最後の意思決定は人
デジタルは人の強みを支える存在

AIテクノロジーの開発というデジタルの最前線にいる、伊部早紀。意思決定の主体は人であり、デジタルはそれを支える存在であることを常に念頭に置いているという。人にしかできない「経験に基づいた直感」「新たなものを生み出す創造力」「変化への柔軟性」を最大限に生かせる未来をつくりたい──。デジタルの最前線で仕事をしながらも、私生活ではアナログ派という人間味あふれる伊部にとっての“デジタル技術”について語ってもらった。


AIテクノロジーを活用した自然言語処理への挑戦


業務改革の推進やテレワークの導入が拡大している今、企業が保有する書類を電子化したいという需要が高まっています。請求書や申込書など、企業内には多種多様な紙文書を扱う業務が数多く残っており、業務改革やテレワークを進める上で障壁のひとつになっています。このことから、紙文書を読み取り、電子データ化するOCRの技術に期待が寄せられています。
※OCR:Optical Character Recognition(光学文字認識)

私が携わっている「AI OCR」は、活字を認識するだけでなく、手書き文字の認識、表の検出、そして記載項目の判定などを、さまざまなAI技術を組み合わせて実現するものです。その中で、私が担当していた研究は、認識した文字が意味を成すように認識の誤りを補正する技術や、個々の文字の位置を特定する技術といった文字認識の精度向上に関する領域です。またユーザーがストレスを感じずサービスを使えるように、認識処理の高速化も研究してきました。

現在はこの文字認識に、学生時代の専門分野である自然言語処理技術を応用し、さらなる認識精度の向上を目指しています。自然言語処理技術とは、私たち人間が日常的に書いたり話したりしている自然な言語をコンピューターに処理させる技術です。

自然言語処理の専門性を突き詰めるためにも、さまざまなAI分野に携わりたいと思っていました。周辺あるいは全く異なる分野に触れることで、違う視点からも物事を見られるようになり、またそこで得た知識やアイデアを自分の専門分野で生かすことができると考えたからです。今の仕事はまさに願いどおり。今まで知らなかったことを知ることができ、毎日が非常に刺激的で面白いです。


人にしかできないことは人が デジタルはそれをサポートするモノ


仕事では最先端の分野に携わっている私ですが、日頃の生活ではデジタルよりもアナログ派です。例えば、自分が組んだプログラムについて、なぜそのように書いたのかなど、資料に残すほどではないちょっとしたことは、手書きでノートに記録しています。ノートを使う理由は、文字だけでなく図や絵を描いたりするのに手軽で便利なことに加え、ページをパラパラとめくるだけで、振り返りやほかの問題へのヒントを見つけることができるからです。

デジタルはさまざまな形で身近にあふれていますが、大切なのは人の在り方。最後の意思決定を行う主体は人であり、デジタルはあくまでもそれを支える存在です。経験に基づいた直感や、創造力、変化への柔軟性など、人にしかできないことを最大限に引き出せるようにサポートしてくれるモノ。そんなデジタルが介入するべき領域と、そうではない領域をしっかりと見極め、人とデジタルがちょうどよい割合で共存する未来をつくっていきたいと考えています。

10年後は、自然言語処理の新規事業を立ち上げ、技術開発のリーダーに就いていたい。人ならではの強みが生かされるように、人が持つ大きな特徴である「言語」を活用した画期的なソリューションを生み出していきたいです。

大切なことば/好きな機器

「柳のように生きる」。大学時代、研究が滞り落ち込んでいた私に、友人がかけてくれた言葉です。柳の枝はとてもしなやかで、強風が吹いても、雪が降っても決して折れることはなく、元の状態に戻ります。仕事や私生活で困難に直面したときは必ず、この言葉を頭に浮かべます。そうすることで、めげずに根気よく挑戦する意欲が生まれるからです。

 また、クラシックピアノを習っていたことから、今でもピアノを弾くことが趣味です。自宅にある電子ピアノのヤマハ Clavinovaは、録音や編集の機能もあるため、ピアノ以外の音色を楽しんだり、一人で好きなときに連弾や2台ピアノ曲を演奏できたりと、コロナ禍においても、とても重宝しています。

愛用の電子ピアノ
ヤマハ Clavinova

伊部 早紀

東芝デジタルソリューションズ株式会社
ソフトウェアシステム技術開発センター コアテクノロジー開発部
知識・メディア処理技術開発担当


学生時代は自然言語処理技術に、その中でも機械翻訳の研究に専念。入社後、AIテクノロジーの開発に携わり、文字認識精度の向上や処理の高速化などの研究に従事。現在は自然言語処理技術を応用した文字認識の精度向上に取り組んでいる。言語への関心が高く、英語はもちろん、ドイツ語、イタリア語、中国語、フランス語など約10カ国語の学習経験、そしてオペラを演じた経験がある。

関連情報

東芝のCPS別ウインドウ 株式会社 東芝:事例や最新動向など、東芝のCPSへの取り組みをご紹介しています
コロナと共存するニューノーマル時代のデジタル変革 DiGiTAL T-SOUL Vol.35でご紹介しています

次の記事へ

このマークが付いているリンクは別ウインドウで開きます。