離れた生産施設間で、機密データを安全に転送

東芝はBTと提携し、英国における世界をリードする複合研究開発施設であるNational Composites Centre(NCC)と、新しいデジタルエンジニアリング能力を開拓する非営利研究組織であるモデリング&シミュレーションセンター(CFMS)の間で、英国初となる量子暗号通信ネットワークの産業分野への展開を成功裏に行いました。

英国初、量子暗号通信ネットワークの産業分野への適用

このネットワークは、量子鍵配送(QKD)を使用して、セキュリティが非常に重要な施設間のデータトラフィックを保護する方法を示しています。

このテクノロジーソリューションは、これまでポータブルストレージデバイスに機密データを入れ、ノースブリストルのエマーソンズグリーンとフィルトンにあるNCCサイトとCFMSサイトの間を人が物理的に搬送するという「マニュアル」アプローチに代わるものとして使用され、搬送時間を節約しつつ、重要なデータのセキュリティを強化します。データを物理的に搬送する代わりに、7kmを超える光ファイバーケーブルを介して高速で転送されるようになり、同時に暗号鍵も単一の「エンコードされた」光子のストリームに載り送信されます。

革新的な多重化テクノロジーにより、データと量子鍵を同じ光ファイバーで送信できるため、量子鍵配送のための専用光ファイバーインフラが不要になりコストを低減出来ます。

東芝のQKDシステムは、英国標準のOpenreach光ファイバー網を使用して、1秒あたり数千の量子鍵の配送を可能にします。その革新的な多重化互換性により、データと量子鍵を同じ光ファイバーで送信できるため、鍵配送のための高価な専用光ファイバーインフラが不要になります。今回の最初の展開は7kmの範囲をカバーしますが、東芝の現在のシステムでは最大120kmの範囲に拡張でき、主要な大都市圏内での安全なデータ送信を可能にします。

また、東芝の動作安定化技術の恩恵もあります。東芝のQKDシステムは、ユーザーに手間を掛けさせることなく、困難な動作条件下でも量子鍵を継続的に配送できます。環境温度によって引き起こされるファイバー長の変化に対応するためのシステム再調整の必要性はありません。

英国が量子技術に対応した経済社会に移行するにあたり重要なマイルストーン

英国で、そして世界で、企業は、施設や資産の価値を最大化させるために、デジタルトランスフォーメーションへ優先的に投資しています。このデジタルトランスフォーメーションが急速に発展し、設計と生産のサプライチェーンがよりスマートになり、より広く分散されるようになるにつれて、サイト間のデータ転送を保護することが、機密性の高い設計および製品データを保護するために重要になります。

QKDは、分散型サプライチェーンにおけるより高いレベルの協業型アクセスを可能にし、安全なデータの通信と共有が重要なIIoT(Industrial Internet of Things)の潜在力を引き出します。

QKDを使用しデータを安全に共有することは、ビジネスにとって考慮すべき不可欠なこと

NCCのデジタル責任者でDETIのディレクターであるMarc Funnell氏は、次のように述べています。「BTおよび東芝と協力して、この先駆的な取り組みに参加できたことをうれしく思います。ウェストオブイングランド コンバインドオーソリティ(WECA)の戦略的プログラムであるデジタルエンジニアリングテクノロジー&イノベーション(DETI)の一環として、量子暗号通信は、工場の分散型オフサイト制御の可能性を実証するものです。5G-Encodeとリンクすることで、NCCの5G産業用テストベッドへのアクセスが提供され、英国の製造業界を前進させるために必要なセキュリティ、信頼性、接続性が示されます。」

CFMSのエンジニアリングコンピューティングサービスの責任者であるNathan Harper氏は、次のように述べています。「より多くの企業がさまざまな方法でデジタルテクノロジーを採用するにつれて、データの送信を保護することがより重要になります。CFMSはデジタルエンジニアリングの活用とAIの導入に先駆的に取り組んでおり、そこでのデータの安全な送信は不可欠なものです。従って、高度な暗号化技術を使用してデータを共有し、これらのパフォーマンスをパートナーと理解することは、刺激的であり、非常に役立ちます。」

量子コンピューティングは、Brexit後の世界における英国経済の変革において重要な役割を果たし、コネクテッドスマートファクトリーとインダストリー4.0の将来に大きな影響を与える可能性があると期待されています。