先進の画像処理技術を駆使した東芝の品質検査自動化ソリューション

製品や部品の精密化や小型化、高機能化に伴い、その材料に対しても高い品質が求められています。そこで、材料の製造から製品の加工や組み立てに至る製品製造のプロセス全般において、外観検査などによる品質検査を高度化する動きが見られます。ここでは、長年にわたり研究開発を続けてきた東芝の画像処理技術を活用した外観検査装置の導入実績に加え、良品学習方式により短期間で高度な検査の自動化を実現するAI技術と、人の目に見えない微細な欠陥をワンショットで可視化する光学検査技術を活用する「品質検査自動化ソリューション」についてご紹介します。


高まる品質検査への要求と限界が近い目視検査の課題


これまで、不良品を市場に流出させないことに力を注いできた日本の製造業において、製品の品質を確保する要である外観検査などによる品質検査の工程では、目視による官能検査が主流でした。しかし、この「目視」という人の目による検査には、検査員それぞれの熟練度や体調などにより、検査結果に「ムラ」が生じたり、不良品を見逃したりする課題があります。 

このような中、最近では、製品の精密化や小型化、高機能化が進み、製品とそれを構成する部品や材料に対する品質への要求が飛躍的に高まってきています。それに伴い、より微細な欠陥の発見や製品品質の均一化、欠陥が発生した要因の早期発見など、品質検査に期待される範囲が拡大しています。目視検査が元々抱えている課題に加え、人の目には見えない数ミクロンレベルの微細な欠陥への対応が求められるなど、目視による検査には限界がきているのが実状です。 

このように製品に関する品質への要求が高まる中、東芝が提供するのが、高度な画像処理技術を活用した「品質検査自動化ソリューション」です。

品質検査自動化ソリューションは、「外観検査装置」を中核とし、その性能や機能を高度化させる東芝独自のAI技術や光学検査技術を組み合わせて提供しています。


高速・高精度な画像処理技術で品質検査を支援する東芝の外観検査装置


製造業の中には、これまで人の目視に頼っていた外観検査が抱える「検査のムラ」や「不良品の見逃し」といった課題の解決を目指し、目視検査から、外観検査装置を活用した自動検査に移行する動きが見られます。これにより、製品品質の向上はもちろん、定量的な品質データの管理や、検査員の作業負担の軽減などが図られています。 

独自の画像処理技術をベースとした外観検査装置を、35年にわたり提供し続けている東芝は、その間、装置の性能と機能の高度化を図りながら、製造業のお客さまの外観検査業務を支援してきました。材料を製造する分野、例えば、フィルムやテープのような化学をはじめ、鉄・非鉄、織布・不織布、製紙、電子材・液晶、医薬品の包装材などの幅広い分野で、海外を含む多くの企業への導入実績があります。 

このように、多くの材料で活用された実績のある東芝の外観検査装置は、各材料の表面に発生したさまざまな欠陥の有無とその種類を、カメラを使って検査します。長年の経験で培ってきた独自の検査アルゴリズムと照明技術、さらには材料ごとに異なる各種業務ノウハウを生かしています。 

外観検査の精度を向上して材料や製品の品質改善に貢献したり、検査する条件の設定を自動化して設定変更の頻度が高い多品種小ロットの検査などでオペレーターの作業負荷を軽減したりするといった効果があります。もちろん、属人的あるいは主観的になっていた官能検査を客観的に行えるようになるとともに、判定結果の確認や製品状況の分析などに生かせる証跡データを確保することも可能です。製品品質の均一化や、欠陥が発生する要因の早期発見による製品ロスの削減といった要求に応えるため、さらなる進化を続けています。 

東芝が提供する外観検査装置の中から、いくつかご紹介します。

まず、フィルムや鉄・非鉄などシート状になった製品(ウェブ製品)の表面を検査する、ウェブ外観検査装置「M9100シリーズ」です。これは、既存の製造ラインに合わせて専用のカメラと照明を組み込み構築する装置で、シート状の製品の表面をカメラで撮影し、その映像を画像処理して欠陥を抽出するものです。高速で高精度な東芝の画像処理技術に加え、各種材料への対応や、「薄汚れ」や「穴」「シワ」「コンタミ」などさまざまな欠陥を即座に検出できる特長があります。現在、AIを活用して欠陥の分類を自動化する取り組みも進めています(図1)。

また、鋼材のミクロ組織試験に活用する、非金属介在物測定装置「METALSPECTORシリーズ」は、検査員が目視で行っていた官能検査を、顕微鏡で捉えた画像を高速に画像処理して自動化したものです。さまざまな測定法に対応するとともに、データによる定量的な品質管理と証跡管理ができるようになります。AIを活用した取り組みなど、継続して進化を続けている検査装置です。さらに、医薬品の錠剤やカプセルの包装において、異品種や異物の混入、表面のへこみなどを検査する、PTP外観検査装置「BLISPECTOR」なども提供しています。

