技術者の素顔

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水処理ソリューション技術 循環型社会実現のための排水処理に貢献しています 胡 錦陽 専攻:環境学

有用微生物を利用した有機系排水処理システムの開発

微生物による水処理技術(生物処理)は薬品を使った分離・凝集処理や物理化学によるオゾン・熱処理に比べ、一般的に①エネルギー投入量が少ない、②環境への影響が少ない、という特徴があります。それは生物処理が自然界に存在する各種微生物や細菌を利用して有機物を分解するため、pHや温度などの環境を大きく変化させることなく、また大量の薬品を添加することなく、人間が生活する自然環境に近い領域で水処理できるためです。特に、河川、湖沼、海洋等に直接排水を放流する都市下水や有機物を含有する排水処理では、環境への配慮が不可欠であることから、微生物処理が主流となっています。

このように微生物は有機系排水処理で多く利用されています。近年は、レアメタルやリンなどの有価物を体内に選択的に回収(濃縮)したり、排水中の有機物をアルコールやメタンガス、水素ガス等、エネルギー利用可能な有価物へ変換したりする機能性微生物も発見されています。私はこのような高度な機能をもった微生物に着目することで、排水中の有機物を除去するだけでなく、排水からエネルギーや資源を回収する循環型社会に貢献できる技術開発を行っています。

胡錦陽 写真

学生時代は微細藻類培養装置の開発に関する研究を行っていました。しかし、当時は研究室に実験装置に詳しい方が少なく、自分で装置を一から作りました。自分で作れないものはベンダーを探し回りました。装置が出来上がった時の感動は今でも忘れられません。また学部時代の2年間のバイオ実験で、微生物、DNA、タンパク質を扱う機会がありました。これらの経験を今の仕事に活かし、自分で設計した実験装置で微生物の力を発揮させ、環境に優しい技術の開発に取り組んでいます。


野菜を育てるのが趣味で、休日に6歳と3歳の子供を連れて、野菜のお世話や収穫を楽しんだり、家族と一緒にキャンプやスキーなどのアウトドア遊びをしたりして、リフレッシュしています。外に行くことで、脳が活性化され、意外なところから研究課題の解決に向けたヒントを得られたりします。

現在、プラスチック使用量の削減や、再生可能エネルギーの積極的な利用など、大量生産、大量消費ではなく、地球環境負荷の低い循環型社会を目指す動きが活発化してきています。今後、更にこのような動きが加速すると考えられるため、私達の身近にある微生物を利用して、このような社会の実現に貢献していきたいと思います。

(2019年8月執筆)

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