RECAIUS™で、新たなビジネスモデルを創出
人と人をつなぐ、コミュニケーション・インフラ企業を目指す
北海道総合通信網は、米国Vidyo社のビデオコラボレーション商品と、東芝コミュニケーションAI「RECAIUS™」を組み合わせたカスタマーエンゲージメントサービスの提供に向け、2017年1月、東芝とRECAIUS SIパートナー契約を締結。活用シーンのモデルづくりや営業活動などを共同で推進を始めており、2017年6月に開催された「第1回AI・人工知能EXPO」にも出展し、多くの来場者の注目を浴びた。この新たな取り組みに向けた、同社と東芝の共創の様子を紹介する。
Before
ネットワークを中心としたインフラ事業での、市場と商品拡大のためビデオコラボレーション「Vidyo」の販売代理店となった。Vidyoの付加価値を高める、魅力あるソリューションを求めていたところ、東芝のRECAIUSを知り、パートナー契約の検討を開始。
After
Vidyoと「RECAIUS」を組み合わせることで、映像と音声だけではなく、人と対話して応答する、カスタマーエンゲージメントを高めることが可能になる。両社はコミュニケーションAIで 、世の中を変える新たなビジネスモデルを創り出し始めている。
「Vidyo」と東芝コミュニケーションAI「RECAIUS™」を組み合わせ、利用シーンを拡大
1989年に北海道電力グループの情報通信サービス会社として設立された北海道総合通信網株式会社(以下、HOTnet)。同社は北海道に光ファイバーネットワークを構築し、情報通信インフラを整備、北海道の発展と自立に寄与・貢献したいとの理念のもと事業を開始。現在は、クラウドサービスやデータセンター事業にも取り組むと共に、北海道内にとどまらず全国での営業活動にも力を入れている。
HOTnetでは2016年はじめに、米国Vidyo社と販売代理店契約を結び、幅広いネットワーク環境やデバイスで安全かつ高品質なテレビ会議ができるビデオコラボレーション「Vidyo」の提供を開始した。「時代に合った新しいテーマに取り組むべく、カスタマーエンゲージメントを高めるVidyoのパートナーになり、初めて代理店ビジネスを始めることにしたのです」と営業ソリューション第一部 法人営業第二グループリーダー 渡辺 稔文氏は語る。
Vidyoは、さまざまなシステムと連携して提供できることが大きな特長だ。HOTnetがその販売活動に取り組もうとしていたときに、魅力的なソリューションとして紹介されたのが東芝コミュニケーションAI「RECAIUS」だった。「Vidyoは映像と音声をやり取りするサービスですが、そこにRECAIUSが組み込まれると、人とシステムが対話(応答)することができるようになります。その意味で、RECAIUSが介在することで、新たな価値をお客さまに訴求できると考えました」と営業ソリューション第一部長 武藤 光海氏は語る。
営業ソリューション第一部長
武藤 光海 氏
世の中を変える、新たなビジネスモデルを作る、という強い意気込み
HOTnetはインフラを中心としたビジネスを展開していたため、これまでコミュニケーションAIに関する知見はなかった。東芝からデモを中心としたRECAIUSの説明を受け、Vidyoと組み合わせることで企業の業務に役立つソリューションが提供できると判断。そして、2017年1月、東芝とRECAIUS SIパートナー契約を締結した。「社内でも最初はさまざまな議論がありました。しかし、法人営業第二グループには『世の中を変えていくのだ。ビジネスモデルを東芝と一緒に創り上げていくのだ』という強い意気込みがありましたし、当社としましても新しい取り組みをためらわずに実行していこうという考え方でした。 それで、RECAIUSに取り組んでみようとなりました。」(武藤氏)。
RECAIUS SIパートナー契約締結後、HOTnetでは東芝と、VidyoとRECAIUSを組み合わせた活用シーンのモデルづくりのワークショップ、共同の営業活動などに取り組んでいる。「第1回AI・人工知能EXPO」にブースを出展し、VidyoとRECAIUSを組み合わせたビデオ接客サービスを紹介。「EXPOの来場者数は予想を上回る多さで、AIに対する期待の高さを感じました。大規模なイベントで数多くのプレゼンテーションを経験していますが、今回は今まで経験したことがないほどの反応がありました。『コミュニケーションAI』と声をかけた途端に、通りかかる人がふっと振り返るのです。ブースを囲む人の輪があっという間に、二重、三重になりました。『コミュニケーションAIとは何だろう』と多くの人が注目し、自分たちの業務で使えそうだと肌で感じとってくださったのを実感しました」と営業統括部 営業開発グループ 池野 桂司氏は語る。
人と人のコミュニケーションを広げ、人間と共存するAIであることが最大の魅力
最近、AIに対する期待度は非常に高まっているが、AIが人間の仕事を奪っていくのではいう疑念を持つ人もいる。それに対して、コミュニケーションAIは人と人のコミュニケーションを広げてくれるもので、人間と共存できるAIだという印象が強い。「RECAIUSは日本語に強く、音声認識技術に長い歴史を持つ東芝が開発しているので、利用シーンに応じて、適切なコミュニケーションができることが大きな魅力です。またVidyoとWebAPIで連携できるのもカスタマイズを考えると大きなメリットです。Vidyoと組み合わせた新サービスを考えるときには東芝との共創がベストの選択だと思います」と営業ソリューション第一部 法人営業第二グループ 中江 基氏は語る。