このような外観検査装置を、製品や材料の品質検査に活用することで、安定した基準で製品品質が判定できるほか、判定した根拠を確保した品質管理が可能になります。


より進化した独自のAIで高度な品質検査の自動化を短期間で実現


外観検査において、さらなる検査精度の向上や製品品質の均一化、さらには熟練した検査員の技術継承といった大きな課題の解決を求められるお客さまには、AI技術を活用した「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ(以下、AI画像自動検査パッケージ)」で支援します。東芝独自のAI技術により、高度な検査の自動化を短期間で実現するソリューションです。

AI画像自動検査パッケージは、「学習用ソフト」と「判定エンジンソフト」で構成したものです。学習用ソフトが良品学習方式を用いて「学習済みモデル(良品モデル)」を作成し、その良品モデルを使って、判定エンジンソフトが実際の製品の画像データに対して良品なのか不良品なのかの判定を行います。

良品学習方式は、東芝が独自に開発したAIの学習方式です。

例えば、ディープラーニングなどの技術を使ったAI学習の場合、良品と不良品の双方に関する学習用の画像データを大量に準備する必要があります。しかしそこには、AIに学習させるために十分な数の画像データを集めること、特に良品に比べて発生頻度が極端に少ない不良品の画像データをどのようにして大量に集めるか、という課題があります。

そこで東芝は、「良品」の画像データのみを使って学習する技術を開発しました。不良品に関する画像データが不要となり、学習用の画像データの準備にかかる手間と時間を軽減できることから、短い期間で学習済みのモデルを作成できる効果があります(図2)。

また、一般的に、不良品を見逃さない学習済みモデルを作成するためには、良品と判定する「しきい値」を狭くする必要があります。しかし、しきい値を狭くすることで、良品までもが不良品とみなされる過検出(誤検出)が多くなってしまいます。そこで良品学習方式では、良品の画像データを使って良品とされる範囲を繰り返し学習させることで、しきい値を最適化した良品モデルの作成を実現しました。

実際に、ある部品工場で行われている約9万点におよぶ溶接後の検査で検証したところ、熟練の検査員による目視検査で31件発生した不良品の見逃しに対し、良品モデルを使ったAIによる見逃しはわずか2件でした。この結果からも、非常に高い精度で画像を診断できていることがわかります。

この良品学習方式を活用したAI画像自動検査パッケージは、東芝の外観検査装置への組み込みはもちろん、お客さまの既存の外観検査装置との連携やクラウドでの活用なども可能なため、お客さまそれぞれの検査環境に合わせてご活用いただけるソリューションです。


数ミクロンレベルの微細なキズを検出する光学検査技術


東芝では、目視では確認できない数ミクロンレベルの微細な欠陥を発見する高度な技術の研究開発とその実用化への取り組みを進めています。

これまでにご紹介してきた外観検査装置やAI技術では、カメラで撮影した画像を使ってその品質を検査することから、目に見えない微細な欠陥をいかに見つけるかが大きな課題です。そこで、「光学検査技術」の進化が、さらなる品質検査の高度化において大きなカギになると考え、「OneShotBRDF光学検査技術」を開発しました。

光学検査において、光の特性は重要な要素です。光は、対象物にあたるとその表面で反射します。対象物への光の入射と反射の角度が同じになるのが正反射(鏡面反射)です。一方、入射角に対してさまざまな方向に反射することを拡散反射(乱反射)といい、例えば、対象物の表面が粗かったり、表面にキズなどの凹凸があったりする場合に起こります。ここでは、正反射した光を「正反射光」、拡散反射した光を「散乱光」と呼びます。

通常、光学検査を行う際、カメラは反射した光が最も強い正反射光を捉える位置に設置します。そのため、対象物はよく見えますが、人の目では確認できない微細なキズなどを認識することは困難です。キズを反射した散乱光を捉えるために、照射する光の角度やカメラの位置を調整しようとしても、散乱光は無数にあるため、容易ではありません。

そこで東芝では、カメラのレンズとイメージセンサーの間に「多波長同軸開口フィルタ」という特殊なフィルターを加えて正反射光と散乱光を物理的に色で分離する技術を開発しました。検査する対象物の表面状態をワンショットで撮影するだけで、目視では識別が困難な数ミクロンレベルのキズや凹凸を検出し、色でわかりやすく見える化します。すべて光学的に行うため、画像処理が不要なところが、大きな特長です(図3)。


製造業の課題解決に向けて進化する品質検査自動化ソリューション


今回ご紹介した先進のAI技術や光学検査技術と、これまでに培ってきた外観検査装置のノウハウを組み合わせることで、製造業において製品品質の向上に欠かせない品質検査の課題解決に貢献していくことを、東芝は目指しています。

製造業は企業間の競争が激化し、製品の品質向上への要求はますます高まっています。目視では確認できない微細な欠陥であっても、それを見つけて除外したり、また品質のバラツキを抑えて安定した品質を確保したりした上で、製品を出荷しなければならなくなってきているのです。
さらに製造業には、人材不足や熟練者の技術継承といった課題も山積しています。

このようなお客さまの課題を解決するため、長年の実績とそこで培ってきたノウハウを生かした東芝の品質検査自動化ソリューションは、今後も進化を続けていきます。

  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2022年2月現在のものです。

>> 関連情報

Vol.39記事