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鉄道の省エネ制御技術 車両駆動時のエネルギー効率向上に向けて 小澤 優太 専攻:情報学

車両駆動時の効率を考慮した制御技術の開発

経済の発展に伴ってエネルギーの需要が増大しており、消費エネルギーの削減が求められています。消費エネルギーの削減は、社会インフラの維持に必要なエネルギーの安定供給と環境負荷の低減につながります。東芝はこれまでに数々の鉄道用電気製品を開発し、主電動機の高性能化や車両制御装置による車両システムの高効率化に貢献してきました。一方、鉄道分野では物やサービスがつながるIoT(Internet of Things)の活用が始まっており、駅設備や鉄道車両に搭載された機器のセンサから、様々なデータを収集することが可能となっています。このような中、私は、「東芝が持つ製品の知見」と「鉄道車両から収集したデータ」を活かした「省エネ制御技術」の研究開発を行っています。

毎日運行している鉄道車両では、運転士の操作や機器の信号などの様々な情報が伝達されて、駆動(アクセル)と制動(ブレーキ)が行われています。このうちの駆動に関するエネルギーは鉄道事業全体の約60%を占めると言われており、このエネルギーを削減することが課題となっています。私は、この課題を解決するために、車両が実際に走行している時の電力と力の関係から駆動時のエネルギー効率を推定し、この効率が最も高くなるように車両を制御するシステムを開発しています。例えば、車両に搭載されている機器の効率などは、製品が製造された後に定められた条件のもとで計測されます。ところが、実際に車両が走行している時の運動や機器の状態は計測した条件と異なるため、車両運行時のエネルギー効率は分かっていません。この車両運行時のエネルギー効率のように、直接観測できていない情報を、収集した膨大なデータから推定し導き出すのが難しくもあり楽しいところです。現在は、推定した効率を制御システムにフィードバックすることで、車両駆動時の消費エネルギーを従来よりも削減する省エネ制御技術の開発を進めています。

小澤優太 写真

学生時代は、機械学習の効率的な学習方法に関する研究を行っていました。この研究で得た情報学の知識を日々の生活を支えるインフラ技術に活かしたいと思い、今の仕事に就きました。業務で印象に残っているのは、研究開発の実務で得たデータ分析技術の経験を、出身大学で紹介する機会をいただいたことです。仮説と検証を繰り返してデータ分析を進めていく手順など、学生当時の自分が知りたかった内容を伝えた結果、多くの質問やコメントをいただき、これまでの自身の成長を振り返る大切な機会となりました。

休日は、趣味である音楽制作やイベント参加をしたり、会社の同僚や昔からの友人たちと出かけたりしています。音楽を作る時にも当てはまりますが、私は一度考え出すと深く入り込んでしまう性格なので、休日に頭を切り替えてリフレッシュすることが大切だと実感しています。

社会インフラ技術では、手に入った多量なデータを的確に理解することが重要と考えます。データと製品の知見を活かした省エネ制御技術の開発を通じて社会に貢献していきたいと思います。

(2019年8月執筆)

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