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Vol.21 東芝の新IoTアーキテクチャー「SPINEX」登場 産業界のビジネスモデルを変える、日本発のデジタル革新

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#04 価値創出を加速する、IoTスタンダードパック導入事例 神戸製鋼所様「コンプレッサM2Mクラウドサービス」 株式会社東芝 インダストリアルICTソリューション社 インダストリアルソリューション事業部 オートモーティブ&インダストリーソリューション技術部 部長 高口 芳宣 株式会社東芝 インダストリアルICTソリューション社 インダストリアルソリューション事業部 オートモーティブ&インダストリーソリューション技術部 主務 秋山 誉寛

東芝IoTアーキテクチャー「SPINEX」のエッセンスをふんだんに盛り込んだ、「IoTスタンダードパック」の活躍の場が広がっています。中でも、見える化と遠隔監視を迅速にスタートできるという導入の容易性と、ネットワークの安定性の確保や通信コストの最適化に貢献するエッジコンピューティング技術で高い評価を獲得。特に製造業では、製品とIoTスタンダードパックを一体化したサービスとして、市場に展開させようという動きも始まっています。今回はこれら先進的な取り組みを進めているお客さまの中から、世界の産業と社会の発展を支えるグローバル企業である株式会社神戸製鋼所様のコンプレッサM2Mクラウドサービス「Kobelink」についてご紹介します。

デジタルトランスフォーメーションによる
製品サービスビジネスの革新

製造業が新たな時代を迎えています。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせて、製品とビッグデータ、ユーザーをグローバルに結びつけるデジタルトランスフォーメーションが急速に進展しようとしています。中でも注目すべきは、製品を設計・製造し、販売するだけでなく、製品を使うことで得られるさまざまなデータから見いだされる価値の創出までをも事業として捉え、新たなサービスを生み出そうという流れです。デジタルトランスフォーメーションへの積極的な取り組みは、製造業が国際的な競争力を発揮していく必須の条件といえるでしょう。

この潮流に対して、グループの統一ブランド「KOBELCO」として世界的に名高い、株式会社神戸製鋼所様(以下神戸製鋼)でも早くからビジネス変革を模索されていました。日本や東南アジアで高いシェアを誇り、世界の産業界の省エネルギー化を牽引してきたコンプレッサ製品の高付加価値化です。

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汎用コンプレッサと
グローバル通信サービスを一体化

コンプレッサは、空気やガスなどの気体を圧縮する機器です。電力・化学プラントなどの心臓部として、あるいは自動車や電子機器、鉄鋼などを製造する工場における製造ラインの原動力としてなど、産業や社会を支える最重要な設備の1つといえます。従って、コンプレッサにはダウンタイムを極限まで減らし、継続的な安定稼働を確保することが求められています。保守やメンテナンス、故障発生時の復旧対応などは、常に効率的かつ迅速に行われなければなりません。ところが、従来は人手による巡回点検が中心。異常が発生した時は、連絡を受けた専門の担当者が現場に赴き、コンプレッサの状況を確認した後で必要な部品の手配や交換を行うなど、復旧させるまでには相応の時間を要していました。

このような課題を解決するため、神戸製鋼では、世界最高クラスの省エネルギー性能と低騒音を実現した新型の汎用コンプレッサ「Emeraude(エメロード)-ALE」にIoT*技術を活用。東芝の見える化・遠隔監視サービス「IoTスタンダードパック」をIoTサービス基盤に採用し、グローバルな遠隔通信を可能とした、コンプレッサM2Mクラウドサービス「Kobelink」として、市場への展開を開始されました。世界各地で稼働するEmeraude-ALEから、人手を介さずにデータを収集・蓄積し、リアルタイムな状況を見える化。このグローバル通信サービスをコンプレッサ製品と合わせて提供することで、継続的な安定稼働やタイムリーなサポート、効率的な機器や保守情報の管理をはじめ、幅広い付加価値の新たな創出を目指します(図1)。

* IoT:Internet of Things (モノのインターネット)

図1 コンプレッサM2Mクラウドサービスの概要

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激化するコンプレッサ市場
IoTサービスがアドバンテージに

高口 芳宣

神戸製鋼がIoTスタンダードパックを採用された第一の理由は、システムの早期構築により、クイックスタートが可能だったことです。通常、遠隔通信を行うようなシステムを立ち上げるには、必要なハードウェアとソフトウェアを取り揃え、これらをつなぎ、数多くの検証とエンジニアリング作業を行う必要があります。しかし、グローバル競争が激化するコンプレッサの市場においてアドバンテージを獲得するためには、システムの構築に多くの時間とコストを費やしている余裕はありません。コンプレッサと合わせてプラグ&プレイ機能を持つエッジゲートウェイ装置を設置することで、最小限の事前準備とエンジニアリング作業によりサービスを開始できるというIoTスタンダードパックが持つ導入の容易性は、神戸製鋼のニーズに応えるものでした。

またエッジコンピューティング技術が活用できる点も高く評価されました。コンプレッサで今何が起こっているのかを精緻に把握するためには、温度や圧力といった膨大かつ多種多様なデータを時系列で収集し、多角的に読み解くことが必要です。一方で、Emeraude-ALEをはじめとしたKobelinkの導入が世界各地で進んでいくことで、通信量が爆発的に増加することが予想されました。IoTスタンダードパックは、クラウド側とデータを常時やり取りすることなく、エッジ側だけで機器の状態の把握や通信制御が可能です。ネットワークへの負荷を軽減して高い安定性を保ちながら通信コストを最適化し、さらにはエッジ側での処理により即応性も高いというエッジコンピューティング技術は、神戸製鋼の新たな挑戦を成功に導くために必須のテクノロジーでした。

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IoTサービスによる
グローバルビジネスの拡大に向けて

秋山 誉寛

IoTスタンダードパックをIoTサービス基盤としたKobelinkは、仮運用でその有効性が検証された後、2016年10月から世界の市場に向けてサービスを展開。プロジェクトの開始からここまでに要した期間は、わずか4ヶ月余りという早業でした。現在、国内外の納入先で試行運用されており、神戸製鋼の保守・品質・サービス部門において、世界各地から収集したデータをコンプレッサ製品の故障予知や保守サービスの改善に役立てようとされています。今後は、Kobelinkを導入されたお客さまの管理部門において、リアルタイムな状態の監視、さらには稼働管理や保守管理の効率化で大いに貢献していただく予定です。またIoTスタンダードパックであらかじめ準備し提供している、UXデザイン*の手法を採り入れた直観的で見やすい画面も高い評価をいただいており、万が一の障害やサポート対応の迅速化に大いに役立つのではないかと期待しています。

* UXデザイン:User eXperience (顧客の経験価値)を高めるための人間中心設計手法を取り入れたデザイン方法

IoTスタンダードパックが持つ導入の容易性を存分に生かし、神戸製鋼のさまざまなコンプレッサ製品で、グローバル通信サービスが提供されていく予定です。

将来は、コンプレッサ製品の運転の記録や状態のデータを蓄積・分析してIoTデータ(株式会社東芝)の活用を次の段階に進めることで、メンテナンス部品を交換するタイミングの最適化や製品の高信頼化、ライフサイクルコストの低減など、データから生み出される価値は無限に広がっていくでしょう。IoTスタンダードパックが、コンプレッサ製品を導入された企業に確かな安心と一層の省エネルギー化を提供し、産業と社会の発展にますます貢献していく。その結果、神戸製鋼のグローバル競争力のさらなる向上に貢献できれば、こんなに嬉しいことはありません。

※この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2017年7月現在のものです。

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