ニュースリリース

大規模な量子セキュア通信を実現する「QSNプラットフォーム」の提供を開始

~既存ネットワークを活用し、複雑さ、設置スペース、コストを抑えながら、
量子セキュアな保護機能の導入・拡張を支援~

2026年10月21日

 当社は、量子セキュアネットワークの大規模な展開を可能にする「QSN(Quantum-Safe Networking)プラットフォーム(以下 本プラットフォーム)」の提供を本日開始します。

 本プラットフォームは、相互連携可能な機器の集中管理機能とネットワーク展開機能を統合しており、ネットワーク事業者、データセンターサービス事業者、企業、公共機関などが、重要な通信から量子セキュア化を開始し、対象となる拠点や通信を段階的に拡張できるよう設計されています。これにより、量子セキュアネットワークの拡張性や柔軟性を高めるとともに、より効率的な導入・運用を可能にします。
 また、本プラットフォームは既存のネットワークインフラと統合できるため、ネットワークを全面的に再構築することなく量子セキュア通信を導入できることが大きな特長です。単一の専用線接続から、都市圏ネットワーク、ハブ・アンド・スポーク、メッシュネットワーク、長距離ネットワークまで、さまざまなネットワーク構成に対応します。
 さらに、本プラットフォームは、量子セキュアネットワークの導入を容易にするとともに、複数拠点への展開を効率的かつ経済的に実現することで、量子セキュア化への移行を競争力の強化につなげます。組織はニーズに応じてセキュリティ対策の対象を拡大しながら、ネットワークの耐障害性を段階的に強化できます。また、通信サービス事業者は、差別化につながる量子セキュア通信サービスを提供することで、新たな収益機会を創出できます。

量子セキュア化への移行:
 将来、十分な能力を持つ量子コンピュータが登場すると、現在の暗号化方式の多くが脅威にさらされる可能性があり、その対応が急務となっています。また、暗号化された情報を現在のうちに収集・保存し、将来、十分な能力を持つ量子コンピュータが利用可能になった段階で解読を試みる「Harvest Now, Decrypt Later(今収集し、後で解読する)」と呼ばれる攻撃のリスクも指摘されています。

 世界各国の政府や規制当局、標準化団体は現在、重要なシステムの量子セキュア化への移行を求めるとともに、その移行スケジュールの策定を進めています。実証実験や商用導入を通じて、本技術が重要な通信の保護に有効であることは確認されています。今後は、量子セキュア化をより多くの拠点やさまざまなネットワークへ効率的に拡大していくことが求められています。

量子セキュア技術の組み合わせ:
 本プラットフォームは、ネットワークの拡大に伴う複雑さ、設置スペース、コストを抑えながら量子セキュアネットワークの展開を可能にするさまざまな機能を備えています。例えば、トランシーバーは送信機と受信機を1つのユニットに統合し、ハブは光スイッチング技術を用いることで、従来のポイント・ツー・ポイント(拠点間直結)方式よりも少ない機器構成で複数の拠点を接続することができます。

 また、本プラットフォームは、複数の量子セキュア技術を組み合わせています。耐量子計算機暗号(PQC:Post-Quantum Cryptography)は、量子コンピュータ時代に対応した鍵交換を実現し、各国政府や規制当局が求めるセキュリティ要件への対応を可能にします。さらに、量子鍵配送(QKD:Quantum Key Distribution)や量子乱数生成(QRNG:Quantum Random Number Generation)などの高度な量子技術により、最高レベルのセキュリティを提供します。これらの技術は、将来のあらゆる計算機攻撃への耐性を持つよう設計されており、近年増加しているAIを用いた暗号アルゴリズムへの脆弱性探索攻撃の影響も受けません。用途や利用環境に応じて必要なセキュリティレベルを適用できます。

集中管理による拡張性と柔軟性の向上:
 本プラットフォームは、以下の機器およびソフトウェアから構成され、ネットワークを集中管理します。

  • QSN Transceiver 1550/1310:量子鍵送信機(QTx)と量子鍵受信機(QRx)を単一の筐体に統合し、1550nmまたは1310nmの量子波長で動作します。高性能なコアネットワークへの導入や、効率的かつ安全な量子耐性を備えた鍵中継を実現します。
  • QSN Hub 1550/1310:アクティブ光スイッチング技術を用い、1つの集中管理システムから複数の遠隔拠点を接続する、拡張性の高いポイント・ツー・マルチポイント(1対多)の量子セキュアネットワークを構築します。1台のハブで数百の遠隔拠点を収容できるため、従来のポイント・ツー・ポイント(1対1)構成と比較して、機器の設置スペース、消費電力、コストを削減します。
  • QSN Spoke 1550/1310:ハブ・アンド・スポーク構成において、遠隔拠点を効率的に追加するためのコンパクトなエンドポイント装置を提供します。
  • QSN Link 1550/1310:専用のポイント・ツー・ポイントQKDを提供します。QTxとQRxのコンポーネントが独立しているため、ネットワークの拡張や変更に合わせて再利用が可能です。
  • QSN Multiplexer:量子チャネル、QKDサービスチャネル、およびサードパーティ製の大容量DWDMデータトラフィックを、既設の光ファイバー上で共存させることができます。これにより、高価な専用ダークファイバーが不要になります。
  • QSN Key Delivery System (KDS):QKDアプライアンスに統合されたKDSは、分散型かつ高い耐障害性を備え、暗号技術の変更にも柔軟に対応可能なソフトウェア層を介して、QKD鍵、PQC鍵、およびハイブリッド鍵をネットワーク全体に配信します。また、鍵の自動再ルーティングや多様な鍵交換方式へ対応しており、脅威や標準規格、セキュリティ要件の変化にも柔軟に適応できます。
  • QSN Key Management System (Q-KMS):業界標準のx86サーバー上で動作するソフトウェアで、量子セキュアネットワーク向けの高度な鍵管理機能を提供します。これにより、顧客は自社の量子セキュアネットワーク(QSN)に合わせて、システム構成を柔軟に設計できます。

 東芝は、25年以上にわたり培ってきた量子技術の研究開発の成果を本プラットフォームに結集しました。当社はこれまで、大手通信事業者への量子セキュアネットワークの導入や、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、北米、APAC(アジア太平洋地域)における政府主導の主要な量子ネットワーク・プロジェクトへの参画など、豊富な実績を有しています。

 また、当社はETSI(欧州電気通信標準化機構)のQKDに関するIndustry Specification Group(ISG)の議長を務めるとともに、国際標準化や安全性保証、認証制度に関する取り組みにも貢献しています。

東芝の「QSNプラットフォーム」