ウェスチングハウス社株式取得による原子力事業の強化について

2006年2月6日

 本日、当社は、英国原子燃料会社(British Nuclear Fuels.plc:以下、BNFL)と、同社のグループ会社であるBNFL USA Group Inc.およびWestinghouse Electric UK Limited(以下、両社を併せてウェスチングハウス社)の全株式の取得に関する契約を締結しました。取得額は54億ドル(約6,210億円、115円/ドルで換算)です。

 今後、当社とBNFLは、東芝グループへのウェスチングハウス社の株式譲渡に関する詳細事項についてさらに調整を続け、行政許認可などの諸手続を経て、株式取得手続きを完了する計画です。

 世界の原子力発電設備および燃料関連事業で豊富な実績を持つウェスチングハウス社が東芝グループの一員となることは、今後当社がグローバルなエネルギー関連事業を展開する上で極めて重要な意義を持つものです。両社がそれぞれの原子力事業で得意とする分野を最適に組み合わせて相互補完関係を構築することにより、世界トップクラスのグローバル原子力グループを形成し、沸騰水型原子炉(以下、BWR)*1、加圧水型原子炉(以下、PWR)*2の両方式を推進するリーディングカンパニーをめざします。

 なお、今回の株式取得により形成される新たな事業グループの将来性に関し、既にエネルギー関連事業に携わる複数の大手国際企業から高い評価を受けており、当社は、他の出資者と共にウェスチングハウス社の株式を保有する方針です。当社がウェスチングハウス社の株式のうち51%以上を保有し、残りについては、共同出資者が保有する予定です。

*1 沸騰水型原子炉: Boiling Water Reactor (BWR) 米国ゼネラルエレクトリック社(GE)が開発、実用化した炉型
*2 加圧水型原子炉: Pressurized Water Reactor (PWR) 米国ウェスチングハウス社(WH)が開発、実用化した炉型

今回の株式取得の意義

 現在、世界各国において、電力の安定供給と地球温暖化防止の観点から、原子力発電プラントの新規建設や既設プラントのさらなる有効活用などに対する需要が急速に高まっています。世界で稼動中の原子力発電プラントは、現在439基ありますが、今後とも21世紀の省資源・循環型社会に適した原子力発電に対する需要は着実な伸張が予想され、2020年までに世界の原子力需要は約1.5倍に拡大するものと予想されています。欧米では新規建設を再開する機運が高まり、中国をはじめ高い経済成長を続けるアジア地域では多くの新規建設が計画されています。

 このような背景のもと、日本市場を中心にBWRに強みを持つ当社の原子力事業と、世界市場においてPWR事業を中心に強みを持つウェスチングハウス社が協力関係を構築することによって、製造、販売、技術面で両社の補完関係が成り立ち、さらに、従来、両社がそれぞれ単独では手がけることが困難だった新たな事業領域にも進出することで相乗効果を発揮することができます。
 ウェスチングハウス社が当社グループの一員となることにより、当社原子力事業の規模は、相乗効果も合わせると、2015年までに現状の約3倍に拡大するものと予想しています。

ウェスチングハウス社について

 ウェスチングハウス社は、1957年に世界に先駆けて原子力事業を始めて以来、50年にわたり原子力発電プラントに関する機器、サービスを提供し、世界の電力インフラの整備に貢献してきました。現在は、世界14カ国に34の拠点をもち、欧米を中心に、主にPWRの営業、設計、建設、保全サービス、燃料成形加工などの事業を展開し、市場に確固たる地位を確立しています。

当社の原子力事業について

 当社の原子力事業は、1966年に事業を開始して以来、国産初号機の納入や110万kW初号機の建設に携わるなど、日本の原子力産業の発展に大きく寄与してきました。当社はBWRをベースに事業を展開し、現在国内の原子力発電プラント納入実績においてトップメーカーであり、世界で初めて改良型沸騰水型原子力発電プラント(以下、ABWR)*1の建設を手がけたほか、次世代の水素燃料の研究にもいち早く取り組むなど、常に最先端の技術開発に着手し、市場をリードしております。原子炉、制御棒等を始めとする主要機器、およびトータルシステムの開発設計、製造から施工、エンジニアリング、そして納入後の保守点検に到るまでシステム・インテグレーターとして総合力を発揮すると共に、核燃料についてもBWR向け燃料事業に約35年間に渡り携わり、国内の安定供給に寄与してまいりました。

 当社は、これまで複合電機メーカーとして「電子デバイス事業」や「デジタルプロダクツ事業」を「成長事業領域」と位置付け、半導体事業など成長の見込まれる事業に戦略的設備投資を積極的に行ってきました。原子力事業をはじめとした電力・社会システム事業は、これまで「安定事業領域」と位置付け、国内外の電力設備事業を着実に進めてきましたが、今後大きな成長が見込まれる世界の原子力市場の変化を先取りし、このたび、ウェスチングハウス社の株式を取得することとしました。

*1 改良型沸騰水型原子力炉:Advanced Boiling Water Reactor (ABWR)。従来のBWRからより一層安全性と経済性を向上させた改良型の原子炉

株式取得後の事業運営

 当社は、これまで日本国内で展開してきたBWRの営業、設計、建設、保全サービスなどの事業に関し、今後とも継続強化を図っていきます。また、これまで当社が取り組んできた海外向けのBWR事業の強化にも引き続き注力していきます。さらに、先進型であるABWRシステムの拡販にも引き続き取り組んでいきます。

 ウェスチングハウス社に関しては、当社の連結子会社となった後も、米国ペンシルバニア州を本拠地とし、現状の資産、設備、従業員、商標等の権利を保持し、事業の拡大、強化を図ります。今後、米国や中国での建設が期待できる次世代型PWRである「AP1000」*1の開発を継続し、受注をめざします。また、世界各地で稼動する既設の原子力発電プラントの保守点検、更新事業や、原子燃料の成形加工事業も継続します。
 加えて、ウェスチングハウス社と当社の原子力事業が補完し合あうことで最大限に相乗効果を発揮し、新たな事業機会を創造するため、共同で今後の事業戦略を構築、共有し、事業運営に当たります。

 国内市場を中心にBWRに強みをもつ当社の原子力事業と、世界各地に幅広い営業拠点を有し、PWRシステムで豊富な実績を持つウェスチングハウス社の事業の密接な連携を通じて、製造、販売、技術それぞれの分野で補完関係の構築を図ります。その結果、世界中のお客様にワンストップで包括的に機器、サービス等を提供することができ、新たな事業機会が期待できます。

 今後、当社とウェスチングハウス社は、世界トップクラスのグローバル原子力グループを形成することにより、最先端の技術、信頼性と経済性を兼ね備えた原子力発電設備とサービスを提供してまいります。

*1 米国エネルギー省(DOE)/電力研究所(EPRI)の改良型軽水炉計画に従ってWH社が中心となり開発を進めている。

各社の概要

(1)BNFL
   創業   1971年(1984年に株式会社化)
   資本関係   英国政府保有会社
   最高経営責任者   Mike Parker
   売上高   約2,400百万ポンド
   従業員数    約23,000人
   本社所在地   英国Daresbury

(2)Westinghouse Electric Company
   創業   1886年
   資本関係   British Nuclear Fuels.plcが米国法人BNFL USA Group Inc.及び英国法人Westinghouse Electric UK Limitedを通じて、100%保有
   最高経営責任者   Steve Tritch
   売上高   約1,100百万ポンド
   従業員数    約8,000人
   本社所在地   米国Pennsylvania

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