1万人の人事・給与データを一元管理 高度な情報管理機能の活用で次の時代の社会基盤を築く
安全第一で休みなく動き続ける鉄道を基幹に、
不動産、流通、ホテル、レジャーとさらなる可能性に挑戦する
近畿日本鉄道の取り組みを支える、東芝ソリューション。
歴史や伝統にもとづき、新たな飛躍に向けた基盤を確立
2010年、創業100周年を迎えた近畿日本鉄道は、大きく生まれ変わろうとしている。2006年のけいはんな線開業、2009年の阪神なんば線との相互直通運転など事業拡張を進める中、100周年以降を「第2の創業期」ととらえ、新たな飛躍に向けた基盤確立の取り組みとなる「近鉄グループ経営計画」を積極的に推進。2005年までに進めた事業再編を経て、2006年より沿線価値向上の観点からコア事業(鉄道・不動産・流通・ホテル・レジャー)を強化し、グループ経営体制を一層強固にして持続的成長を実現する収益基盤の整備とブランド力の強化を推し進めている。今回取り上げる人事・給与系を含む社内情報インフラの刷新も、そのひとつだ。「1967年よりさまざまな業務システムをメーンフレーム上で自社開発して構築運用していましたが、現場のスピードに対応しきれなくなってきた。経営計画を後押しするためには、経営基盤の強化に直結する社内情報インフラの刷新による業務効率化が急務でした」と人事部の山根真哉課長は振り返る。
メーンフレームからの脱却を決断
人事部 課長(人事担当)
山根 真哉 氏
人事・給与系システムの刷新に際し、同社はそれまで慣れ親しんできた業務フローや情報共有のあり方を徹底的に見直した。例えば、社員の成績査定の場合、対象社員の状況を出力→現場の上長が査定→入力伝票を起票→その指示内容に基づき入力→結果を出力→修正があれば依頼伝票を起票→それに基づき入力…と、紙ベースで作業ごとに帳票類作成や承認業務がつきものだった。同社では「メーンフレームの焼き直しも考えましたが、従前の情報インフラ環境ではスピードも柔軟性も得られず経営基盤の強化は無理と判断。自分たちの意識や業務のやり方を変えるツールを手に入れるべき」(山根氏)と目標を設定。
「年間50万枚を超える帳票類の出力と、それをはるかにしのぐ入力が必要とされる旧来のシステムありきの業務フローを根底から改め、業務発生元でのシステム入力でデータを共有する業務フローに一新し、効率化追求と人事情報の共有・活用・統制を確立することで、より機能的に進めるための大きな一歩を踏み出せる新システムを検討しました」(山根氏)と大きくかじを切り直した。もちろん、同社が手をこまねいていたわけではない。「従来の踏襲なら確実で安心だから、という風土のもと業務の変革に結果的に後れをとったのは、なにより安全を最優先する鉄道事業者の自信と誇りから。しかし、2005年に経理購買業務へSAP/R3が導入され、IT活用が進んだことも、大胆な刷新を後押しする材料となりました」と人事部の桐間昭課長は舞台裏を明かす。
人事部 課長(給与担当)
桐間 昭 氏
豊富な実績と多機能、柔軟性兼備のパッケージを選択
人事部 主査
田中 章 氏
同社は、先のSAP導入成功を受け、2005年から具体的にシステム刷新に動き出し、新たな人事・給与システムにパッケージ・ソフトを導入する方針を固めた。そして選ばれたのが、東芝ソリューションの人事・給与ソリューション「Generalist®」(ジェネラリスト)だ。「当時、グループ社内の情報インフラを一手に担っていた近鉄情報システムと一緒に6社の製品を比較し、同業他社を含め多数のユーザーが利活用している信頼性の高さ、業務内容が適切に反映できる標準機能の幅広さ、そして固有業務へのアドオン開発の柔軟性などを特に評価した」(桐間氏)というのがその理由だ。「営業キロ数508.1キロ・294駅・客車数1,938両というスケールの大きさで、24時間365日、安全な鉄道運行を支える現場は非常に複雑な勤務形態になります。その勤怠管理から算出された給与の支払いも、基本給与と諸手当、賞与、出勤奨励金などの特別報奨…と、すべて別計算で算出。多い月には4種の給与明細が出るほどでした。この仕組みや流れをシステムで一元化できれば、固有で特殊な業務の標準化による改善効果も狙えると期待しました」と人事部の田中章主査は話す。
「Generalist」を業務改善の羅針盤に
同社が「Generalist」を選んだ理由はまだある。「従来は度重なる法令や制度改正の度に、手直しを繰り返してソフトウエアの修正や機能拡張を続けてきました。パッケージに置き換えれば、それらの変更や更新業務は、すべて東芝ソリューション側にお任せできます。業務の効率化と同時に、場当たり的なプログラム追加でシステムの処理能力に影響をきたすようなことも抑えられると予想しました」と人事部の和田大吾主査は説明する。また、メーンフレームに明るい専門スタッフ以外はまったく手を付けられない、閉じられた世界だったことも改善テーマだった。「自分の机の上にあるパソコンからアクセスできないか、というニーズは少なくありませんでした。「Generalist」によるオープン化でEUC(エンドユーザーコンピューティング)環境の普及を図れば、必要な人が、必要なときに、必要な情報を得ることができるようになり、業務改善と利用者のリテラシー向上に直結できます」(山根氏)。「Generalist」導入は、自ら長年にわたりメーンフレームによる開発・構築でシステム運用してきた同社ゆえの課題解決策でもあったのだ。
