コンプライアンス教育はどうすれば成功する?
社内で意識を浸透させるコツとは
今日では社員がコンプライアンス違反をすると、企業にネガティブな印象がつきやすくなっています。特にインターネットやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及が進んだことで、ネガティブな印象は拡散しやすく、人々の記憶から完全に抜けるまでにかなりの時間を要するようになりました。そのような世の中で優良企業として存続していくためには、社員に正しいコンプライアンス意識を持ってもらう必要があります。今回は、どのように社員教育すればコンプライアンスの意識浸透が図れるのか、そのコツをご紹介します。
そもそもコンプライアンスとは?
コンプライアンスという言葉は、従順・遵守など、従うことを意味します。これまでは「法令遵守」と訳されることが多かったのですが、最近では「法令遵守」だけでなく、下記のような内容も含まれるようになってきています。
就業規則、行動規範の順守
企業には就業規則や行動規範が定められています。就業規則には法定労働時間とは違い、「8:30~17:30(休憩1時間を含む実働7時間)」といった企業で定めている勤務時間、賃金支払いの計算方法、費用負担、安全衛生など、さまざまな約束ごとが規定されています。そして、それらを守ることは社員としての務めとなります。
近年は、その企業の社員として望ましい行動規範を守るという意味合いも、コンプライアンスに含まれることが多くなってきました。例えば、環境保全・品質の向上に努めるなど、企業の展開しているサービスによって重視する項目は異なってきますが、企業理念に沿ったものが行動規範として挙げられており、社員一人ひとりの行動もそれに準じることが望まれています。
ハラスメントの防止
セクシャルハラスメント・パワーハラスメント・アルコールハラスメントなどに代表されるさまざまなハラスメントは、「ほかの人が嫌がることをすること」を指します。行動だけではなく言葉もハラスメントとされ、「言われた相手側がどう感じるか」という気持ちが重視されるようになってきました。人権侵害が認識されるようになった現代において、従来の慣習から無意識にハラスメントを行ってしまう社員に対しては、改めてコンプライアンス教育を行う必要があるでしょう。
情報漏えいの防止
企業で使うデジタルデバイスが進化してきたことによって、社員が重要かつ膨大なデータを持ち歩くというシーンが増えてきました。しかし、クライアントの情報を漏えいしてしまうと契約違反となることもあり、訴訟にも発展しかねません。また、情報漏えいによって、企業の信用が急激に低下する可能性も否めません。社員には、以前よりも情報の取り扱いについての意識を高く持ってもらう必要があります。
コンプライアンス意識の浸透には教育が不可欠
近年、コンプライアンスが重視されている背景には、コンプライアンス違反によって企業の受けるダメージが大きいことも影響しているでしょう。さまざまなリスクを回避できるように、社員の意識を合わせておく必要があるのです。世界に向けて個人が気軽に発信できるようになった現代では、たったひとりの社員の小さな所作が引き金となってSNSで炎上したり、企業全体が激しい糾弾を受けたりすることもあります。企業がコンプライアンスを徹底できるかどうかは、社員一人ひとりの意識にかかっています。しかし、社員のこころのなかに、コンプライアンスの元となる倫理観は自動的には育ちません。根気強く適切な教育を行っていくことで、醸成されていくのです。
コンプライアンス教育に適した教育法とは
コンプライアンス意識を浸透させていくには、具体的にどういった教育方法が向いているのでしょうか。研修とeラーニングの2つの方法がありますが、それぞれのメリットをご紹介します。
?研修
- 具体的な事例で日常に落とし込みやすい
具体的な事例を用いた説明によって、「自分が日常的に行っていることはコンプライアンス違反となるのか?」と考えさせることができます。疑ってみてもいなかった自分の行動を振り返る機会を与え、第三者の目線を持たせることが可能でしょう。 - 参加者同士の意識を合わせやすい
研修時間内に参加者同士で話し合う機会を設けることで、参加者同士の意識を合わせることができます。全員が同じ意識を持って行動できるようになれば、「コンプライアンス意識が浸透した職場」に向けて大きく前進できたといえるでしょう。
?eラーニング
- 反復教育ができる
eラーニング最大のメリットとして、反復教育ができる点が挙げられるでしょう。同じ研修を何度も受けることには抵抗を感じる人も、eラーニングであれば繰り返し学習をいとわないものです。また、eラーニングはドリルなどで進み具合を実感しやすく、社員のモチベーションを維持しやすいというメリットもあります。 - コンプライアンス意識の浸透度合いが確認できる
管理者側には、コンプライアンス意識の浸透度合いを容易に測れるのが大きなメリットです。受講している社員それぞれの進捗状況がリアルタイムで把握できるとともに、リマインドメールを送るなどのフォローもたやすく、集計や分析も簡単なため、投資対効果を高く維持することが可能です。
どうなったらゴールといえるかを設定しよう
それでは、「コンプライアンス意識の浸透が実現した」といえるのは、一体どのような状態を指すのかについて考えてみましょう。
新入社員・マネージャー・部長・役員など、役職によって重視すべきことが変わり、年齢によってもコンプライアンス意識の濃淡が存在します。コンプライアンス意識の違いによって起こるトラブルもありますので、共通の意識を社員全員に浸透させられるようにしたいところです。
ところが、社内に意識を浸透させるタイプの教育では、明確に成果を測る指標がない場合が多く、教育が成功したのかどうかがわかりにくい場合も多いのです。そのため、どうなったらゴールといえるのか、具体的に決めていくことが重要です。
- 誰に対して
どの役職に対してなど役職ごとに対象を設定しましょう。
例)2019年度の新入社員に対して
- 何を
◯◯に関するコンプライアンスをどこまで理解し、どういう行動ができる状態になればよいかについて決めておきましょう。
例)「情報漏えい防止のコンプライアンス」の内容を理解し、クライアント情報の取り扱いをマスターさせた状態
- いつまでに
いつまでという期限をつけなければ、ゴールが達成できたのか把握できません。期限を区切って効率よく教育が進められるようにしましょう。
例)新入社員研修の期間内に
- なぜ
何のために行うのか、必要性を明確にしておくことも、社員に真剣に取り組んでもらうために重要です。
例)クライアント情報の漏えいで信用を落とさないために
- どのように
そのコンプライアンス意識を身につけるにはどの方法が最適かを考えましょう。
例)わかりやすくシーン別にわけて研修し、eラーニングで浸透させるなど
コンプライアンスの重要性を理解して存続可能な組織を作ろう
競争が激化している市場で存続していくためには、コンプライアンスの重要性を理解し、社員が働きやすい組織を作っていくことが不可欠です。法令遵守だけではなく、倫理や規則を理解して企業の代表として行動できる人材として社員を教育することは、将来的にますます重要になってくるでしょう。
ただし、社員がその必要性を認識できない状態では、コンプライアンス教育を行っても期待する成果が得られない可能性があります。事前説明からが教育と考え、準備を念入りに行っていきましょう。