同グループでは、実際にRECAIUSに触れる機会が増えているなかで、人の役に立つ機会を生み出すことができる、という手応えを感じているという。例えば、視覚障害者に本や雑誌の内容を音声で伝える音訳に、RECAIUSの音声合成を活用すると、音訳ボランティアと同じような活動ができる。「私たちには人を大切にする豊かな社会を作ることに貢献していきたいという通信インフラ事業に携わる企業としての使命感があります。そうした観点からも、RECAIUSは人に役立つ事業として展開できるさまざまな可能性を持っていると思います。東芝との共創がこうした新たな取り組みにつながる期待感をもたらしてくれているのを実感しています。」(池野氏)。
営業ソリューション第一部
法人営業第二グループ
中江 基 氏
営業ソリューション第一部
法人営業第二グループリーダー
渡辺 稔文 氏
「東芝の担当者は、RECAIUSで何かを成し遂げようという気持ちがとても強く、学ぶ部分が多いです。ビジネスの進め方、Vidyoとの組み合わせ方など、さまざまな面で助けられていて、私たちのベストパートナーと言えると思います」(中江氏)と、東芝の評価は高い。 「ディスカッションや会議を重ねながら、私たちのRECAIUSへの想いをしっかりと理解してくれているので、東芝とは想いを共有し、一緒に何かを成し遂げるという目標に向かっていけるパートナーとなっていることが嬉しいですね。彼らとの共創で、新たな活用モデルと成果を生み出すことができるよう、東芝とさらに良好な関係を築いていきたいです」(渡辺氏)。
RECAIUSは北海道内でも新たな市場を創り出すことができる可能性を持っている。北海道では観光立国を目指すという国の施策に沿う形で訪日外国人旅行者が増加しているが、旅行者の国の言語で対応できる人材が圧倒的に足りない。また、高齢化社会の中で、独居老人の孤立も大きな社会的問題となっている。「さまざまな言語での通訳という面で、RECAIUSは大いに役立つと思います。また最新のRECAIUS音声合成は丸みを帯びた言葉で人と区別がつかないところまで進化しています。それをうまく活用することで、高齢者へのやさしい対応やコミュニケーションが可能になり、社会的にも大きな役割を果たすことができると考えています」(武藤氏)。
PNJグループを通じて新たな業界のお客さまを開拓。 コールセンターや地場企業へも拡販
RECAIUSのSIパートナーとして活動を開始してからまだ間もないが、既にHOTnetには、自社のニーズに最適だと考えている企業から引き合いもきている。先進的なソリューションを導入しようという企業から大きな注目が集まっているのだ。「全国の電力系通信事業会社でPNJ(Power Nets Japan)というグループを構成しています。つながりが強く、最新技術動向等の情報交換も頻繁に行っています。そのなかで、PNJにVidyoを提供する取り組みを進めており、RECAIUSも同じようにPNJを介し全国に提供していきたいと思っています」(武藤氏)
業務での活用を具体的に構想している企業も多く、特にコールセンターでの自動応答による簡単な質問の前さばきや、多言語対応への活用が注目を集めている。札幌市にはコールセンターが多いが、最近ではオペレーターの採用難がではじめているため、電話の前さばきをRECAIUSで行うことで、コールセンターの運営を効率化したいと考えているからだ。
「家電品など日本メーカー製品を購入して自国へ持ち帰り、家庭で使う外国人が多くなっています。そのユーザーサポートをコールセンターのオペレーターが多言語で行うのは大変なコストがかかります。RECAIUSの同時通訳を使って、ユーザーの言語に対応できれば、大幅なコスト削減ができますし、顧客満足度向上にもつながります。東芝の技術力はもちろんのこと、既に金融機関での活用実績があることも、高い信用と期待を後押ししているのだと思います」(池野氏)。
営業統括部 営業開発グループ
池野 桂司 氏
経験とノウハウを積み上げサービス化し、利用企業の拡大を目指す
HOTnetは現在取り組んでいる活用シーンの具現化を進め、コールセンターやPNJグループを介して、全国へサービス展開を図っていく考えだ。「HOTnetは通信インフラの提供からスタートして、サーバー、ソリューションと垂直的に上部レイヤーにサービスを拡大してきましたが、ビジネスの基本はインフラ事業です。VidyoとRECAIUSで、コミュニケーション・インフラ企業として新しいビジネスを成長させていきたいと考えています」(池野氏)。
HOTnetでは、「人と人の心をコミュニケートする」ことを経営理念のひとつに据えており、それを実現し、人と人をつなぐコミュニケーションのインフラ企業を目指す。そして東芝は今後、HOTnetとの取り組みを生かし、さまざまな企業と「共創」し、各企業のベストパートナーとして共に成長していく。
この記事の内容は2017年7月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。
COMPANY PROFILE
会社名
北海道総合通信網株式会社
設立
1989年
本社所在地
北海道札幌市中央区北1条東2丁目5番3
事業概要
電気通信事業法に基づく電気通信事業、電気通信設備およびこれに附帯する設備の工事ならびに保守、電気通信および情報処理に関する機器ならびにソフトウェアの開発・製作・販売・賃貸、前各号に関するコンサルティング、前各号に附帯または関連する一切の事業