大手金融機関の本社とバックオフィス拠点間の通信セキュリティに応用

東芝のQKDシステムは、ウォールストリートの金融市場とニュージャージーのバックオフィス拠点を結ぶQuantum Xchange社の”Phio” QKDネットワークで、その実力を実証しました。

金融機関は、非常に高度なIT要件とデータセキュリティを要求します。金融取引やアプリデータをリアルタイムに処理すると同時に、秘匿性の高い顧客機密情報を保護する必要があります。さらに、ますます厳しくなるコンプライアンスと規制に対応しなければなりません。

金融機関では、構内ネットワーク上でリアルタイム取引処理データ交換を行ったり、広域ネットワークを使ったコア業務やビデオ会議等を行ったりするために、データ処理・リカバリセンターからデータを安全に転送する必要があります。

Quantum Xchange社の極めて安全な耐量子ネットワークは、大手金融機関や資産管理会社で金融取引アルゴリズムや顧客口座等の機密情報を安全に送信するために利用されています。

Quantum Xchange社は、東芝のQKDシステムを使用し、ニューヨークとニュージャージー間を1本の光ファイバー上に量子暗号を載せた非圧縮ライブビデオストリームを送信することができました。東芝のQKD技術を適用することで、今まで困難だったこの2都市を結ぶ商用ネットワーク上での暗号通信を実現し、私たちのQKDシステムがウォールストリート企業の求める転送距離や鍵配送要件を満たすことを証明しました。

東芝のQKDシステムは多重化機能を備えており、データチャネルと量子チャネルを1本の光ファイバーで多重化して使用することができ、実質的にネットワーク容量を2倍に増やすことができます。以前は光ファイバーが2本必要とされていましたが、この機能のおかげで、ハドソン川をまたぎ32kmに渡る光ファイバー(ダークファイバー)1本で量子鍵配送ができるようになりました。容量が2倍になることで、これまでの2倍の鍵配送が可能となり、また顧客が”Phio” QKDネットワークにアクセスするのに必要な光ファイバーの数を大幅に減らすことが可能になります。

東芝は、Oバンドで動作する多重QKDシステムを提供しました。このシステムの特徴は、光子散乱を抑えるラマンノイズ高耐性です。これにより、ユーザーデータと量子暗号鍵配送データをまとめて1本の光ファイバーで送信できるようなりました。

送信機はニュージャージーのデータ・センターに、受信機はニューヨーク・マンハッタンのダウンダウンにあるデータ・センターに配置されました。そして両サイトで1Gbpsクラスの暗号機と標準APIで接続し、この暗号機より暗号化されたユーザーデータをQKDと同じ光ファイバーに送り出しました。

下図は24時間動作時の量子暗号通信性能を示したものです。

鍵配信速度は143kbpsで、誤り率は3.31%となりました。このときQKDシステムは、東芝の標準鍵管理アプリケーションインターフェース(API)を通じて暗号機に量子鍵を提供し、暗号機はそれを使い2拠点間のライブビデオ会議をAES暗号化しました。暗号機はAES暗号をリフレッシュするために毎分新しい量子鍵を取り出すように設定されました。

この構成を一ヶ月稼働させた結果、1本の光ファイバーにユーザーデータと量子鍵配送データを多重化し、高信頼な商用QKDサービスが利用可能であることを実証しました。