第7回 鉄道技術展2021[展示会・イベント レポート]

展示会レポート

本展示会では東芝グループブースにご来場いただき、誠にありがとうございました。

今回の展示内容についてご紹介します。

今回、本展示会初出展となる東芝検査ソリューションズ株式会社は、これまで自動車や航空機の製造現場で活用されてきた「3D超音波検査装置 Matrixeye™(マトリックスアイ)」を、レールシェリング検査やトロリー線検査、橋梁部鋼床版検査といった鉄道等のインフラ関連分野に応用した、4つのシステム/ソリューションを展示しました。

まず最初にご紹介するのは、「3D超音波レールシェリング画像化装置 シェリングTRI(トライ)」(手押しタイプ)と、ハンディタイプの「3D超音波レールシェリング画像化装置 シェリングTRImini(トライミニ)」で、これらは鉄道レールのシェリング(横裂や水平裂と呼ばれるレール頭頂部に発生する欠損)検査向けに開発し、既に鉄道関係に納入し運用頂いているシステムです。

従来のシェリング検査では、主に単眼タイプの超音波による検査が使われていますが、この方法では検査した超音波の波形を目視で判断する必要があり専門技能が必須であること、更に検査結果を現場でメモ等に残して記録していますが、過去の実波形データとの比較が困難でシェリングの進展状況確認といった傾向管理が困難との課題がありました。今回のシェリングTRIおよびTRI miniは、世界初の「3次元開口合成法」と「フェーズドアレイの融合」機能を備えた「Matrixeye™」を利用して検査結果を容易に判断でき、かつ再現性のある画像として表示/保存/活用でき、シェリングの場所、大きさ等を瞬時に確認できるので、誰でも専門技能を必要とせず簡便に検査ができ、過去の結果も容易に比較して傾向管理を行うことができる画期的なシステムです。更に現場の作業員の方が使い易いように、検査対象の路線・駅名等も登録して検査結果をデータベースとして活用できる等、検査作業の大幅な軽減・効率化を実現しています。

このシステムはお客様の運用に合わせて、手押しタイプ:TRIとハンディタイプ:TRI miniの2つがあります。

TRIでは、レールの上を手で押しながら動かすと、装置下部に取り付けられたプローブから超音波を発信、レール頭部のシェリング(欠損)を検査して、装置上部のタッチパネルモニターに画像化してリアルタイム表示します。
プローブは風船型シューと呼ばれる特殊なシューに覆われているため、レールの片べりがあった場合でもそれに沿って密着して検査できます。超音波検査に必要な水分は、搭載された水タンクから供給され、レールに付着した汚れやサビを落としながら進む回転ブラシも搭載でき、現場での運用に配慮した機能を備えています。

通常、シェリングが発生したレールについては、その損傷程度にも寄りますが、一本丸ごと交換する場合もあり、その際は数百万円オーダーでの費用及び膨大な労力が必要となるケースがあります。このようなことからも、損傷の程度に応じて部分的に補修等の、適切な保全が望まれています。

そのようなニーズにも対応できるように、「シェリングTRI(トライ)」でレール頭部のシェリングを把握したのち、その箇所にさらに「シェリングTRImini(トライミニ)」を使って、頭部と側面の両方からより詳しくシェリング(横裂や水平裂)の状態を確認することで、必要に応じて部分的な補修を行うための最適なレールの維持管理をサポートすることを可能としています。

これらのシェリングTRIおよびTRI miniは、3~4年ほど前から鉄道業界向けに開発され、一部JR等の現場で活用されているもので、今回私鉄や地下鉄の鉄道会社様にも広くご紹介するため、鉄道技術展開催の機会をとらえて、メイン商品として展示いたしました。

次にご紹介するのは、「交通システム用トロリー3D超音波探傷装置」で、このシステムは新交通システム等で使用されているトロリー線を検査するシステムです。
今回ご紹介するトロリー線はステンレス鋼材(SUS)とアルミの異種金属を結合した複合剛体であり、使用により剥離する可能性があることから、優先順位を決めて目視確認や単眼タイプの超音波検査を行っていますが、目視確認には限界があり、膨大な作業時間がかかる上に、単眼タイプの超音波検査では判断に専門技能が必須となっている等の課題がありました。

この、「交通システム用トロリー3D超音波探傷装置」は、「3D超音波検査装置 MatrixeyeTM」にトロリー線を容易に検査できる治具と超音波プローブを組み合わせているもので、専門技能を必要とせずに、誰でもスムーズに検査を進め、検査結果を画像化して効率よく管理することができます。なお今回展示は、試作段階であり、今後、お客様のニーズを取り入れて、例えば自動化システムとして構築することも可能です。

最後にご紹介するのは、「マルチパスSAFTーPA鋼床版超音波検査装置」で、鉄道や高速道路等、大型交通に関わる橋梁の接合部(Uリブ、デッキプレート)の欠損・損傷を検査するシステムです。

これまで、高くて狭い場所である橋梁では、人間系による手作業での検査で対応しており、このような場合は危険を伴う重労働となります。この装置では磁石で橋梁に張り付いて、超音波検査に必要な水を出しながら自走するタイヤ付き治具(スキャナー)を備えていますので、作業員はスキャナーをセットしたのち、モニター画面を見ながらリモートで操作して検査し、現場で検査結果の確認が可能です。
また世界初の「マルチパス開口合成フェーズドアレイ法」を採用しており、角度を変えた複数経路のデータを解析することで、損傷の大きさや深さをより鮮明に把握することができます。

このシステムは首都高道路技術センターと東京都市大学との共同研究として開発を進めているもので、幸魂大橋や京浜大橋での実橋等での検証を経て、製品化を進めているものです。