人事部 主査
和田 大吾 氏
ペーパーレスによるスリム化で業務効率が向上
さくらライナー
2005年9月にはじまった「Generalist」導入による新人事・給与システムは「CUBE」と名付けられた。プロジェクト内のメンバー公募で命名され「より親しみを持って有効活用してもらうため」(桐間氏)という同社の意気込みのもと、東芝ソリューションとの共同作業で導入が進められた。仕様決定、設計・構築、テストでは、「自分たちの業務をどのように新システムになじませるか、業務フローを新システムにひも付けしていく際、地元関西のSEのみならず、東京本社の開発SEと連携し、コンサルティングに近いスタンスでリードしてくれ助かりました」(田中氏)、「4年後の今、振り返ると、もっと東芝ソリューション主導でもよかった。そう思えるほど、導入時は私たちの要求をうまく聞き出しシステムに反映してくれました」(和田氏)と評されるほどの関係で、2006年8月に無事、本番稼動を迎えた。実際の導入後、「考課業務の再構築を果たすなど人事情報の整理・把握が大幅に進み、お客様の安全が第一の安定した輸送サービス提供に向け、各駅や列車区で必要な人材の適正配置や採用に直結する効率的なシステムとして機能させられる」(山根氏)という手応えをはじめ、「給与支払いまでの工程・工数が大幅に削減」(桐間氏)、「紙ベースで3日以上必要な約1万人のシステムにおける考課業務が1日で済む」(和田氏)、「人事部スタッフの総労働時間ベースで2割強削減」(田中氏)という声があげられ、実質的効果も手にしている。
持続的な成長基盤に貢献する情報インフラに
一方、業務の現場では数字に表れない効果も手にしている。「新システムを使いこなすうちに、現場の個々のメンバーから“もっとこうした方が効率的”といった案が上がってくるようになりました」(和田氏)、「HowではなくWhyの視点で自らの仕事に臨む姿勢が根付くきっかけとしても寄与している」(山根氏)。このように運用4年目を迎え、多くの成果を得た同社では「Generalist」による人事・給与システムをさらに利活用する方法を模索中だ。「Generalistユーザー会の存在は大きいですね。異業種の垣根を越え規模の大小も問わず、“システムは使うもの”という思想を持った様々な「Generalist」ユーザーの声を聞けます。例えば、本社と人事、グループ会社、それぞれ実践されている役割を実感でき、グループ展開のメリット/デメリットを確認できたりする。生の情報を得て、私たちもシェアードサービスへの機運がリアルさをもって高まりました」(山根氏)。システム刷新の第一段階を経た同社は、創業100周年を迎え第2の創業期に向け、近鉄グループの未来を創造するフェーズに突入した。とはいえ、「Generalist」による人事・給与システムの役割は、まだ始まったばかり。持続的な成長基盤を支える情報インフラの確立に向け、東芝ソリューションもサポートの手を緩めず臨んでいる。
アーバンライナー・ネクスト
SOLUTION FOCUS
東芝ソリューションが自社開発したソリューションパッケージ。1998年から販売され、現在までに東芝グループをはじめ、製造、流通・サービス、建設、金融など多業種で1,100社以上の販売実績を持つ。先進的人事・給与制度をはじめ、内部統制支援機能、運用効率改善の機能強化、eラーニング、キャリア管理、開発ツールの配布も含め、業種・業界ごとの固有制度への対応に幅広い機能を有するほか、複数法人の一括管理機能によりシェアードサービスはもちろんグループ企業の情報一元化も可能。評価・給与制度改定にも柔軟に対応できる高い適応力で 戦略的な人材マネジメント環境を実現する。大企業向け導入実績としては国内トップシェア、中堅企業向けを含めた総合実績でも国内有力パッケージという位置付けで、ユーザー会による情報交換なども盛ん。
この記事の内容は2010年3月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。
COMPANY PROFILE
会社名
近畿日本鉄道株式会社
設立
1910年9月
代表者
代表取締役社長 小林 哲也
本社所在地
大阪市天王寺区上本町6丁目1番55号
事業内容
鉄道および軌道の経営、土地・建物の売買および経営、コンビニエンスストア等の経営、ホテルの経営、観光娯楽・スポーツおよび文化施設の経営、電気通信事業・有線放送事業等情報サービス業