが低廉で安定的に発電することができ、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源です。

※2 暦日利用率
対象とする発電設備を仮に100%の出力で一定期間発電した時に得られる電力量に対する実際に発電した電力量の割合。

※3 技術開発
事業名:地熱発電技術研究開発/地熱エネルギーの高度利用化に係る技術開発/地熱発電所の利用率向上に関する研究
事業期間:2018年度から2020年度(予定)

※4 パトハ(Patuha)地熱発電所
インドネシアの国営地熱発電会社であるGDE社が運転管理する地熱発電所。2014年に運転を開始し、定格出力は6万kW。


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