研修の効果を高める!研修報告書の活用方法

会社で研修を行った際には、その研修でどんな成果が出たのか、そして今後はどう改善すべきなのかといったことを把握することが重要です。このような成果を測るために必要なものが研修報告書です。そこで今回は、研修報告書の目的や必須項目など、効果を出すための研修報告書の作り方と活用方法についてご紹介します。

研修報告書を作成する目的

まず、目的をしっかり押さえ、適切な研修報告書のフォーマットの準備を進めましょう。

研修の成果を見るため


研修を実施するには、人・場所・時間・費用という4つのコストがかかります。外部に委託した場合でも社内研修であっても、コストがかかることに変わりはありません。

有効な研修であっても、コストをかけただけの成果が出せているのかが不明という理由で予算が削られてしまうのでは、会社のためになりません。どの程度研修が役立ったのかという判定を可能にするのは研修報告書であり、「研修の効果があったのか」「どのような成果が出ているのか」を明確に盛り込む必要があります。

OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)、つまり、座学ではなく現場での実践的な研修を行う際にも、研修報告書の提出を義務付けることが理想です。というのも、OJT形式の研修こそ、現場にいない人にはその成果が伝わりにくいものだからです。しかし、OJTでは、何を指標に効果測定するのか、誰を評価者にすべきなのかなどが現場によって異なる場合があり、一律的な書式では対応できない場合があります。そもそも、忙しい現場で時間を費やす研修報告書作成を義務づけることは、難しいと感じるところも多いでしょう。

OJTであってもコストがかかっていることに変わりはありません。効果の高い研修となるよう、無理なく成果を図るための方法を研究することも、人事には求められるでしょう。

研修の改善を図るため


時代の流れに乗って会社の成長を目指していくためには、研修内容について適宜見直していく必要があります。毎年同じ研修を行うことが決まっていたとしても、内容を刷新し、グレードアップしていくことが求められます。実施した研修の改善点を知るためにも、研修報告書が必要なのです。

研修の方向性や効果を見極めるため「今の会社にこの研修が必要か、それとも不要かを判断する」という観点でも、研修報告書が必要です。自社の中長期経営計画に基づいた研修目的と異なる成果が出ていた場合、その研修を取りやめる、あるいは内容を変更する必要性が出てくるからです。

研修報告書に記載すべき項目

それでは、具体的に研修報告書に記載すべき項目として、どのようなものがあるかについて見ていきましょう。OJTの研修報告書はさまざまな項目が必要であると考えられるため、ここではOJT以外の研修報告書として取り上げています。

プログラムの満足度


研修プログラムの満足度については5段階評価など、定量的な指標を入れておくことが重要になってきます。研修報告書に数値化できない定性的な評価ばかりを載せてしまった場合、どの視点から見るかによって大きく結果が異なってくるからです。

満足度の理由


5段階評価の数字の理由を書いてもらいましょう。「どういった観点で4とつけたのか」、「何が足りなかったのか」など具体的なフィードバックが得られるように補足情報を書いておくと、さらに踏み込んだ意見をもらうことができます。「根拠としているデータが古いように感じた」、「実践的なテーマを増やしてほしい」など、そのときの受講者の不満がわかれば、効率的に研修の改善が可能です。

実践に活かせるスキルや学んだこと


研修はただ「学べたことで満足」してしまいがちです。しかし、研修の成否はそれを「実践で活かせるかどうか」です。受講者にも、そのことを意識してもらうために、アンケートに盛り込みます。

スキルや学んだことを今後どのように活かそうと考えているか


実際に業務で活かしてもらうために、方法などを明快に記述させましょう。受講者の意識にも強く残るため、効果的です。

研修について改善してほしいこと


具体的に改善してほしいと思ったことを書いてもらいましょう。研修時間や会場など、環境面も研修成果には大きく影響する項目です。今後の研修をより効果的なものにするために、さまざまな意見を聞いておくことが重要です。

研修報告書以外に必要な書類

研修を実施するときには、研修報告書以外に必要になる書類があります。どのような書類があるのか、それらの書類が研修を成功させるためになぜ重要なのかを説明していきます。

研修計画書


本来研修は企業の中長期計画に基づき、どの部分をどのくらい成長させたいのかを明確にし、それを実現するために行うものです。つまり、企業が目指す方向に合致した研修になるよう綿密な計画を立てることが必要です。中長期計画に合わせた年間スケジュールを立て、そのなかでそれぞれの研修のゴール地点を明確に決めておきましょう。また、研修報告書を回収した後、いつまでに効果検証を、どのように行うのかも計画書に含めておきましょう。Off-JT(座学)の研修で行ったことを実践するOJTまで、すべて一貫した研修計画を立てれば、その後の成長率も変わってくるはずです。

研修実施報告書


人事部の上席者や経営層に向け、人事担当者が作成するものです。研修を実施した場合は、研修報告書のアンケート結果を集計し、どのような研修の成果があったのかを見える化する必要があります。記載内容としては、以下のようなものが挙げられます

  • 研修の目標に対する達成度およびその根拠
  • 研修の実施にあたり準備が不足していたこと
  • 今後の研修に活かすべきこと

「この研修は成果があったのか」「この研修は今後続けていく必要があるのか」といった点について、人事部の上席者や経営層が判断できるように、数値データや具体的な内容を記述するようにしましょう。場合によっては、研修講師や研修企画者の意見も盛り込み、さまざまな観点を示すことが重要です。また、研修報告書だけでは受講者の表情や研修の実態が見えづらいため、人事担当者も研修を見学することをおすすめします。

研修の成果を測るためにすべきこと


研修によって従業員のレベルが上がったかどうかを知るには、継続してチェックすることが大切です。

研修や教育の効果を測る方法としては、1959年にアメリカの経営学者カークパトリック博士が提唱した4段階評価法があります。それぞれの段階において、以下のように評価をします。

  • レベル1:Reaction
    前述した研修報告書などを使用して研修の満足度を調査します。
  • レベル2:Learning
    研修終了後、知識やスキルが向上したか、行動が変化したかどうかを評価します。
  • レベル3:Behavior
    研修で学んだことが仕事で活かされているか、上司や同僚にヒアリングして評価します。
  • レベル4:Results
    研修で身につけた知識やスキルがビジネスにどのような影響を与えたかを評価します。
    研修の効果を継続的に計測する際には、eラーニングを利用するという方法があります。e-ラーニングを利用すると、「受講者にテストを受けてもらう(レベル2)」「上司に受講者のスキルを評価してもらうように定期的にメールで通知する(レベル3)」といったことが、手間をかけずに実施することができるでしょう。

研修報告書を活用し、企業成長に活かそう!


研修報告書の目的や記載すべき項目、研修を実施する際に気をつけるべきポイントをまとめて紹介しました。研修の成果を測るには、研修報告書はもちろん、研修実施報告書や研修計画書などもきちんと作成することが必要です。また、eラーニングを利用して、受講者のスキルがアップしたか継続的にチェックすることも大切です。測りにくい研修の成果を明確にするためにも、ぜひ参考にして作成してみてください。