DiGiTAL T-SOUL
Vol.
34

データを価値ある形に変え、よりよい未来を共に創造するエコシステムの構築 データを価値ある形に変え、よりよい未来を共に創造するエコシステムの構築

長谷川 圭一 Hasegawa Keiichi 東芝データ株式会社 購買データ事業部 事業部長 宮崎 真悟 Miyazaki Shingo 東芝データ株式会社 技術部 部長
吉本 武弘 Yoshimoto Takehiro 東芝デジタルソリューションズ株式会社 O&M・IOTソリューション&サービス部 エキスパート

世界有数のサイバーフィジカルシステム(CPS)テクノロジー企業を目指している東芝グループは、現在、さまざまな産業分野から日々生まれる多種多様なデータを掛け合わせて、新しい価値を生み出す「データサービス事業」に取り組んでいます。その一環として、データをつなぎ合わせていくための新会社、東芝データ株式会社(以下、東芝データ)を設立しました。東芝データは、東芝グループの持つ優れたセキュリティ技術とノウハウを基盤に、購買データをはじめとする実社会で収集した生活者のデータを、高度な技術で分析し、価値ある形に変えて社会に還元することで、豊かな未来を創造するデータ循環型のエコシステムの構築に取り組んでいます。ここでは、東芝データのビジネスモデルとその提供価値についてご説明します。

データを価値に変える循環型のエコシステムとは

東芝グループでデータサービス事業を実現するためには、素早い意思決定のもと従来の常識にとらわれない新しいビジネスモデルが重要と考え、2020年2月に東芝データ株式会社を設立しました。

東芝データが目指す循環型のエコシステムとは、次のようなものです。

小売店舗やメーカーといった実社会の各種事業者は、生活者のデータを本人の同意を得て、東芝データのデータサービスシステムに蓄積します。東芝データは、さまざまなデータを掛け合わせることで、事業者に対してデータの活用を支援します。事業者はデータを活用して高度なマーケティングや広告配信、地域の活性化につながるサービスを提供します。これにより、生活者は日常生活をより便利に・快適に・お得にするサービスを受けることが可能になります。このように、日々生まれるデータを掛け合わせて価値ある形に変えていく仕組みが循環型のエコシステムです(図1)。

図1 循環型のエコシステム実現に向けて

東芝データは、データサービス事業の領域を拡大させるために、自社独自のサービスは行わず、東芝グループの事業会社や外部パートナーと連携し、データサービスのエコシステムを実現します。

このエコシステムを機能させるにあたり、先行して取り組んでいるのが、生活者の同意に基づいて得られた購買データの活用です。

例えば、過去の購買データから各店舗の混雑状況を分析し、有効日時を指定したクーポンを発行することで、顧客の来店時間の分散につなげて店舗内の混雑を緩和するなど、新型コロナウイルス感染リスクの軽減に貢献するような施策を検討しています。

また、購買データをすぐに分析して活用できるメリットを生かして、購買ランキングや急上昇の売れ筋商品などの購買リコメンド情報を、デジタルサイネージや個人のスマートフォンなどにタイムリーに送信する販売促進などの施策も検討しています。

そして東芝データでは、次のステップとして健康データや人材データなどの活用も検討しており、利用するデータの範囲を広げていきます。

長谷川 圭一

東芝データ株式会社 長谷川 圭一

生活者のデータを安全に預かり、社会に価値を提供するための取り組み

このようにさまざまなデータを預かり、社会に価値を提供する仕組みが、東芝データが現在構築しているデータサービスシステムです。ここで重要になるのが、生活者一人ひとりの暮らしに関するかけがえのない記録であるパーソナルデータを、過ちや誤解を生むことなく、安全にお預かりし、安心して利用してもらえる仕組みをつくることです。

もちろん、生活者から預かるデータは、本人の同意を得たものです。しかし、生活者にとっては、データを預けた後に、自分のどのデータがどこでどのように使われるのかを事前に把握して利用方法を設定できることや、その状況を簡単に確認できること、預けたデータを自分の意志で容易に削除できることが重要です。つまり、生活者がデータを預けることに対して不安を感じない仕組みが必要となります。そこで、生活者本人が、預けたデータの利用方法を自分で制御できるようにします。

また、生活者のデータを、各種事業者を通して、東芝データが安全に受け取るための入り口を準備します。受け取ったデータは、データの種類ごとに分けて保管します。購買や健康、人材などの各種データの取り扱いにはそれぞれ異なるルールがあるためです。このように、データを分散して安全に保管し、生活者の意思やデータの種類ごとに異なる取り扱いルールに矛盾しないように、データ同士を適切に連携させながらデータの価値を高め、生活者や社会につないでいくことが重要となっていきます。

このパーソナルデータを社会に役立てていくデータサービスシステムづくりでは、東芝グループに限らず、各ジャンルに精通した有識者が一体となって議論を重ねながら、生活者一人ひとりが安心して利用できる「信頼されるデータ循環型エコシステム」の構築を目指しています。

