信頼を築き、人の想いをデジタルでカタチにする

半導体メーカーの製造現場が抱える課題解決に向けて、工場のスマートファクトリー化の提案や支援に営業として取り組む関 玲奈。お客さまとの信頼関係を築き上げることから生み出される安心感のもと、お客さまにとっての最適解を追求してきた。そんな関にとっての“デジタル”について語ってもらった。


信頼を紡ぎ、最適解を追求する


私は、国内の半導体メーカーを担当する営業です。製造現場が抱える課題を解決するために、スマートファクトリー化の提案や支援を行っています。スマートファクトリーとは、IoTやAIなどを活用して、生産性や品質を高めた工場です。工場内を単に自動化するだけではなく、現場の設備・人・データを連携し、最適な意思決定を支援する“自律的な工場”を目指します。日本の製造業のうちスマートファクトリー化に取り組んでいる企業は、約3割にとどまっているといわれています。製造現場には、長年積み重ねられてきた知識とノウハウが存在します。それらとデジタル技術を結びつけ、スマートファクトリーの実現を目指し支援することが私たちの役割だと考えています。東芝グループに蓄積されている製造現場のノウハウや経験を生かし、現場の方が安心して使えるしくみをお客さまと一緒に考え、提案・支援しています。

営業活動の中で、私が最も大切にしていることは「信頼」です。どんなにお客さまの立場に立ってより良いと考えられる提案をしたとしても、相手からの信頼がなければスムーズに話が進められないこともあります。この信頼というものは一朝一夕で築けるものではなく、日々の小さな積み重ねから生まれるものだと感じています。

私は現在、九州での新規の顧客開拓に取り組んでいます。簡単に会いに行けない遠方のお客さまと一から関係を築かなければならないため、信頼を紡ぐ大変さと同時に大切さを学びました。例えば、そこで意識しているのは、なによりも先にお客さまとの距離を縮めることです。顔も名前も業務内容も、お互いをよく知らない状態からになりますので、些細(ささい)なことでもお客さまの話を丁寧に聞くことから始めるようにしています。そうすると、お客さまとの会話の中に見え隠れする業務における課題感や仕事へのこだわりだけでなく、プライベートな話題からその方の人となりが垣間見える瞬間があります。次の訪問時にその内容を話題にすると、「よく覚えていたね」と喜ばれることも多く、距離が縮まったことを実感します。単なるビジネス上のやり取りに留まらず、人と人としての信頼関係を築くことが、結果として大きな価値につながるのです。

また、お客さまの立場に身を置いて、お客さまが抱えている課題に最適な提案を行うことも意識しています。そのために、導入を判断する部門や、実際に活用する現場のキーマンを巻き込みながら、最適解を共に導きだすことに努めてきました。お客さまの顔を直接見てその表情や仕草を感じ取るために足を運んだり、スピードを求められる場面ではリモートを活用したりと、局面ごとに柔軟に動くようにもしました。現場が必要とすることを見極め、場合によっては「今はまだ導入しない方が良い」と率直に伝えることも重要です。営業としての短期的な成果よりも、お客さまへの貢献と長期的な信頼関係の構築を重視する――それが私の営業スタイルです。こうした姿勢を貫く中で、「ちゃんと“わが社の立場”で考えてくれるね」という言葉をいただけたことが、今の私の自信につながっています。

これまでで最も印象に残っているのは、スマートファクトリー化に向けた上流工程の要件定義のプロジェクトです。さまざまな課題が複雑に絡み合い計画どおりに進行しなかった時期があり、その解決に向けて当社の技術部門やお客さまと粘り強く議論を重ね、一丸となってお客さまにとっての最適解を模索しました。プロジェクトの終わりに「東芝が持つ知見や提案力を改めて認識できた。今後も強力なパートナーとして引き続き期待します」と伝えられ、胸が熱くなりました。営業という仕事の本質は、やはり人と人との信頼関係の上にあるのだと、改めて実感した出来事です。

