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社会インフラIoT向け無線通信技術 飯田 康隆 専攻:電子工学

多種多様なセンサからのデータ収集を支える無線通信技術

あらゆるモノがつながる世界、IoT(Internet of Things)の実現には、様々なセンサでデータを作り出す「センシング技術」、作り出したデータを収集する「通信技術」、収集したデータを蓄積して処理・解析する「データ解析技術」が必要不可欠です。社会インフラ分野でのIoTの導入にあたっては、導入コストや機器コストを低減するため、無線通信でのデータ収集が特に重要になります。

社会インフラIoT向けの無線通信技術に対する要求は、ソリューション(適用先・応用先)により大きく異なります。私は、ソリューションによって異なる要求を満足できるように、無線通信における通信規格、ネットワーク構成、送信タイミング制御、経路選択などを様々な面から検討し、最適な無線通信システムを開発しています。例えば、防災分野におけるソリューションの例として、橋や道路などの公共インフラの異常を事前に把握し、メンテナンスすることで災害を未然に防ぐためのモニタリングシステムがあります。このようなシステムにおけるセンサは、電源設備がなく、人が通常立ち入れないような場所にも設置されます。そのため、無線機器が電池で長期間稼働し続けることが求められます。そこで、送信タイミングを事前に制御し、通信をしない時間帯に無線機器を停止させることで、消費電力を低減しています。また、ビルや工場などにおいて、照明や空調を省エネや快適性を考慮して統合制御するシステムでは、温度・湿度・振動など多種多様なデータを数多くのセンサから収集しています。このようなシステムにおけるセンサは、天井裏などの無線通信が困難な場所にも設置されます。そこで、多段中継と複数の通信経路を構築することが可能なネットワーク構成とすることで、障害物があっても信頼性の高い無線通信を実現しています。

飯田康隆 写真

学生時代は、複数の通信経路を利用して伝送速度を向上させる、空間多重化を適用した通信方式に関する研究を行っていました。当時は、自身の考えた方式をコンピュータ上にプログラムし、伝送誤りや伝送速度をシミュレーションで評価していました。しかし、無線通信は周辺の環境によって期待通りの性能が得られない場合があります。私自身も、社外まで足を運んで試作したシステムを試験し、シミュレーションの結果と実環境での結果が異なった経験があります。そんな時でも、先輩方からシステム評価に関するアドバイスをいただき、期待した結果を得ることができました。東芝には自分と専門分野の異なる技術を持った方が多く、周囲の方の技術を学び、技術の幅を広げられることが、様々な製品を扱うメーカ技術者ならではの面白さだと感じています。

休日には、ダーツやボードゲームなど、共通の趣味を持つ友人たちと遊びに行きます。年齢や出身などが異なる人ばかりで、仕事では得られない刺激を受けることができます。リフレッシュすると共に、新しいアイディアのきっかけを掴める場合もあります。

社会インフラ向けのIoTは、これから確実に普及していくものと思います。IoTソリューションの実現に向け、多種多様なデータを収集する無線通信技術開発を通じて社会へ貢献していきたいと思います。

(2016年9月執筆)

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