宮崎 真悟

東芝データ株式会社 宮崎 真悟

「スマートレシート」に欠かせない購買データの活用

データを価値ある形に変えて社会に還元する仕組みが構築できると、どのようなことが可能になるのか。東芝データが運営を支援する「スマートレシート*1別ウィンドウで開きます(東芝テック株式会社)」を例にご紹介します。

スマートレシートは、東芝のグループ会社である東芝テック株式会社(以下、東芝テック)が2014年から展開している電子レシートサービスです。生活者が買い物をしたとき、POSシステム*2と連携して紙のレシートの代わりにスマートフォンに電子化したレシートを届けます。電子レシートの情報は、生活者から同意を得てスマートレシートセンターでお預かりし、生活者が自分の電子レシートをいつでもどこでも見られる仕組みです(図2)。

1:スマートレシートは、東芝テック株式会社の登録商標です。
2 POSシステム:Point Of Sales(販売時点情報管理)システム、買い物の精算や支払いをしてレシートを発行します。
図2 東芝テック株式会社の電子レシートサービス スマートレシート

スマートレシートには、生活者にとって便利な「電子レシート機能」と店舗およびメーカーの販売促進を支援する「販促機能」があります。

東芝テックが実施したレシートに対する意識調査で見えた、「レシートで財布が膨らむ」「レシートの印字が見づらい」「レシートを紛失する」など紙のレシートに対する生活者の不満を電子レシート機能が解消します。さらに生活者にとっては、レシートの情報から自動で家計簿をつけてくれたり、購入した市販の医薬品の中から医療費が控除される対象の商品を自動で識別し集計してくれたり(セルフメディケーション税制への対応)するといった便利なサービスを受けることが可能になります。

また店舗では、キャッシュレス決済と電子レシートとの連携で、レジでの会計にかかる時間の大幅な短縮や、非接触での対応が可能となります。

一方の販促機能は、各商品のメーカーが、電子レシート上に簡単にキャンペーンの応募マークを表示させることができ、生活者も負担なく応募できるため、少ないコストでキャンペーンの認知率や応募率が向上することが期待できます。応募の情報から、購買傾向の把握ができるほか、生活者へ直接働きかける、優良顧客を見極めるといったことができるようになります。

より多くのデータを収集して活用し、質の高いサービスに進化させることで、生活者、店舗、メーカーにおいて「三方よし」の流れをつくることを目指しています。

購買データ活用で、大きな効果を実現

スマートレシートを使った、購買データの具体的な活用事例も登場しています。沖縄県で2018年9月から2019年4月までの約7か月間にわたり、同県の9つの企業から64軒の店舗に参画いただいて「生活利便性向上プロジェクト」と題した実証実験を行いました。スマートレシートの普及とともに、業種や競合の垣根を越え、各店舗が連携して相互送客の販売促進を図るという国内初のプロジェクトでした。

このプロジェクトでは、メーカーや小売店舗が単独で行うキャンペーンと異なり、他店舗のクーポンをお互いに発行します。例えば、対象店舗であるスーパーマーケットで買い物をした生活者に対して、近くのドラッグストアのクーポンを配信するなど行い、プロジェクト全体で来店数の向上につなげました。期間中、スマートレシートの利用者が約7000人増え、またスマートレシートの利用前と比較すると店舗への来店頻度がひと月に1回、購買いただいた金額がひと月に2000円増加しました。

この購買データを活用した試みで、店舗では客単価や客数が、メーカーでは売り上げが増加するという双方にとってよい効果が生まれることを実証できました。

今後は、地方創生の取り組みの一環として、福島県会津若松市の「スマートシティ会津」での取り組みも加速していきます。東芝データは、スマートシティ構想に参画・支援するため、先端テクノロジーの実証事業や社会実装の支援を強化する開発拠点を、同市内にあるスマートシティAiCTの中に開設しています。地域通貨とスマートレシートを連携させ、リアルタイムで購買データを分析しておすすめの商品をリコメンドするなど、地元の魅力的な商品を観光客や地元の人たちに知ってもらい、地域の活性化を支援していきたいと考えています。スマートレシートで得た購買データを、地域の市民や住民、法人、サービス事業者などに付加価値として還元することで、優れたシナジーが生まれることを目指していきます。

今回ご紹介したスマートレシートでの購買データ活用などが、東芝データのデータサービスシステムとつながることで、データをさらに価値ある形に変えて社会に還元することができると期待しています。これからも、データサービス事業を通じて、世の中の動きに柔軟に対応しながら、みなさまに信頼されるエコシステムの構築に取り組んでいきます。ご期待ください。

女性2名の写真

データサービス事業を推進する東芝データ社員
左から、プロモーション担当の倉田佳織、デザイン担当の寺岡佳子

この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2020年9月現在の情報です。

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