技術者の素顔

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受配電機器の診断技術 藤井 祐樹 専攻:電気工学

電気を安全に送り届ける受配電機器の微小放電計測技術

発電所で作られた電力は、送電線を通じて全国へ送られ、変電所で降圧しながら、ビルや工場、一般家庭まで届けられます。受配電機器の一つである高電圧用開閉機器(スイッチギヤ)は、一般家庭でのブレーカーの役割を持ち、ビルや工場内に必ず収納されています。それらは数万ボルトの高電圧・高電界にさらされながら、数十年の間、健全に機能することが要求されます。高電圧・高電界にさらされ続けた固体絶縁物(エポキシ等)はしだいに劣化が進行していきますが、劣化進行のシグナルとして、微小な放電が発生します。私は、スイッチギヤ内で発生するこの微小な放電を計測するセンサ・システムの開発、さらにはその微小放電と固体絶縁物の劣化の関係を解明し、劣化状態の診断につなげるための研究を行っています。

センサ・システムの開発には、意図しない電気ノイズの侵入が多いビルや工場などの環境下でも、微小な放電信号を計測できる技術の確立が必要です。そのために、放電にともなって周囲に放出される電流・電磁波が伝搬する経路および電気ノイズの侵入経路を解析し、微小放電を高感度に捉えられるセンサ・システムを開発しています。私は高電圧・放電現象を専門としていますが、私が所属する部門には、計測・計量に関する専門家も集まっており、両方の観点からディスカッションできるため、自分一人では到底思いつかなかったアプローチも加わって、より良いセンサが形作られていくところに面白さを感じています。

また我々の開発は、独りよがりのものであってはなりません。スイッチギヤの製造部門である製品部にスイッチギヤの構造ならびに製品の品質の考え方について教示を受けたり、客先と直接関わる営業部門のある事業部と開発方針についてディスカッションしたりすることは非常に重要です。このような関わり合いから刺激を受けることも多々あります。彼らとは、休日には職場を越えて、旅行に出かけたりボウリングをしたりと楽しんでいます。休日にも交流する機会が多いために、仕事でも気負いなく意見交換できているのだと思います。

藤井祐樹 写真

学生時代は、絶縁材料であるエポキシのナノコンポジットの低誘電率化に関する研究を行っていました。当時は絶縁材料が実機器にどのように適用されているか十分に理解できていなかったと思います。しかしそこで培った絶縁材料に関する知識が、固体絶縁物の劣化特性を研究している現在では、大いに役立っていることを感じています。

これからも、スイッチギヤの健全性を保ち、電気を安全に送り届ける“縁の下の力持ち”となるような診断技術の開発に取り組んでいきたいと思います。

(2015年12月執筆)

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