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鉄道車両の走行障害物を検出する画像認識技術 安全走行支援や自動運転の実現に向けて 二神 拓也 専攻:情報システム工学

ハードウェアとソフトウェアの両面から高性能化を実現

二神拓也 写真

所属するグループでは、複数のチームが主に社会インフラシステム向けの画像処理や認識技術を開発しており、適用分野は鉄道、電力、郵便、物流、ビルなど多岐に渡ります。これらの技術を用いることで、カメラで撮影した画像から抽出した情報を基に、対象物や状態を識別・判断することができます。

私は、現在、鉄道車両の安全走行支援や自動運転を実現するシステム向けの画像認識技術を開発するチームに所属しており、鉄道車両の前方を撮影したカメラ画像から、衝突事故の原因となる前方障害物を自動検出する技術の開発を担当しています。

鉄道車両と衝突する可能性のある障害物のみを高精度に検出するためには、線路の位置を基準として、画像から鉄道車両が走行する領域を割り出した後、走行領域内の障害物を検出する必要があります。

そこで、我々は、線路検出技術と障害物検出技術を独自に開発し、これらを組合わせることにより、鉄道前方監視技術の高精度化と高速化を実現しました。また、電力分野で培ってきた画像の鮮明化技術を鉄道向けにカスタマイズすることで、カメラ映像の撮影アルゴリズムを改良しました。鮮明化技術の導入で画像ダイナミックレンジの拡大に成功した結果、夜間など、画像認識に不利な環境下おいても、十分な検出精度が得られるようになりました。

現在、我々が開発してきた鉄道前方監視技術を導入した安全運転支援システムの製品化が予定されています。より高性能な製品を実現するために、様々な映像データを用いて評価と検証を繰り返しており、抽出した課題をチームで共有し、連携して解決しています。鉄道車両の安全運転を支援するシステムを世界に先駆けて実現することで、社会に貢献したいと考えており、日々の開発に力が入っています。

入社した当初は、上述した画像認識分野とは異なり、我々のグループが開発した画像式人感センサ(天井のカメラでオフィス内の人を検知)を応用した照明制御技術の研究開発に従事し、フランスのリヨン市に新設されたビルをフィールドとする実証実験に参画しました。独自の照明制御技術を実環境に導入することにより、オフィスワークに必要な照度の確保と省エネを両立でき、技術の有効性を示すことができました。

実証実験で得られた結果を論文誌に投稿して採録された際には、学術的に価値のある研究に携わり、有意義な時間を過ごせたことを誇りに思いました。このような研究成果を上げることができたのは、未熟な私に時間を割いてアドバイスしてくれた上司や先輩のお蔭です。今後は、アドバイスをする立場になれるように、研究者として一生懸命自己研鑽していきたいと考えています。

集めている昆虫のフィギュアの紹介
集めている昆虫のフィギュアの紹介

休日は、昆虫のフィギュアなどのおまけが付いたお菓子を買い集めて楽しんでいます。また、映画やドラマなどの映像作品の鑑賞に没頭しています。自身の嗜好に合ったジャンルの新作チェックは勿論ですが、これまで興味のなかった少し古いジャンルの作品やインディーズの作品にも目を通すように心がけています。時間をかけて嗜好に合った映像作品に巡り会えた時は大いに興奮し、何度も繰り返して視聴してしまうほどです。


(2020年1月執筆)


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