ニュースリリース

自動運転システム向け長距離LiDARの回路技術を開発

世界最高の長距離測定性能で高度な自動運転システムの実現に貢献
2018年03月05日

 当社は、レーザの照射により、離れた物体までの距離情報を3D画像として得る技術「LiDAR」注1において、世界最高注2となる200mの長距離測定性能と高解像を実現する、車載用LiDAR向けの計測回路技術を開発しました。本技術により、従来の車載用LiDARと比較注2して測定可能距離が2倍注3となります。高速道路走行中の車両または障害物の早期検知および市街地走行中における歩行者の見落とし低減につながり、より安全で高度な自動運転システムの実現に貢献します。
 当社は今後、さらなる測定距離の延伸および精度向上等についての研究開発を進め、2020年度までに実用化技術の確立を目指します。

 LiDARは、自動運転に必要となる車の周辺環境を3D画像として把握できるため、高度な自動運転システムの実現に不可欠です。当社はこの度、200mまでの長距離を高精度に測定できる独自のハイブリッド回路と、小さな物体も検知可能な高解像測距技術を開発しました。

 長距離を測定するには、強い太陽光の存在下で、遠方からの微弱なレーザの反射光を検知する必要があります。これにはADC注4回路を用いた、太陽光などの雑音を小さくするための平均化処理が有効です。しかしADC回路では、駐車アシスト時などの短距離を高精度に測定する場合に必要な高速処理が難しいという問題がありました。さらに、従来の平均化処理では、複数の異なる物体からレーザ光が反射してくる場合、解像度が劣化してしまい小さな物体を検知できずに見落とすという課題がありました。

 当社は、短距離用の回路と、長距離用のADC回路の2つで構成する独自のハイブリッド回路を開発することで、ADC回路に要求される処理速度を緩和し、長距離測定を可能にしました。さらに、各レーザが反射した物体が同じ物かどうかを判別し、同じ物体のみを選択して平均化処理を行うことにより、小さな物体を検知できる高解像測距技術を開発し、課題を解決しました。

 また、ADC回路は独自構造を採用することで、小型で低消費電力な回路を実現しています。本技術を適用することにより、従来に比べて高性能かつコンパクトなLiDARシステムの構築が可能となります。
 本技術の詳細は、米国サンフランシスコで開催された半導体回路国際会議ISSCC 2018にて発表しました。

 当社は今後も、実用化に向けた開発が進む運転支援・自動運転システム分野における研究開発を進め、高度な自動運転システムの実現に貢献していきます。

注1
Light Detection and Ranging
注2
LiDARにおいて雑音となる太陽光強度が70キロルクス、対象物体の反射率10%の条件下において
注3
学会で発表された車載向けLiDARシステムにおけるベンチマーク
注4
Analog –to-Digital Converter(A/D変換器):アナログ信号をデジタル信号に変換する回路
開発したハイブリッド回路

 

開発した長距離LiDARで取得した画像イメージ