個人と企業の成長を促す人事・賃金制度の刷新による成果主義

19社の人事情報と成果・賃金情報を統合して戦略的に活用。
適材適所の人材配置の実現で組織改編を支える人事給与システム、
「Generalist®」が、丸井のマンパワーを最大限に引き出す。


徹底した人事改革でデフレ時代に挑む


全社員の約95%を子会社に転籍させ、抜本的な人事改革に乗り出す――2003年10月に小売業大手の丸井を報じた記事が業界を驚かせた。店長や副店長以外の店舗で働く社員の大部分をグループ各社に転籍させる大規模な改革だった。この組織改革に伴い、従来は半年ごとに行っていた社員の人事評価のサイクルを3ヶ月ごとへ短縮し、所属する会社や個人の成果実績、目標達成度などを給与や賞与により機敏に反映させる仕組みに改めた。また、グループ各社間の異動を柔軟にできるよう共通の職務格付基準を使用する人事・賃金制度を導入した。この取り組みは、人員スリム化によるコスト削減を目指したものではない。人事・賃金制度を完全な成果主義に変え、活発な人材交流を行なえる環境整備と、リアルタイムな評価などにより組織の活性化を図り、デフレ時代の到来に対処する大胆な改革なのだ。

スペシャリストを育成する


 この人事制度刷新の背景には、何があったのか。「お客様に喜んでいただけるサービスを提供するため、そして社会に貢献するためには、グループ経営体制への移行と同時にグループ各社や各店舗、一人ひとりの社員が専門性と独自性を発揮して、丸井ブランドの価値向上を図ることが不可欠」と佐々木智之グループ人事部人事企画課課長はその背景を語る。そもそも同社は、1960年に日本で初めてクレジットカードを導入したパイオニアだ。その6年後には業界に先駆けて本格的にコンピューターを導入し、クレジット販売を普及させつつインフラ整備を行なうなど、常に顧客ニーズを先取りした戦略を打ち出し続けてきた企業である。グループ内で人材を有効活用できる環境を整え、個々人に対しては成果主義の徹底でモチベーションを高める。こうした人事制度の刷新は、一人ひとりの社員が、そしてグループ各社が得意分野に専門特化し、スペシャリストとしてより洗練されたサービスを顧客に提供するための布石なのだ。これは、流行の移り変わりの早いファッションアイテムを扱う同社のスピード感と、顧客満足度を高める環境をいかに生み出すかを追い求める企業姿勢が表れた好例と言える。この同社の改革は「グループ経営を活性化させるインフラを整え、社員一人ひとりがお客様や社会に貢献できる企業にしよう」(佐々木課長)というミッションのもと、新システム導入による丸井グループ各社共通の人事・給与のワークフロー確立によって成し遂げられた。

グループ人事部 人事企画課 課長
佐々木 智之 氏

旧システムからの脱却を目指す


 人事情報や給与計算などを一元管理する体制を整える準備は、2001年頃から着々と進められていた。しかし、同グループならではの課題もあった。丸井には、独自のクレジットカード処理を行なう顧客系と商品管理を担う営業系、経理人事などの事務系の3つの基幹システムが並存していた。これらの基幹システムについては、長年にわたり必要に応じて手直しを繰り返してきたが老朽化が進んでいた。そこで同社は総コスト100億円をかけてインフラ整備を行なうことを決め、基幹システムのオープン化による再構築プロジェクトをスタートさせた。人事・給与システムについても、新しい人事制度に合わせてシステムをカスタマイズすると、コストや時間が無駄にかかってしまうことが判明したため、再構築プロジェクトの先鞭として、システムの抜本的見直しが進められることになった。

実績あるパッケージ・ソフトで人事・給与システムを再構築


 新人事制度のシステム化を決めた同社に対し、複数の企業から提案があった。システム選定に際し、佐々木課長は「コストを抑えることと作業時間を短縮すること、特にスピードを求めた」と話す。グループ全体にわたる抜本的な見直しであるために、その体系づくりに少しでも時間をかけたい意向がその背景にあった。そのために短期間で開発できるパッケージ・ソフトによるソリューションが前提条件だった。4つのERPパッケージに絞り、最終的に東芝ソリューションの人事・給与ソリューション「Generalist」が選ばれた。「グループ内の情報一元化や複数の法人の管理が可能である点、人事・賃金制度の改定への対応も比較的容易で、スケーラビリティーと柔軟性を兼ね備えた点に魅力を感じました。さらに、表計算ソフトにデータを書き出せることやWebによる運用が可能だったことも大きい」(佐々木課長)という評価を得たからだ。2003年4月のことだった。そして、プロジェクトがはじまり、同年10月1日には稼働するというスピーディーなシステム移行だった。600社以上への販売・導入実績を持つ「Generalist」の製品の力と東芝ソリューションのシステム構築力が、遺憾なく発揮された。

