ニュースリリース

NEWS RELEASE


従来の3倍の高出力で充放電が可能な鉄道車両向け
ハイパワーバッテリモジュールを新たに開発

~従来品よりもさらに効率よく貯めた電力を列車の加速走行のアシストなどにも活用し、
鉄道運行の省エネ化やカーボンニュートラルの実現に貢献~

2025年11月17日

株式会社 東芝

 当社は、当社のリチウムイオン二次電池SCiBセルを適用した、従来よりも高出力・高効率な鉄道車両向けハイパワーバッテリモジュールを新たに開発しました。
 本バッテリモジュールは、鉄道車両向けシステムとして当社従来品比で約3倍の高出力注1での充放電に対応したことで、列車のブレーキ作動時に発生する回生エネルギーを従来品よりもさらに効率よく蓄電し、万が一電力供給が断たれた際に退避運転を行う電力を供給する非常用蓄電池として活用するほか、蓄電した電力を加速走行など列車運行のアシストにも活用できるため、鉄道運行で使用する電力量のさらなる削減やCO2排出量低減によるカーボンニュートラルの実現に貢献します。
 当社は本技術を、2025年11月26日から29日に幕張メッセで開催される「第9回鉄道技術展2025」の当社ブースにて紹介する予定です。

 列車のブレーキ作動時には、隣接する加速走行中の列車で利用可能な回生エネルギーが発生しますが、近くにこのエネルギーを消費する列車が存在しなければ、車載の抵抗器あるいは機械ブレーキにより熱として浪費されていました。昨今の電力料金の高騰などから、鉄道事業者には、使用電力量の削減など、さらなる省エネに向けた取り組みが求められており、この浪費される回生エネルギーを有効活用することが喫緊の課題となっています。当社は、この回生エネルギーを蓄電し、有効活用する鉄道車両向けシステムを直流600V架線区間では提供していますが、より効率的に有効活用するには、バッテリモジュールの架線電圧に対する適用範囲を広げ、高出力で充放電をする必要があります。一方で高電圧・高出力のバッテリモジュールの実現には、高電圧下での絶縁性能の強化や充放電時の発熱発生を抑制する必要がありました。

 このような背景から、本バッテリモジュールは、以下のコンセプトで開発しました。

  • 高電圧下での絶縁性能の強化および装置の小型化
    高電圧下での絶縁性能を強化したことで、国内の直流電化区間の90%以上注2を占める直流1500V架線に対して、架線への直結が可能となります。また、回路構成を簡素化できるため、装置の小型化に寄与します。装置が小型化することで、車両へ容易に搭載することができ、かつ車両が軽量化することによる消費電力量の削減が期待できます。
  • 絶縁性能と放熱性能の両立
    一般的に、高電圧絶縁性能を強化すると冷却性能が低下しますが、底板にアルミニウムを採用して新たに開発した独自の底面構造によって、これまで難しかった高電圧絶縁性能と高出力での充放電に伴うセル発熱を効率的に取り除く高い熱伝導性を両立します。
  • 低損失ハイパワーセルの採用
    内部抵抗が小さく高出力での充放電でも損失と発熱が小さいハイパワー型のSCiBセル「20Ah-HPセル」を採用しました。SCiBの特長である長寿命・高い安全性、-30℃の低温環境下での動作性も継承しています。

 当社は、今後も鉄道事業者が抱える様々なニーズや課題を的確に捉え、環境負荷の低減に配慮した安全・快適な車両システムの提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

注1 約300kW。同様のバッテリモジュール構成における従来の最大出力は約90kW。
注2 路線長ベース。国土交通省 鉄道統計年報[令和4年度]4.施設・車両(14)電路設備表
  https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000079.html)より。

図:ハイパワーバッテリモジュール適用 システムイメージ