「糖尿病性腎臓病重症化予防プログラム(実証研究)」において、 AIを活用した患者への保健指導を開始

~AIの活用と医療機関の連携によりリスク状況を提示し、QOL改善と行動変容を検証~

2022年02月21日

国立大学法人金沢大学
株式会社 東芝
東芝デジタルソリューションズ株式会社
SOMPOホールディングス株式会社

 国立大学法人金沢大学(石川県金沢市、学長:山崎 光悦、以下、金沢大学)和田 隆志理事・副学長(腎臓内科学)らの研究グループと、株式会社東芝(本社:東京都港区、代表執行役社長 CEO:綱川 智、以下、東芝)、東芝デジタルソリューションズ株式会社(本社:神奈川県川崎市、取締役社長:島田 太郎、以下、東芝デジタルソリューションズ)、SOMPOホールディングス株式会社(本社:東京都新宿区、グループCEO取締役代表執行役社長:櫻田 謙悟、以下、SOMPOホールディングス)は、糖尿病性腎臓病の重症化の予防と、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の改善に向けて、4者で開発した、重症化に関連するリスク因子を算出するAI(以下、本AI)を活用した患者への保健指導を今月から開始しました。

 4者は、石川県金沢市の医療機関(以下、かかりつけ医)、公益社団法人石川県栄養士会(石川県、会長:新澤 祥惠、以下、石川県栄養士会)、および中等度腎機能障害を併発した糖尿病患者の協力のもと、本AIを糖尿病患者のQOL向上に生かすための実証研究「糖尿病性腎臓病重症化予防プログラム」を2021年12月から開始しており、今般の本AIを活用した保健指導は、本プログラムの一環として行うものです。

 

1.   背景・経緯

 わが国は、台湾に次ぐ世界第2位の人工透析大国であり、透析患者数は国民の約370人に1人、約34万人にも及びます。中でも、糖尿病の合併症として発症する糖尿病性腎臓病の重症化による透析患者数が最も多く、全体の約4割を占めています(*1)。人工透析が必要になると、透析治療によりQOLが低下するだけでなく、1人当たり年間約500万円の医療費負担、国全体では年間約1.6兆円の公的医療費が必要となります(*2)。このため、糖尿病性腎臓病の重症化を予防することは健康寿命を延ばすだけでなく、医療保険財政を健全化する点からも喫緊の課題です。糖尿病性腎臓病の重症化を防ぐためには、患者の行動変容(日常的な健康生活の習慣化)に加え、医療機関受診による治療の継続が求められます。

 そのような中、金沢大学、東芝、東芝デジタルソリューションズの3者は、2019年8月に、糖尿病性腎臓病患者の症状が改善・悪化するパターンを分析し、重症化メカニズムを解析する共同研究の開始を公表しました(*3)。その後、SOMPOホールディングスを含めた4者で共同開発を進め、金沢大学の高度な医学的知見と東芝、東芝デジタルソリューションズのAI技術、SOMPOグループが持つヘルスケアのノウハウに加え、東芝健康保険組合が持つデータを活用することで、重症化に関連するリスク因子を算出するAIの開発に成功しました。

 

2.  「糖尿病性腎臓病重症化予防プログラム」の概要

 本実証(図1)では、まず、4者で共同開発したAIを用いて、本実証研究にご協力いただく30名の中等度腎機能障害を併発した糖尿病患者の健康診断結果を解析し、現状維持が望ましい検査項目・改善が望ましい検査項目が分かる個別化されたリスク状況を記した「生活習慣の維持/改善目標シート」を作成します(図2)。次に、本シートを活用して、管理栄養士が患者への保健指導を行います。さらに、従来の健康指導を組み合せることで、糖尿病患者の生活習慣とQOLの変化を検証します。AIの解析結果に基づく保健指導に加え、管理栄養士が持つ保健指導のノウハウを結集させることで、糖尿病性腎臓病の重症化を防ぎ、患者のQOLの向上、および医療保険財政の健全化を目指します。

図1.実証研究でのオペレーションイメージ
図2.生活習慣の維持/改善目標シート

3. 今後の展開

 本実証研究を通じて得られたデータをもとに4者は糖尿病性腎臓病の重症化予防方法の有効性を検証し、医療機関、自治体、SOMPOグループをはじめ民間事業者が連携して、プログラムの社会実装を行い、患者のQOL向上を目指します。

 

4. 本研究に関わる関係者コメント

国立大学法人金沢大学 理事・副学長(腎臓内科学) 和田 隆志

AIを用いた新たな診療補助ツールです。患者さんお一人お一人に寄り添い、明日に希望を持てる医療を提供できることを目指しております。住民の皆様の健康維持や笑顔につながることを心より念じております。

 

公益社団法人石川県栄養士会長 新澤 祥惠

重症化予防における栄養食生活指導の役割を検証する機会と捉えています。
特に患者さんのリスク状況を説明し食生活を一緒に考えることにより、治療への意識と、より良い生活習慣につながることを期待しています。

 

※社名・商品名・サービス名などは、それぞれ各社が商標として使用している場合があります。