最近、自身が新規開拓の活動により培ってきた経験を社内の多くの人の前で発表したり、後輩社員のサポート役であるメンターを経験したりしました。社内での発表や後輩からの疑問の投げかけから、人に物事を伝える難しさを実感します。自分の行動を見つめ直すきっかけになり、相手にうまく伝えるために模索することが学びになっています。こうした経験をとおして、自分がどのような考えをもってお客さまに提案をしてきたのかを改めて整理することにつながり、営業としての軸がより明確になりました。


社会とデジタルの変化を楽しみ、新たな価値を生み出す


私たちは、「製造業を元気にする!」というビジョンを掲げて活動しています。この言葉には、日本の製造業の力を世界に発信したいという強い想いが込められています。

生成AIが私たちの生活に驚くほどのスピードで浸透してきているように、先進の技術が社会へもたらす影響は計り知れません。しかし、どれほどのデジタル技術が生まれ進歩したとしても、最終的に価値を生み出すのは「人」です。デジタルの力は、人の想いを正しく理解して初めて意味を持ちます。お客さまの「こうしたい」「こうなりたい」という気持ちを丁寧に受け止め、それをデジタルの力で実現していく。それが営業としての私の使命だと感じています。

そのためにも最近では、お客さまの現場課題への対応策として、生成AIの活用を提案することにも力を入れています。生成AIにより業務プロセスの効率化や新しい価値創出を実現できる可能性があることを示し、より実践的なソリューションをお届けできるよう努めています。こうした提案は、私たち自身の知見を深めるだけでなく、お客さまのビジネス変革を後押しする重要な一歩になると考えています。

デジタル技術の浸透で、学びのスタイルも大きく変化しました。オンラインの教育プログラムの内容も充実し、時間や場所に縛られずに学べるようになっています。私が受講した中で特に印象的だったのは、1年間にわたり取り組んだ、デジタルトランスフォーメーション(DX)人材育成プログラムです。オンラインだからこそ実現した、日本国外に在住の方とのセッションや、英語でのプレゼンテーションをとおして、DX時代に求められる組織運営やビジネス戦略、リーダーシップに関する実践的なスキルを磨くことができました。各社の前線で活躍する参加者同士の情報交換からは、これまで思いつかなかったお客さまへのアプローチ方法や思考などを得ました。この経験は、今後の営業活動において新しい視点をもたらす貴重な学びとなっています。

長くお客さまと関係を築くことで信頼は深まりますが、社会や技術は常に進化しています。その変化に対応するため、営業スタイルにも柔軟さと多様なアプローチが欠かせません。目覚ましく進化するデジタル技術を扱う営業として、テクノロジーの進化を恐れず、変化を楽しみながら学び続ける力を身につけたい。そして、人の想いに寄り添ったデジタル活用を通じて、新しい価値を届けていきます。

デジタル技術は社会のあらゆる領域に浸透し、製造業の在り方そのものを大きく変革する時代になると考えています。お客さまのためになる新しい価値は何か、デジタル技術をどのように活用するとそれを成しえるのか。デジタルの力で製造業をより豊かにすること、それが私のこれからの目標です。お客さまと東芝が共に挑戦し、業界をリードする取り組みを実現する未来を目指し、ものづくりの新しい可能性を切り拓(ひら)いていきたいです。

大切なことば

「前向きに、周りへの感謝を忘れず」
困難なことにも前向きに取り組み、挑戦の機会をくださる方々や支えてくれる周りの方への感謝を忘れないようにしています。その背景には、幼い頃に両親から学んだ「ひとへの感謝を忘れない」という教えがあります。この言葉は私の価値観を形成し、今の自分を支える軸となっています。振り返ると、これまでの仕事の節々で多くの方に助けていただきました。だからこそ、私も誰かの支えになれるような存在になりたいと思っています。

関 玲奈(SEKI Rena)

東芝デジタルソリューションズ株式会社
スマートマニュファクチャリング事業部
セミコンダクタソリューション営業部
営業第二担当


入社以来、国内大手半導体メーカーを担当し、スマートファクトリー化の実現に向けた課題解決支援に従事。東芝グループが製造現場で培ったノウハウやシステムを基に、お客さまの現場に最適な提案をしている。

執筆:佐々木 千之

  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2025年12月現在のものです。
  • この記事に記載されている社名および商品名は、それぞれ各社が商標または登録商標として使用している場合があります。

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