  • ERPパッケージ/「ERP」は、Enterprise Resource Planningの略。経営資源を有効活用するため企業全体を統合的に管理し、経営効率化を図る手法・概念をもとに編まれたパッケージ。財務会計や生産、販売、物流、人事管理といった企業の基幹業務を統合的に担うシステム開発時に活用される

1万1,000名を超える人材が柔軟に動ける環境を創出


 「Generalist」導入によって、グループ各社で行われていた人事情報の管理と給与計算業務が一元化され、業務フローの標準化によって効率も向上した。「一人ひとりの社員が自らの適性や資質、得意分野を武器に、専門家を目指せる枠組みを作ることができた」と佐々木課長は新制度移行当初を振り返る。こうして、グループ内での柔軟な人材活用と個々人に対する公正な成果主義の徹底という新たな人事制度が運用されることになった。全グループ1万1,000人を超える人材が各法人の枠を越えて頻繁に異動する。その運用に際し「本籍を置く会社と出向中の会社、両方向から人材を見ていくため、個人の職務履歴に両社でアクセスできる機能を追加しました。また、店舗、売り場、部署など職務履歴の項目も細かに設定し直してもらい、1画面で確認できるようカスタマイズしました」と独自の機能を盛り込んだことを佐々木課長は説明する。さらに、「いずれも短期間で対応してくれたほか、仕様の確認や設計の段階から運用を踏まえた提案や、こちらの条件も、とことん解決してくれています」と東芝ソリューションを評価する。

人事・給与部門のシェアードサービス展開も視野に


グループ人事部 人事企画課 課長
佐々木 智之 氏

 「Generalist」の導入、そして新しい人事制度の施行から、2年が経つ。現在ではすべての社員が転籍するまでに、人材の配置転換が進んだ。それでもなお「人事制度は、まだまだ試行錯誤の継続」(佐々木課長)と言う。同社では先を見すえた改善に取り組んでいる。「一人ひとりの成長と共に制度や仕組みも進化していかなければ、本当の意味で成果主義の実践はできません。グループ各社とグループユニオンとが協調して、全員が納得できる体系にまとめていきたい」と佐々木課長は抱負を語る。また、システム面ではキャリアステップの自己申告などいまだ手作業で行われている届出の取り込みや、携帯端末からのアクセス・データを更新できる環境の構築に向けた作業を進めている。グループ内で培ったノウハウをベースに、人事・給与部門のシェアードサービス展開も視野に入れている。グループ各社が専門性と独自性を発揮して丸井ブランドの価値向上を図り、顧客や社会に貢献する取り組みが結果として表れてきた良い例と言えるだろう。創業時から、常に先手的な試みで注目を集めてきた同社。パートナーである東芝ソリューションにも、今後、さらなる新たな一手を模索するために熱い視線を注いでいるに違いない。

SOLUTION FOCUS

人財管理ソリューション「Generalist®

東芝ソリューションが自社開発した人財管理ソリューションパッケージ。1998年から販売され、現在までに東芝グループ(10万5,000人)をはじめ、製造、流通・サービス、建設、金融など多業種で900社以上の販売実績を持つ。先進的人事・給与制度から業種・業界ごとの固有制度まで幅広い機能を有するほか、複数法人の一括管理機能によりシェアードサービスはもちろんグループ企業の情報一元化も可能。評価・給与制度改定にも柔軟に対応できる高い適応力で戦略的な人材マネジメント環境を実現する。大企業向け導入実績としては国内トップシェア、中堅企業向けを含めた総合実績でも国内有力パッケージという位置付けで、ユーザー会による情報交換なども盛ん。

この記事の内容は2005年10月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
株式会社丸井

設立
1931年2月17日

代表者
取締役社長 青井 浩

本社所在地
神奈川県横浜市中区山下町89-1

事業内容
1931年に中野で創業し、戦後は家具の現金販売から月賦販売の事業を復活させ「10カ月払いの丸井」と評判になり急成長を遂げる。1960年には国内で初めてとなるクレジットカードを発行し、流通業に金融サービスを融合させたユニークな事業を確立。この領域でのパイオニアとしての地位を固める。現在は関東圏を中心に29店舗を展開。

URL
https://www.0101.co.jp/